今年こそITに強くなるぞと誓ったものの、早くも挫折しそう。そんなIT初心者の社長にも、分かりやすく理解できるようにITキーワードを解説する本連載。今回はすでに利用しているかもしれない「シェアリングエコノミー」だ。
「社長、社用車のリース契約が切れるので、シェアリングエコノミーの車に切り替えてもいいですか」(総務兼IT担当者)。
「エコノミー? 組合の海外視察旅行に行くとき、座席をエコノミーからビジネスに変更したいと思っていたんだ。久しぶりに、気が利くことを言うじゃないか」(社長)
「飛行機のクラスの話ではありません。シェアリングエコノミーはカーシェアや民泊といったビジネスモデルのことです」。
「エコノミーは飛行機だけじゃないのか。それはどんなビジネスなんだ?」
移動手段や場所を共有してお得に利用
シェアリングエコノミーとは、個人や組織が所有する場所や移動手段、モノ、スキル、資金を共有したり、貸し出したりするビジネスモデルです。利用する際はwebで予約や発注を行い、必要なときに必要な分だけ利用できるのが特徴です。
シェアリングエコノミーの発祥はアメリカと言われています。民泊サービスの「Airbnb」やライドシェアの「Uber」、「Lyft」といったサービスが普及したことから、シェアリングエコノミーは世界中で広がりを見せています。
シェアリングエコノミーは大きく分けると5つの領域に分類できる
Q シェアリングエコノミーが注目される理由は何でしょうか。…
大きな理由としては、人々の価値観や意識、ライフスタイルが大きく変化したことが挙げられます。モノを所有するより必要な時に利用する、使い捨てを減らして環境に優しい生活をする、自分のスキル、得意分野を生かして他人や社会の役に立つ、モノ消費からコト消費を重視するといった変化もその一例です。
例えば、ビルの空き部屋を貸会議室にする場合、ネットを使って空室情報を発信。ビルオーナーは空きスペースの有効活用で収入が得られ、借り手は割安の料金で利用できるなど双方に経済的なメリットがあります。また、ITの進歩によってSaaSやMaaSといったクラウドサービスが一般化したこともシェアリングエコノミー普及の後押しとなっています。
Q シェアリングエコノミーの活用例にはどんなものがありますか。
例えば、社用車をリース契約する場合、契約期間内は車を専有できますが、利用していない夜間・休日の駐車スペースを確保する必要があります。使用頻度が低くなっても、契約期間内の解約が難しいという短所もあります。車を共用するカーシェアなら、必要な時だけ利用して使い終わったら借りた場所に戻せばよいので、車の維持費や駐車場代を考慮する必要がありません。使用頻度がさほど高くない場合、コスト削減につながる可能性があります。
また、シェアリングエコノミーは地域課題の解決にも寄与します。例えば、過疎地においては高齢化が進み、空き家の増加や移動手段の確保など多くの課題を抱えています。そこで長期滞在希望者と空き家所有者のマッチングサービスや、乗り合いタクシーといったサービスが活用されています。
Q シェアリングエコノミーの利用で注意することはありますか。
フリマアプリや民泊など、利用者が多いサービスでは日々多くのトラブルが起こっています。トラブルに巻き込まれても事業者(プラットフォーマー)のサポートが受けられない、といったケースもあることから、利用ルールの徹底はもとより信頼できるプラットフォーマーのサービスを選ぶのもポイントになりそうです。業界団体のシェアリングエコノミー協会が設定した自主ルールに適合していることを示す「シェアリングエコノミー認証マーク」を取得しているかどうか、は1つの基準になるでしょう。
また、海外に住むフリーランスに仕事を依頼できるクラウドサービスもあります。デザインやイラストなど、国内のサービス同様に多様なジャンルが用意されています。日本から海外のサイトを閲覧する場合、不正アクセスやハッキングには十分注意が必要です。VPNを利用するなど、セキュリティ対策を万全にしておきましょう。
「社長、シェアリングエコノミーについて、理解していただけましたか。もう飛行機と勘違いしないでくださいね」(総務兼IT担当者)
「社用車をカーシェアリングにしたら、会社の駐車スペースが空くな。何か活用できるアイデアは考えているか?」(社長)
「時間貸しの駐車場にしてはいかがでしょう。収益アップにもなりますし」
「それはいい案だな。じゃあ君を総務兼IT兼駐車場管理担当に任命するから、具体的な施策を考えてくれるかな」
「また私の担当が増えた気がするのですが…仕事もシェアリングしてほしいです」