コロナ禍の影響で、大きく様変わりしているビジネスシーン。とりわけ出発点となる集客の場面では「訪問なし」「非対面」でのアプローチが新常態となり、戸惑いを感じている人も多い。混乱の収束が不透明な現在、企業はどのような姿勢で顧客獲得をめざすべきなのだろうか。
コロナ禍で見直しを迫られる営業活動、広告、アフターフォロー
企業にとって「顧客獲得」は重要なテーマだ。絶えず変化する顧客のニーズに応えるべく、第一線の営業スタッフはもちろん、あらゆる部署が日々努力を重ねている。ところが、2020年に突然世界を襲った新型コロナウイルス拡大は、顧客獲得に向けた営業活動の姿を一変させた。
まず、人との接触を避けるため出社や客先訪問といった移動がままならず、足で稼ぐ営業スタイルの維持が困難になっている。また、感染防止を目的としたテレワークが普及し、社員が顔を合わせて会議する機会も激減した。さらに、不要不急の外出を控える傾向が強まり、商品・サービスを訴求する展示会やイベントも開催できず、「この先どうやって営業すればいいのか」との声が上がっている。
いかにコロナ禍中とはいえ、毎日の経済活動を停滞させるわけにはいかない。そこで各企業は、デジタル技術を活用した販促活動に力を入れている。中でも最近見直されているのが、Webサイトやタウンページを使って「非対面」で顧客にアプローチする方法だ。
インターネットが普及した現在、多くの企業が自社のWebサイト(ホームページ)を開設し、対外的な窓口や、自社商品・サービスを紹介する場として運用している。総務省の調査では、約9割が開設済みという結果が公表されている。ただしこの数字は従業員100人以上の企業を対象にしたもので、それ以下の中小企業まで含めると「まだこれから」という段階にあるのが現状のようだ。
【ホームページ開設状況の推移(従業者規模別)】
出所:「通信利用動向調査 企業編」(2019年・総務省)を基に作成
“電話帳”を活用する…
企業が商品・サービスをPRする手段としては「広告」が挙げられる。テレビ・ラジオ・新聞といったマスメディアをはじめ、電車・バスなどへの交通広告、最近ではWeb広告やSNS、メールマガジンも加わり、選択肢が広がった。その中で、地域密着型の広告媒体として独特の存在感を持つのが職業別(業種別)電話帳「タウンページ」である。
NTT東日本・NTT西日本が発行するタウンページには、地域内で営業する企業・店舗の電話番号・住所のほか、「営業時間が知りたい」「詳しいサービス内容が知りたい」などの利用者のニーズに応えるために広告も掲載できる。メディアが多様化した現在でも、例えば「急に歯が痛くなったので近くの歯科医院を探したい」など緊急で地元の情報を調べたいときや、災害などでネットが使えない環境にある場合に、ホームページ検索より使い勝手よく連絡先を把握できるケースもある。身近な広告媒体として無視できない価値がある。
デジタル連携でパワーアップ
コロナ禍の収束が不透明な現状を踏まえ、顧客獲得は「当面の間、非対面を中心に」という方向になりそうだ。代替として広告が増加するのではとの予測もあったが、経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」では特に目立った動きは見られない。ただし、Webサイトやメールを使ったインターネット広告は堅調で、今後に期待が寄せられている。これは、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によれば、かつて広告の主力であったマスメディアによるアプローチに加え、よりパーソナライズされたインターネット広告の効果が認められつつあることを示している。
タウンページを使った広告についても、単に掲載して反応を待つ手法から、インターネット広告など、他メディアと連携して効果を高める取り組みが進む。そこで欠かせないのが、広告を見た顧客に訪問してもらうための自社Webサイトだ。これまで「必要性を感じない」「コストがかかる」といった理由で構築に踏み切れなかった企業も、具体的な集客につながる可能性が高いのであれば、あらためて検討すべきだろう。
また、折り込みチラシなどの広告物に自社WebサイトのURLやメールアドレスを掲載することは、より積極的に顧客を誘導する手段になる。これは以前からいわれていたが、顧客への情報提供を充実させる意味で有効なのは明らかだ。
導入後の柔軟な活用・運用がカギに
ところで、「これからはインターネット時代」と考えて自社Webサイトを開設したものの、思うような効果が得られない、人手不足などの理由でほとんど内容を更新せず放置している企業も少なくない。これでは“宝の持ち腐れ”で、集客につなげることは到底望めない。最近では特別なアプリケーションを使わず、画面上にテキストや画像を貼り付ける感覚で簡単にホームページを更新できる仕組みも用意されているので、導入を検討してみてもいいだろう。
また、より多くの顧客から訪問してもらうための対策(SEO、リード獲得)でも、さまざまな工夫をこらしたソリューションが提供されている。コロナ禍の苦境から脱却する1つの手掛かりとして、自社Webサイトの活用を考えてみてはいかがだろうか。