2019年から2021年にかけて、消費行動が大きく変化した。新型コロナウイルスによる社会の変化は生活を変え、消費にもその影響は色濃く出ている。例えば、総務省統計局のデータによれば、ネットショッピングの利用世帯は2019年の42.8%から2021年には52.7%へと10ポイント近く増えた。支出額も、2019年の2人以上の世帯では月平均1万4000円台だったが、2020年に1万6000円台半ばに、2021年には1万9000円に迫るまでに増加している。これまでネットショッピングをしなかったシニア層でも、利用が増加したり食料品の購入が急増したりと、内容も変化しているようだ。
【ネットショッピング利用世帯の割合推移】
出所:家計消費状況調査(総務省統計局)を基に作成
外出や外食に自粛が求められたり、在宅勤務で通勤しなくなったりすると、食の消費行動も変わってくる。かつては昼時の行列や夜の酔客が集まったオフィス街の飲食店から人が減った。一方で住宅街では、テークアウトできるファストフード店には列ができ、フードデリバリーの自転車やバイクが縦横無尽に駆け抜けるようになった。食の消費行動の1つとしてフードデリバリーが市民権を得たといえるだろう。NPD Japan(エヌピーディー・ジャパン)の調査によれば、2019年から2021年にデリバリー(出前)の市場規模が4183億円から7909億円へと2倍近くに膨らんだ。
デリバリーへの変化にビジネスモデルの検討が急務…
飲食店を取り巻く環境が今後どのように変化していくかは、なかなか予測がつかない。とはいえ、自宅に居ながらにして世界各国の多様な食を味わえる利便性を体感した消費者が、一気にフードデリバリーの利用をやめることはないだろう。フードデリバリーへのシフトに対応できるビジネスモデルの検討は、チェーン店などに限らずあらゆる飲食店で必要になってくる。
店員が配達する昔ながらの「出前」を継続している飲食店を除き、多くの飲食店ではイートインがビジネスの中核にあったはずだ。特に酒類を提供する店舗では、テークアウトにすら対応していない場合も多い。世の中が変わったため、急きょフードデリバリーに対応できるかといわれれば、障壁は高い。自社でデリバリーを始めようとすると、さまざまなコストや人的リソースが必要になるからだ。
例えば初期投資。電話で出前を受ける昔のスタイルとは異なり、今は若い世代を中心に注文はスマホでの操作が当たり前になっている。しかしスマホからの注文を受けられるシステムを構築するのは容易ではない。デリバリーのための車両の購入や、その後の維持にもコストがかかる。また、せっかくデリバリーを始めたなら、宣伝もしないと費用対効果が得られない。さらに配達のための人材を確保し、人件費に見合うデリバリーの注文を受け続けないと、新規ビジネスが成立しない。課題は山積みだ。
顧客から注文を受け、配達までをつなぐ工程を「アウトソーシング」
フードデリバリーに対応できるビジネスモデルにシフトする場合、自社ですべてを賄おうとすると初期投資からランニングコストまでの負担がのしかかり、実現は容易ではなさそうだ。ならば、フードデリバリーのノウハウを持つ事業者に、デリバリー部分をアウトソーシングするのはいかがだろう。
フードデリバリーを展開する事業者は、飲食店のパートナーを募っている。よく見かける大手フードデリバリー事業者のサービスを利用すれば、自前でフードデリバリーを始めるよりも、少ないコストとリスクでビジネスモデルの変革を実現できる。
フードデリバリー事業者のパートナーになれば、飲食店はシステムに接続するためのインターネット回線と、注文を受けるタブレット端末などを用意するだけ。端末は事業者が貸し出すケースもあるので、多額の初期投資も準備も不要だ。配達はフードデリバリー事業者の配達パートナーが行うため、車両や人員を確保しなくて済む。フードデリバリー事業者のアプリで集客できるため、個別の宣伝の必要もない。
「うちでは配達のアルバイトを雇う余裕がなくて」「スマホで注文するシステムなんて無理」という飲食店でも、フードデリバリーのアウトソーシングを活用すれば、時代に即したデリバリー需要を簡単に取り込める。まずは、デリバリーの追加や転換を真剣に検討し、その上でアウトソーシングによる低リスクのビジネス展開へと進めてはいかがだろうか。