多くの企業でデジタルを活用したビジネス変革への取り組みを加速させている。その土台として利用されているのがクラウドだ。かつて“クラウド後進国”と言われて、クラウドが普及しなかった日本でも、コロナ禍で意識が一変してクラウド活用が一気に広がっている。
DX推進のカギとなるクラウド活用
インターネット上でさまざまなサービスを利用したり、アプリケーションやファイルを共有したりできるクラウドサービスはDX推進には必要不可欠と言われる。スピーディーにシステムを開発するだけではなく、外部サービスとの連携やパートナー企業とコラボレーションがDX推進のカギとなるためだ。2026年には国内クラウド市場の規模は約11兆円規模になるとの予測もある。
しかし、セキュリティという面で不安を感じる企業も多いはずだ。どこにどんな脅威があり、どう対処すればよいのだろうか。
クラウドの活用によって、これまでシステムが自社の内部に閉じていたオンプレミス環境とは一変し、インターネットに接続することによって外部への扉が開かれた状態となる。そこで重要となるのがクラウドサービス由来の脅威を正しく認識して、適切なセキュリティ対策を講じるという視点だ。以下ではクラウドサービスの特質上の脅威を考えてみたい。
クラウド活用の脅威となるのは接続部分とネット上のデータ…
まず考えられる不安は、クラウドサービスを利用することで、「悪意を持ったマルウエアに侵入されるリスクが高まるのでは」というものだ。確かにクラウドサービスのセキュリティ対策は自社の手を離れてサービス事業者に委ねられている。そこに不安を感じることは理解できなくもない。
しかし、専門のサービス事業者のセキュリティ対策が、セキュリティの専門家がいない企業が導入したセキュリティ対策に比べて劣るとは考えにくい。この点を鑑みると、いかに信頼に足る事業者を選ぶかが重要なポイントとなるだろう。
では、具体的にどこに脅威が潜んでいるのか。注意するべきは「クラウドサービスなどの外部環境と自社システム環境との接続部分」だ。クラウドサービスを含めて外部とのやりとりが増える分、侵入リスクは高まる。もう1つはインターネット上の保管データを消失したり盗まれたりすることだ。
安心してクラウドを活用するための多層防御とクラウドストレージ
外部環境と自社システム環境との接続部分を脅威から守るためには、多層防御の体制を確立することが必要になる。ウイルス対策ソフトのインストールやファイアウォールの導入だけでなく、不審なメールの送受信を防ぐメールフィルタリングやマルウエアの侵入を検知する不正検知もあった方がよいだろう。
しかし、これらのセキュリティ対策ツールをバラバラに導入するのは手間もコストもかかり、運用管理の負荷も大きい。その点で統合型のセキュリティ対策ツールであるUTMの導入が選択肢になるだろう。UTMをインターネットと自社システム環境の間に置くことで、外部からのさまざまな脅威を入り口でブロックできる。
加えて、クラウド活用を前提とする時に有効なのがクラウドプロキシだ。インターネットに接続するためのプロキシサーバーをクラウド上に置き、従業員が外部のサイトにアクセスしようとした時に脅威の有無をチェックして、悪意のあるサイトとの接続を防ぐ役割を果たしてくれる。
こうしたインターネットへの出入り口対策と併せて検討したいのが、セキュリティ機能を持ったクラウドストレージサービスの活用だ。オンプレミスと同じように手軽に利用できるだけでなく、多要素認証や回線認証など高度なセキュリティ機能があれば、大切なデータを不正アクセスから守ることができる。
脅威から自社システムを守るセキュリティ対策が導入されていれば、安心してクラウドサービスを活用することができる。従業員に対するセキュリティ教育やセキュリティインシデントが発生した際の事後対策も必要になるが、DXを推進しようと考える企業にとっては、転ばぬ先のつえになるはずだ。