安心してDXをスタートしたい。こう考える企業は多いだろう。その背景には、2023年10月からスタートする予定のインボイス制度や、すでに施行されている電子帳簿保存法改正が2024年1月には宥恕(ゆうじょ)期間が終了となるなどの法制度への対応がある。更に、業務の効率化による生産性の向上や、働き方改革への対応などさまざまなポイントが存在しているからだ。
DXは既存業務のデジタル化から始めよう
だが、「どこから手を付けたらよいのか……」と悩む企業が多いのも事実だ。ITに精通した人材もなく、社内のITリテラシーも満足な状態になければ、デジタル活用を始めとしたDX推進に向けた道筋が見えてこないのはもっともだ。
この点、まずは既存業務の一部をデジタル化するという発想から取り組んでみると良いだろう。例えば、紙の業務をデジタル化するサービスが数多く提供されている。そのほとんどはクラウドサービスの形態で提供されており、インターネットにつながる環境があれば、利用を開始できる。既存の業務をデジタル化して効率化を図り、コスト面、時間面の余裕を生み出し、次のステップへとつなげていくのが事業変革に向けたDXへの近道だと言える。
デジタル化の落とし穴を理解して対策を…
しかし、クラウドサービスによる既存業務のデジタル化にもいくつかの落とし穴が存在する。最初の落とし穴はどのサービスを選んでよいかわからないことだろう。信頼して相談できる相手がいなければ、インターネットなどで評価情報などを集めて比較検討するしかない。
サービスを導入しても、初期設定でつまずくこともある。会計システムであれば、期初の数字や事業所データなどを入力する必要があるが、操作になれないために時間がかかったり、インターネットバンキングとの連携などの設定ができなかったりすることがある。そこをクリアしても日々の運用に悩むケースもある。会計システムでは請求書フォーマットの作成や発行方法、銀行口座の入金の消込処理、領収書の登録や仕分けなど慣れてしまえば簡単だが、初めはわからないこともあるだろう。
さらに大きな落とし穴は、他のシステムとの連携だ。会計システムが使えるようになると給与システムと連動したくなる。給与データを自動で取り込めばさらなる効率化が見込める。しかし、シームレスに連携していないと、データ移行に手間がかかったり、手入力でミスが発生したりする。こうした落とし穴を考慮した時にオススメなのが、総務、人事、労務、経理などのバックオフィス業務のDX化全般をカバーするようなサービスだ。
●企業が考えるべきバックオフィス業務のDX領域(イメージ)
サービスを活用してバックオフィスのDX化を実現
こうしたサービスはすでに多くの企業や団体で活用されている。ある保育園では複数施設の勤怠管理を一元管理するためにクラウドサービスを導入。紙のタイムレコーダーを無くしてデジタル化することで、拠点間のシフト交代による管理も簡単になった。
また、正社員に比べてアルバイトが多く、活動拠点も別れていた警備会社では、勤怠管理と人事労務のクラウドサービスを導入し、紙で作っていたシフトや勤怠管理表をデジタル化。年末調整の紙のやり取りがなくなるなど、給与計算業務の負荷が大幅に削減できた。
そして複数の銀行口座の入出金を管理する必要がある不動産会社では、会計システムを導入することで、すべての銀行口座のデータを一元管理するとともに、経費精算の処理もシステム化して、情報を集約することで業務を大幅に効率化した。しかも、事務スタッフの作業が減るだけでなく、インボイス対応も実現している。
働き方改革に伴う勤怠管理の強化やインボイス対応など、バックオフィス業務のシステム化は待ったなしだ。そんな中、同じ画面を見ながら操作を誘導するなど、寄り添ってサポートしてくれるようなサービスは心強い存在となる。ITリテラシーに不安がある中小企業であっても、こうしたサービスを上手に活用し、バックオフィス業務のDX化を図ることは、生産性向上や働き方改革の実現にも寄与するだろう。
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