1. 原則の与え方 毎週少なくとも1日の休日
2. 変形休日制 4週間を通じ4日以上の休日
これが法定休日と呼ばれるものです。
例えば、会社が土曜日と日曜日を休日としている完全週休2日制の場合、1週間に所定休日が2日あります。しかし、原則として法律上は1週間に1日の休日を与えればよいわけですから、会社の法定休日を日曜日としておけば、土曜日は所定休日であっても法定休日ではないことになります。
言い換えれば、法定休日の労働に対しては休日労働として割増賃金を支払わなければなりませんが、法定休日以外の休日の労働に対しては休日労働としての割増賃金を支払う必要はありません。ただし、法定外休日に労働させたことにより、1週間の実労働時間が40時間を超えた場合には、時間外労働に対する割増賃金を支払う必要があります(図表2参照)。
もちろん、土曜日が法定休日でなかったとしても、土曜日に労働させたことにより1週間の所定労働時間が40時間を超えた分については時間外労働に対する割増賃金を支払う必要があります。…
事例2 振替休日の取り扱い
社運を賭けたイベントが日曜日に行われるため、C社は5人の社員に休日出勤を命じました。その上で翌日の月曜日に振替休日を与える旨を伝えたのですが、社員Dは「日曜日に休むのは労働者の特権だ」と言って出勤しませんでした。これに伴いC社は、その月のDの給与から1日分をカットして支給したのですが、Dは「休日に出勤しないでなぜ悪い」と大きな声で不満を口にし始めました。
休日の振り替えとは、あらかじめ会社の休日と規定されている日を労働日にして、その代わりに他の労働日を休日に変更することをいいます。休日の振り替えを行うためには、図表3の要件を満たす必要があります。
C社が振り替えの要件を満たしていたとします。既述の通り、休日の振り替えとは、もともとの休日を労働日に変更して、その代わりに他の労働日を休日にすることをいいます。つまり、休日の振り替えによって、もともとの休日は労働日となるわけです。
従ってDは、労働日に出勤しなかったわけですから、1日分の賃金を控除することはしかるべき対応といえます。ただし、労働日となった休日に出勤しなかったことを理由に、休日に振り替えられた日に出勤を命じた場合は、1日分の賃金を控除することはできません。
時々振替休日と代休を混同している会社を見かけますが、代休とは、休日に労働させた後で、その代償として、その後の特定の労働日の労働義務を免除することをいいます。この場合、労働者が休日に行った労働が、休日労働でなくなるわけではありませんから、休日労働に対する割増賃金の支払いが必要となります。
事例3 パートタイマーにも年次有給休暇は必要
E社は正社員のほかに数名のパートタイマーを雇用しています。正社員に対しては、もちろん年次有給休暇を付与していますが、パートタイマーに対しては、付与の義務はないと考え、年次 有給休暇は付与していません。ところがパートタイマーのFから、パートタイマーであっても年次有給休暇を付与する義務があるはずだというクレームを受けました。
使用者は、雇い入れの日から起算して6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続または分割した10労働日の有給休暇を与えなければなりません。使用者が付与しなければならない年次有給休暇については、図表4の通りです。
週の所定労働時間が30時間未満で、次の1か2のいずれかに該当する者については、年次有給休暇を比例付与しなければなりません。
1.週の所定労働時間が4日以下の者
2.週以外の期間によって所定労働日数が定められている場合には、年間所定労働日数が216日以下である者
パートタイマーに付与しなければならない年次有給休暇の日数については、所定労働日数と継続勤務日数ごとに、図表5のようになります。
事例4 退職する者の年次有給休暇の取得
G社の社員Hは、来月の末日でG社を退職したい旨を伝え、上司に退職願を提出しました。これに当たって、来月末日までの約40日間については年次有給休暇を取得、明日から出勤しない旨を伝えました。ところがG社は、「退職は受理するが、引き継ぎをしてもらわなければ困る」と、年次有給休暇の取得を拒否しました。Hは、年次有給休暇は自由に取得できるはずだと、労働相談センターに相談に行きました。
年次有給休暇をどのように利用するかは労働者の自由です。従って、会社の都合で年次有給休暇の取得を拒否することはできません。ただし、年次有給休暇の時季については、次ページの図表6のような時季変更権があります。
ここでいう時季変更権は、容易に認められるものではありません。また、退職後に年次有給休暇の時季を変更することも不可能ですから、社員の自由意思に従うしかありません。引き継ぎなどの関係で、どうしても退職する社員に出社してほしい場合は、社員にその旨を伝え、その良識に任せ、お願いするしかありません。
事例5 生理休暇の日数を制限
I社の女子社員Jは、1カ月に2回から3回の生理休暇の請求をしてきます。I社は、生理休暇なのだからその請求は1カ月に1回が原則であると考え、就業規則に「生理休暇は月に1回までとする」旨を規定した上で、生理休暇を請求してきたJに1カ月に2回目の生理休暇を認めない旨を伝えました。Jは、会社が人の体調に口出しをして、法律で認められた生理休暇を削るのはおかしいと不満を漏らしました。
生理休暇については、労働基準法に図表7のように規定されています。
これは女性保護の観点から設けられている規定であり、労働基準法にはこのほかにも母性保護の観点から、女性に関してさまざまな規定が存在しています。
確かに生理については、月に2回も3回も来るものではありませんが、通達を見ると「生理休暇の日数を就業規則等で限定することはできない」としており、生理休暇の日数を限定することを禁じています。もちろん、生理休暇中の賃金については、有給でも無給でも構いません。会社の裁量によるところとなります。
なお生理休暇について、女性労働者が半日、または時間単位で請求した場合には、使用者はその範囲で就業させなければよいことになっています。