アスリートに学ぶビジネス成功への軌跡(第53回)ヘビー級王者モハメド・アリ その色あせぬ伝説

人材活用

公開日:2022.11.08

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 1960年に開催されたローマオリンピックのボクシング男子ライトヘビー級で金メダルを獲得したのは18歳のアフリカ系アメリカ人のカシアス・クレイだった。表彰台の中央に立つクレイ青年は、もっとも高く掲揚された星条旗を見て誇らしげにほほ笑んでいたものだ。

 しかし意気揚々と生まれ育ったケンタッキー州ルイビルに戻ったクレイ青年は、レストランで食事しようとして店側から拒否された。そこは白人専用のレストランだった。当時のアメリカでは、アフリカ系市民はバスに乗る時は後部座席に座り、手洗い所も白人とは分けられていた。そんな時代だった。金メダルには何の価値もないと、オハイオ川に投げ捨ててしまったという伝説もある。

 その時、彼の頭の中でゴングが鳴り響いたのかもしれない。後にモハメド・アリと改名する青年の長い闘いの日々が始まった。

蝶のように舞い、蜂のように刺す

 熱い闘いがリングの「内」と「外」の二つのフィールドで展開された。

 オリンピック後にすぐさまプロに転向したモハメド・アリ(1964年改名)は、華々しい戦績を挙げていく。彼は強く、そして従来の重量級ボクシングとは違うスピード感あふれるファイトスタイルは見る者を魅了した。

「私は蝶のように舞い、蜂のように刺す。
奴には私の姿は見えない。
見えない相手を打てるわけが無いだろう」

(モハメド・アリの名言・格言より)

 その言葉どおり、アリは、カンフー映画のスターだったブルース・リーも役作りに取り入れたという軽快なステップでリング内を前後左右と自在に動きながら、目にも見えないような左ジャブを繰り出し、試合をリードした。

 圧巻だったのは、1965年に行われたソニー・リストンとの再戦だ。前年にデビュー以来19連勝を遂げていたアリは、WBA・WBC統一世界ヘビー級王者だったリストンに挑み、6回終了時にTK0(テクニカルノックアウト)で下し、統一ヘビー級王座を獲得した。

 その翌年に行われたアリにとっての初防衛線、その1ラウンドだった。リストンが放った強いパンチを身体を軽く後ろに反らして避けたアリは、ひねりを加えた軽く速い右パンチをリストンの顎に打ち込んだ。まさに蜂の一刺しのように見えた。その一撃でリストンの身体はマットに沈み、動くこともできなかったのだ。

兵役を拒否し、ヘビー級王者剝奪…

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執筆=藤本 信治(オフィス・グレン)

ライター。

【T】

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