顧問先2200社を抱える会計事務所を率いる公認会計士、古田土満氏が語る小さな企業の経営のコツ。前回の第24回は、挨拶・掃除・朝礼の効果について紹介しました。今回は、その中でも朝礼について詳しく解説します。古田土氏は、朝礼は情報共有のために行うのではなく、社員トレーニングのために行うのだと説明します。
会社を活発にして、社員を幸せにする朝礼について、もう少し説明しましょう。古田土会計の朝礼見学には、2016年に600人が来られました。お客さまばかりでなく、銀行員、学生、税理士事務所の職員など、さまざまな方に来ていただいています。
見学の理由を伺うと、多くの方が「朝礼がマンネリ化していて活性化していない」「元気がないから」と言われます。私は朝礼ほど社員のモチベーションを上げ、会社を活性化するものはないと確信しています。
朝礼は社員トレーニング(訓練)のために行うものと、定義しています。何のためのトレーニングかというと、こういったことを鍛えるためです。情報を共有する場とは考えておりません。
(1)経営理念、ビジョンの浸透
(2)うなずき方
(3)拍手のしかた
(4)人の話の聞き方、人前での話し方
(5)笑顔のつくり方
人は自分に直接関係ないものは、聞いているふりをしているだけでほとんど聞いていません。したがって私は朝礼では1日の行動予定以外、ほとんど話をしません。教訓めいた話は、毎週月曜の朝8時からの、経営計画書の勉強会で話をします。
返事が小さければ、何度でもやり直させる…
さて、朝礼を活性化させるためには、朝礼が明るく、楽しく、元気でなければなりません。朝礼の一番最初にやるのは、本気のジャンケンです。本気でやっていると他の人から思われるために、勝ったら「勝ったぁ〜」と大きな声で言います。負けたら「ありがとう〜」と勝った人以上に大きな声で言います。
負けても「ありがとう〜」と言うことが、ポイントです。「ありがとう」と「感謝します」という言葉は『ツキを呼ぶ「魔法の言葉」』(五日市剛著、マキノ出版)だからです。
また人の話を聞く訓練として、以下の3つを磨くための訓練をしています。うなずき、笑顔、熱血拍手といった行動のトレーニングもしています。
〈1〉自分の価値観で聞かない
〈2〉相手の立場で聞く
〈3〉話の内容を聞く
社員181人のうち130人くらいは朝礼に参加しますから、中には、「自分1人くらいいい加減にやっても分からないだろう」という社員も出てきます。そこでリーダー、サブリーダーは自分の管轄する社員を見ていて、その場で大声で注意します。例えば、「はい」という返事が小さいと何度でもやり直しをさせます。
人の習慣は簡単には直りません。忍耐力が大事で、何度も何度も注意、やり直しをさせてトレーニングで習慣を変えていきます。訓練により、どんな場所でも堂々と話すようになれたり、人が感動するような態度が身についたりと、その人の人間性を高めることができます。
話を本気で聞けば、自分の意見が言える
朝礼は、人間性を高める最高のステージです。また、クレームや業務ミスがあったときには、担当者が全社員の前でミスやクレームの内容と対応について話し、おわびをします。このとき、事実を正しく表現していないと、専務や部長、リーダーから厳しく注意されます。
昔、朝礼の3分間スピーチで、あるリーダーが「業務ミス報告書が出るたびに、これを糧にして成長してほしいと祈るような気持ちで読んでいます」と話をしました。そのときに吉田専務が、「私は業務ミス報告書を社員が成長してほしいという気持ちで読んでなんかいません。私はお客さま、特に先方の社長さまに対して申し訳なさでいっぱいになります。私たちのミスにより社長さまが社員に謝罪するのです。こんな申し訳ないことってありますか」とすかさず発言したことがあります。吉田専務は人の話を本気で聞いているから、この言葉が出ました。
朝礼は、全社員の教育の場でもあります。朝礼はトレーニングですから、手を抜くと質が落ちます。朝礼もスポーツのトレーニングと全く同じです。毎日の朝礼を本気でやる、手を抜かせないことによって、質がアップし、自然に立派な挨拶、うなずき、笑顔、5Sができるようになり、立派な日本人になります。
※本記事は、2017年に書籍として発刊されたものです