「所有から利用へ」がITのトレンドになっている。その代表格がクラウドサービスだ。パソコンごとに購入していたソフトを、クラウドサービスによるライセンスで利用するのが一般的になってきた。自社で構築、保有してきたファイルサーバーも、クラウドのストレージサービスを利用する形態に移りつつある。
購入すると固定資産税がかかるケースも
IT活用に欠かせないハード、ソフトを「所有から利用へ」と形態を変えれば、経営にも大きなメリットが生まれる。身近なIT機器のパソコンを例に考えてみよう。
まず、パソコン導入時の初期コスト。自社で購入する場合、台数分の初期費用がかかり、多額のIT投資になる。だが、レンタルまたはリースであれば月額料金でパソコンの利用を開始でき、多額の投資コストをかけずに済む。
自社で購入したパソコンは固定資産となり、固定資産税が発生するケースが多い。一方、レンタル やリースであれば毎月の経費として処理できるので、減価償却が必要な固定資産にならない。月額費用のためコストの平準化が可能になるなど、効果的なIT投資が行える。
また、業務でパソコンを利用するためにはソフトのインストールや、既存パソコンからのデータ移行などの設定作業が必要だ。加えて、導入後のメンテナンスやトラブル対応なども考えなくてはならない。
ITにも脱所有の流れ
「にわかIT担当者」の負担が増えるばかり…
自社購入の場合、設定やメンテナンスなども自社で行う必要がある。IT担当者がいない企業の場合、パソコンに詳しい従業員が「にわかIT担当者」として設定作業を行っているかもしれない。外部のIT事業者に代金を支払って、設定や保守、トラブル対応を依頼している場合もあるだろう。
コスト負担だけでなく、パソコンがトラブルを起こすと、ハードに問題があるのか、ソフトに問題があるのか原因を切り分ける作業も必要だ。さらに修理が必要な場合、パソコンメーカーに修理を依頼したり、自社で代替機を用意したりと、多大な手間がかかる。
一方、パソコンのレンタルであれば、設定済みのパソコン用意や、故障時の代替機提供、トラブル対応のヘルプデスクなどがオプションサービスとして用意されているものもある。こうしたサービスを利用すれば、「にわかIT担当者」の負荷が軽減し、本業に専念できる。
陳腐化を避けて新技術・サービスを取り込む
パソコンを自社で購入していると、壊れたりしない限り、どうしても減価償却が済むまで使い続けてしまう。サーバー用以外のパソコンの償却年数は4年となっており、日進月歩の勢いで進化するIT技術にあって、4年はいかにも長い。購入したから仕方なく使い続けるのでは新しい技術やサービスに対応できず、競争力強化や生産性向上のためのIT活用に支障を来しかねない。
むしろ、レンタルなどでパソコンの利用期間を柔軟に設定すれば、性能や機能の陳腐化を回避できる。新技術やサービスにタイムリーに対応するほうが、デジタル時代のビジネスの理にかなっているといえるだろう。
このほか、パソコン買い替え時に、旧パソコンの廃棄処分も課題になる。業務データが保存されたパソコンから機密情報が漏えいする事態になれば、大問題だ。廃棄時のデータ消去を任せられる事業者の選定も、レンタルサービス利用時のポイントになる。導入から廃棄までパソコンのライフサイクル全体を任せられるなら、大いに利用価値がありそうだ。
経営者は、「脱所有」の企業体質への転換を視野に入れておいたほうがよい。キャッシュフローの観点からだけでなく、人手不足解消、さらにコンプライアンスの観点からもメリットが見込めるからだ。