猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大が、企業経営にも大きな影響を及ぼしている。東京商工リサーチの調べによると、感染拡大の影響で倒産した企業の数は3月末の時点で25社。それが5月1日には114社と急増した。中でも、負債額3億円未満の小型倒産が半数以上を占める。
中小企業経営を取り巻く状況は厳しさを増す。万一を考えた対策が急務となっている。その際のポイントの1つが売掛債権の回収だ。商品を納入した売掛先の経営状態が悪化し、売掛金や受取手形が期日を過ぎても現金化できない。それにより、自社の資金がショートして資金繰りが行き詰まる……。こうした事態が容易に生じ得る状況だ。
たとえ、売掛債権が無事に回収できたとしても、その期間が長ければ企業の財務状況は悪化する。売掛債権の管理は、経営者の非常に重要な業務といえる。心掛けておきたいのが、売掛債権回収手段の多角化だ。
売掛債権回収(現金化)の有力な方法として、最近注目を浴びているのがファクタリングである。ファクタリングとは、売掛債権を買い取る金融サービスのこと。具体的には、入金が行われていない請求書(売掛債権)をファクタリング会社が買い取り、その対価を売却企業に支払う形を取る。売却企業は請求書の支払期日前に現金を受け取れ、借り入れにも当たらない。信用力の低い中小企業にとって、資金調達の有効な手段となる。
ファクタリングは大きく分けると、2社間で行うファクタリングと3社間で行うファクタリングの2種類がある。それぞれの仕組みを見てみよう。
2社間ファクタリングは、利用企業(売掛債権売却企業)とファクタリング会社の2社の間で行うファクタリングだ。利用企業はファクタリング会社に未入金の請求書を売却し、ファクタリング会社から相当額を受け取る。その後、売掛債権の期日に到達したときに売掛先企業は利用企業に支払い、それを利用企業がファクタリング会社に弁済するというのが基本的な流れだ。つまりファクタリングを利用しても、売掛先はそれが分からない。利用企業とファクタリング会社の2社で完結する。
3社間ファクタリングは、ファクタリングに売掛先が関わってくる。利用企業はファクタリング会社に未入金の請求書を売却し、ファクタリング会社から相当額を受け取る。ここまでは2社間ファクタリングと同じだ。しかし、3社間ファクタリングでは利用企業がファクタリング会社に支払いを行うのではなく、売掛先がファクタリング会社に直接売掛金を支払う形を取る。ファクタリング会社から見ると、利用企業に代金を支払い、売掛先から売掛金を受け取ることになる。ファクタリングに3社が関わるため、3社間ファクタリングと呼ばれる。
【2社間ファクタリングと3社間ファクタリング】
2社間ファクタリングの仕組み
3社間ファクタリングの仕組み
2社間と3社間のメリット、デメリットを覚えておこう
2社間ファクタリングは、利用企業とファクタリング会社の契約だけで行われる。そのため、スピーディーに資金化できるのがメリットだ。また、ファクタリングに売掛先が関わらないため、ファクタリングを利用しているのを売掛先に知られることは基本的にない。つまり資金繰りが苦しいのではないかといった懸念を売掛先に持たれる心配がない。ただし、3社間ファクタリングと比較するとファクタリング会社に支払う手数料が高くなるケースが多いのがデメリットだ。
一方、3社間ファクタリングは利用企業とファクタリング会社の間だけでなく、ファクタリング会社と売掛先との間でも契約が必要になる。売掛先にファクタリングの了承を取り、ファクタリング会社との契約を行ってもらうプロセスが必要で、資金化までに時間が掛かる。また、ファクタリングを利用することが売掛先に知られるため、資金繰りを不安視される可能性もある。ただ、3社間ファクタリングは2社間ファクタリングと比べて手数料は割安になるケースが多いのがメリットだ。また、売掛金はファクタリング会社に直接支払われるため、売掛金回収の手間がない。
取引先からの支払いを、請求書発行による掛け取引ではなく手形で受けている場合、手形を銀行に買い取ってもらう手形割引で資金調達する方法がある。しかし、手形割引は手形を担保にした融資として扱われる。そのため、手形割引を利用した場合は、貸借対照表に記載しなくてはならない。手形割引の額が多いと、銀行の融資審査などでのマイナス要因になり得る。
一方、ファクタリングは融資ではなく売上債権の売却として扱われる。貸借対照表には影響しない。手形割引よりも利用しやすい資金調達手段といえる。
例えばコロナによる影響で、商品を納入して売掛金が発生している取引先のA社から支払期日の延期を求められた。材料を購入したB社への買掛金の支払いは、A社からの入金で行う予定だったため、資金がショートしそうになってしまった。そうしたとき、別の商品の納入先であるC社の請求書をファクタリングで現金化し、B社への支払いに充てる。こういった資金繰りがファクタリングを利用すると可能になる。
以前、ファクタリングはファクタリング会社の店舗に赴き、現地面談を受けてから契約を結ぶ形が多かった。しかし、現在はインターネットを活用して、オンラインで手続きができるクラウドファクタリングのサービスを取り扱う企業が続々と登場し、格段に利用しやすくなった。コロナ禍を乗り切る手段の1つとして、ファクタリングによる資金調達法を覚えておこう。