最近のキーワードとして注目されているのが「デジタルレジリエンス」だ。レジリエンスとは、回復力や復元力と訳される英語であり、デジタルがビジネスを支えるようになった今、万が一の際に企業には各種のシステムやデータなどといったデジタル資産の回復力が求められている。「災害大国」と言われるほど、自然災害が多い日本には他国以上にデジタルレジリエンスが求められる。具体的にはどうすれば良いのだろうか。
災害大国だからこそデジタル面でも対策を
日本は世界的にも災害が多い「災害大国」だ。4つの地震プレートがせめぎ合うところに国土があるという宿命的な弱点を抱えている。大地震が起きると津波や火山の噴火などによって大きな被害を受けることがある。
さらに近年では気候変動に台風や集中豪雨による被害も深刻化している。河川の氾濫や土砂崩れが発生すると、鉄道がストップしたり道路が通れなくなったり、移動が困難になる状況が生まれる。また、資材が届かない、従業員が出社できなくなるなどビジネスも大きな影響を受ける。災害大国として当然、さまざまな災害対策が図られているが、対策自体にも変化が起きている。
冒頭で紹介したようにビジネスがデジタルへの依存度が高まったことで、「デジタルレジリエンス」がキーワードとして注目されている。このように、万が一の事態に備えたシステムやネットワークに対する対策が求められているのだ。デジタルに依存しているビジネスを止めないためのポイントは大きく4つある。1つめはシステムを止めない対策を実施すること。2つめはデータが失われても復元できるようにバックアップをしておくこと。3つめは通信が遮断されないための手段を導入しておくこと。そして4つめは災害時に強いコミュニケーション手段を持つことだ。
以下、それぞれについて具体的な対策を考えてみよう。
災害発生に備えた対策はビジネス変革にも貢献する…
1つめのシステムについて常識とされていたのは、データセンターの冗長化だ。メインのデータセンター以外にサブのデータセンターを用意し、正副のセンターでシステムを連携させて、どちらかが止まっても片方を利用することでシステムを止めない方法だ。最近では、クラウド上にサーバーを置いてバックアップ用として万が一に備えることもできる。クラウド事業者のデータセンターは当然冗長化されているので、災害時にも止まることは考えにくく、オンプレミスのサーバーを止めて全てのシステムをクラウドに移行するケースも増えてきている。
また、データについては以前からバックアップをとっておくことが推奨されてきた。どういうタイミングでバックアップをとるかは難しいところだが、業態からビジネスへの影響が最小限に抑えられることが分かれ目になる。このデータのバックアップについてもクラウドを活用することが可能だ。クラウドストレージを利用してオンプレミスのデータをアップロードすることができるし、ストレージ全体をクラウドストレージに切り替えることも考えられる。しかもクラウドストレージではユーザーがバックアップを意識する必要もなくなる。
ただ、災害時にサーバーを止めないためにクラウド上にシステムを移行したりしても、通信が遮断されてしまっては何もできなくなる。そうならないためには、通信回線自体を冗長化したり、障害発生に備えて衛星通信などを導入したりすることもできる。
さらにコミュニケーション手段を確保するためにはクラウド電話も考えておきたい。物理的な電話交換設備を持たないクラウド電話であれば、フリーアドレス化がしやすくなるだけでなく、災害にも強く、障害発生時には転送サービスを利用することもできる。また普段から社内で「チャット」を利用していることも障害発生時には効果を発揮する。シンプルかつ手軽にコミュニケーションをとることができて、万が一の際の安否確認にも活用できる。
こうした対策は、災害対策という面だけではなく、平時のビジネスを進化させることにもつながる。場所や時間を選ばすにスムーズにデジタルが活用できる環境は従業員の働き方を変えて生産性を向上させる。できるところから実行しておくことをお勧めする。