中堅・中小企業のIT活用が進む一方、その導入・運用を担うIT人材の採用・確保が難しく、いわゆる「一人情シス」を余儀なくされるケースは少なくない。その課題は、他部門と兼務したり、わずかな人数で仕事をこなしたりしなければならないことだけではない。複数拠点がある企業の場合、本社だけでなく、支店のITトラブルにも対応せざるを得ず、少人数であるがゆえの対応の遅れが業務停滞を招き、本来、IT活用で高めるはずの生産性をも低下させかねないのだ。
ITに詳しい人が支店や業務拠点にいない
IT活用でトラブルになりがちなのが、パソコン操作にかかわる事案だ。「パソコンが起動しない」「反応が遅くて操作に時間がかかる」「新たに導入したオフィスソフトやクラウドサービスの操作方法が分からない」「インターネットにつながらない」「プリンターに接続できない」などトラブルの種はさまざまある。
専門のヘルプデスクのある企業は別にして、パソコン操作でトラブルがあった場合、IT担当者に対応を求めるのが一般的だ。ただ、IT担当者を配置できないリモート拠点や、一人情シスの企業の場合、まずIT担当者と連絡を取るのにも時間がかかる。IT担当者がなかなかつかまらないので、オフィスにいるITに詳しそうな人に聞きたいが、忙しそうにしているので相談もできない。そんなことをしているうちにどんどん時間が過ぎ、業務が停滞してしまう。
もし、顧客・取引先と重要なオンライン会議の予定が入っていた場合、「パソコンのトラブルで打ち合わせに参加できませんでした」と謝罪することになり、パソコンの問題にとどまらず、ビジネス上の信頼関係に影を落としかねない。
ITサポートを外部事業者にまかせ本社・支店の円滑な業務を遂行…
パソコンが故障した場合、部品交換などで修理するにも当然費用がかかる。もし旧モデルのパソコンを使っているなら、思い切って買い換える選択肢もある。例えば、基本ソフト(OS)にマイクロソフトのWindows10を搭載したパソコンを使用している企業もあるだろう。2015年に発売開始されたWindows10は、2025年10月にサポートを終了することを公表している(最終版の22H2をアップデートしているパソコンの場合)。サポート終了後はマイクロソフトからの技術サポートなどが提供されなくなるので注意が必要だ。
旧モデルのパソコンを使い続けていると、部品などの経年劣化による故障の問題だけでなく、パソコンの性能にかかわるCPUの処理能力やメモリーの容量に制限があり、現在業務で使われるソフトウエア、アプリケーションの性能を十分に発揮できないこともある。
だが、新たに何台ものパソコンを導入するとなると、コストがかかるだけでなく、IT担当者が少ない企業では大きな負荷がかかり、他業務に支障を来す恐れもある。そこで購入・調達からセットアップ、利用・運用、故障・トラブル、利用終了後の回収・廃棄まで、パソコンのライフサイクル全般をサポートするサービスの利用を検討したい。オフィスソフトやオンライン会議ツールが含まれるサービスもあり、導入後、すぐに業務で活用できる。月額課金のサブスクリプション型で提供されるサービスの場合、購入・調達にかかわる初期費用を抑えられ、事業者にセットアップやデータ移行を任せることで、IT担当者の負荷軽減が可能だ。
また、パソコン操作の困り事にも事業者が対応する。必要に応じてオペレータの遠隔操作でトラブル対応を行ったり、故障時には新しい機器との交換・初期設定を任せたりできるので業務停滞を最小限に抑えられる。サービス導入後にパソコンで作業したデータはクラウド上に保存され、機器の交換時にもスムーズにデータ移行できる。その他、インターネット接続環境があればオフィスや自宅、外出先など、働く場所を意識することなくクラウド上に保存されたデータにアクセスして部門内で共有するなど、テレワークやハイブリッドワークなど社員の多様な働き方を支援することが可能だ。
LANやセキュリティ対策も専門家に依頼
トラブルの種はパソコンだけでなく、社内LANに起因するケースもある。例えば、「パソコンがインターネットに接続できないので見て欲しい」といった相談があった場合、IT担当者はその原因がパソコン側にあるのか、社内LAN側にあるのか切り分ける必要がある。インターネット接続に関係するルーターのトラブルの場合、設定情報の確認や復旧作業などで専門的知識が求められることもある。
この点、パソコンに詳しいIT担当者が必ずしもネットワークにも詳しいとは限らない。ルーターが故障している間はインターネット接続ができずに業務に支障が出る。そこで、ルーターの故障時に専門技術者が企業を訪問して代替機と交換、設定などをサポートするサービスを利用する方法もある。また、セキュリティ対策も外部からの脅威を防ぐUTM(統合脅威管理)や、パソコンなどの端末をウイルス感染から守るエンドポイントセキュリティ、悪意のあるWeb通信をクラウド上で検知・遮断するクラウドプロキシなどのツールの他、サポートセンターでの監視と遠隔サポートを組み合わせたセキュリティサービスもある。
中堅・中小企業にとってビジネスの基盤となるパソコンをはじめ、ネットワーク、セキュリティ対策などの導入・運用を限られたIT人材だけに任せるのは至難の業だ。トラブル対応を含め、IT環境全般を外部の事業者に任せることで円滑な業務を遂行するとともに、IT担当者は自社のDXの計画・推進に注力することも可能だ。