ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2019.12.17
2019年11月2日に閉幕したラグビーワールドカップ2019™日本大会は、日本代表の躍進もあって大いに盛り上がりました。スポンサーとして2001年からラグビー日本代表を支え続けているのが、大正製薬。同社は今大会のオフィシャルスポンサーにもなり、リポビタンDの大会記念ボトルも発売されました。
リポビタンDは、大正製薬が1962年に発売を開始したドリンク剤のロングセラーです。
創業は1912年。1927年に鎮咳去痰薬「パブロン」を発売し、戦前から強肝解毒剤「タウリン」の研究を進めました。タウリンは脳や心臓、肝臓などに存在するアミノ酸の一種で、体内の状態を一定に維持する働きがあるといわれる成分です。
そして1960年、タウリンを配合した「リポビタン」を発売します。「リポビタン」は成分を水に溶かしたアンプル剤と錠剤の2種類がありましたが、ガラスの小瓶に入ったアンプル剤の方が特に人気を集め、同社のドル箱商品となります。
人気の秘密は、味。従来の薬は、苦くて飲みにくいものがほとんどでしたが「リポビタン」はそうした薬と比べて飲みやすかったのです。「リポビタン」はガラスの小瓶に入ったアンプル剤ブームの火付け役になり、以降、同種の製品が次々と出てくるようになります。小さなガラス瓶の口をカッターで開け、細いストローを差し込んで飲む姿が、日本各地で見られるようになりました。
「リポビタン」はヒット商品になりましたが、当時の第3代社長・上原正吉はそれに飽き足りませんでした。「リポビタン」は味がいいと好評をいただいているが薬臭さが残っている、もっと飲みやすく改良すればさらに消費者の健康維持に役立てるのではないか……。こうした思いが頭を去らなかったのです。
そこで上原が思い付いたのが「量を増やすことで有効成分独特の味わいを薄め、さらに味を付けて、冷やして飲めるようにする」というアイデアでした。
そこから、味を良くするための研究が始まりました。まず、従来のアンプル剤では量が20mlだったところ、100mlと5倍に増やします。こうすれば有効成分独特の味わいが薄められるだけでなく、ストローなしでフタを開けるだけで飲めるようになり、利便性が高まります。
フレーバーについては試行錯誤が続きましたが、最終的にミックスフルーツ風味を付けることに成功しました。メインになっているのは、当時高級とされていたパイナップルの風味です。
上原のアイデアにあった「冷やして飲める」も、容易には実現しないものでした。今でこそ「リポビタンD」はコンビニなどで買うことができますが、当時、販売店となったのは薬局・薬店です。しかし、冷やして売るという薬はなく、薬局・薬店の店頭には冷蔵庫がありませんでした。
そこで、営業部員が全国の薬局・薬店を回り、ドリンク剤を冷えたまま販売するための冷蔵ストッカーの設置を働きかけました。店の方からは「うちは牛乳屋じゃない」など反発の声が上がりましたが、営業スタッフの努力によって設置が進みます。
こうして、外出先で冷えたままドリンク剤が飲めるという、現在にまで続くスタイルができることになりました。
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執筆=山本 貴也
出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。
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