ロングセラー商品に学ぶ、ビジネスの勘所(第34回)変わり続け、利益を体現する花王の「メリット」

スキルアップ 雑学

公開日:2021.09.27

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 仕事から帰ったらお風呂でシャンプーをして、毛髪や頭皮の汚れとともに仕事の疲れも洗い落とす。そんなビジネスパーソンも少なくないのではないでしょうか。日本でシャンプーが使われ始めたのは大正時代で、当時は「髪洗い粉」などと呼ばれていました。昭和初期にはシャンプーが製品名として使われるようになり、戦後になると衛生意識の高まりとともに一般に広く普及しました。

 日本人は世界の中でもシャンプーの頻度が高い国民だといわれていますが、日本人のシャンプー習慣の定着に大きな役割を果たしたのが花王の「メリット」です。1970年の発売開始以来、50年以上にわたって多くの人に愛用されている、シャンプーのロングセラーです。

 花王は1887年の創業で、国産せっけんの品質の低さを憂えた創業者・長瀬富郎が1890年に高級国産せっけん「花王石鹸」を発売しました。以降、せっけんを中心に歯磨き粉、化粧水など衛生日用品の製造を中心に事業を展開します。

 1932年には「花王シャンプー」を発売しました。この「花王シャンプー」は、それまで荒物店が扱う髪洗い粉というイメージの強かった洗髪剤を化粧品的なイメージに変え、シャンプーという言葉が日用語として定着するきっかけになったといわれています。

 花王はその後もシャンプーの開発を続け、1955年には「フェザーシャンプー」を発売します。「花王シャンプー」は固形、「フェザーシャンプー」は粉末でしたが、1960年発売の「フェザーデラックス」から液体シャンプーの時代に入りました。そして1970年に発売されたのが「メリットシャンプー」です。

 「メリットシャンプー」誕生の背景には、当時の日本の衛生状態がありました。その頃はまだ内風呂の普及率が低く、髪を洗う頻度は平均して週に2回ほどといわれていました。そんな中、地肌のかゆみやフケなどの悩みが特に女性の間で多く聞かれるようになります。そうした女性の悩みを解消すべく開発されたのが「メリットシャンプー」でした。

 テレビCMでは、「フケ・かゆみを防いでお幸せに」のセリフとともに、フケを抑える成分であるジンクピリチオンの配合を強調しました。これによりフケ・かゆみの抑制効果の訴求に成功し、「メリットシャンプー」は大ヒット商品になります。

 70年代から80年代にかけては、経済成長とともに日本の生活環境が大きく変わった時代でした。マンションの建設ラッシュなどで内風呂の普及が進み、洗面化粧台を備えた家が多くなります。清潔に対する意識はより強くなり、洗髪の回数も増えていきました。「朝シャン」が流行語になったのもこの頃です。

時代の変化に対し、定番商品はどう進化したのか…

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執筆=山本 貴也

出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。

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