ロングセラー商品に学ぶ、ビジネスの勘所(第35回)どちらか選びたくなる「赤いきつね」と「緑のたぬき」

スキルアップ 雑学

公開日:2021.10.25

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 イタリアのパスタ、中国のラーメンなど、世界には多くの麺類がありますが、日本の麺の代表格が「そば」と「うどん」。一般的に関東はそば派、関西はうどん派といわれますが、どちらも捨て難く、お店で注文に迷う人も少なくないのではないでしょうか。ところで、今回紹介する麺も、どちらを買おうか店頭で迷いがちかもしれません。東洋水産の「赤いきつねうどん」と「緑のたぬき天そば」は、発売から40年以上愛され続けている、カップ麺のロングセラーです。

 東洋水産は、冷凍マグロの輸出を主事業とする横須賀水産として1953年に創業しました。1956年に魚肉ハム・ソーセージの製造を開始し、社名を東洋水産に改めます。1961年には「マルト印ラーメン」、1962年にはマルちゃんマークの「ハイラーメン」を発売して即席麺市場に参入し、業容を拡大していきました。ただ、中華系の即席麺は競合商品が多数あり、大きなアドバンテージが生み出せません。そこで、1963年に東洋水産は「たぬきそば」を発売します。これは業界初の和風袋麺で、中華そば一辺倒だった即席麺に新風を吹かせました。

 1970年代になると、1971年に発売された日清食品の「カップヌードル」をきっかけにカップ麺ブームが巻き起こり、即席麺は袋入りからカップ麺の時代に入ります。東洋水産もカップ麺の生産を模索しますが、多くの会社が参入を始めており独自性が必要です。そこで生み出したのが、和風のカップ麺です。

 創業時から海産物の取り扱いを行っていた東洋水産は、かつお節を使った風味調味料「マルちゃん だしの素鰹あじ」を1969年に発売していました。そば、うどんといった和風麺は、かつお節から取ったかつおだしがつゆの基本になるため、「だしの素」のノウハウをアドバンテージとして生かせます。そして1975年に発売したのが、「カップきつねうどん」「カップ天ぷらそば」です。

 当時は和風のカップ麺はほとんど発売されておらず、両製品は大きな注目を集めました。すると、和風カップ麺の市場があると見て取った他社が続々と参入してきました。これはある程度予測された事態でしたが、先行していた東洋水産の優位性は急速に失われていきました。

インパクトを強化した「赤いきつね」「緑のたぬき」のブランディング…

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執筆=山本 貴也

出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。

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