脱IT初心者「社長の疑問・用語解説」(第82回)
ブルーライト対策にはうな重?
公開日:2022.05.31
DIYを楽しむときに、また組み立て式家具を組み立てるときなどに、工具のドライバーは欠かせません。そしておそらく、工具箱の中に1本はベッセルのドライバーが入っていることでしょう。家で何気なく使っていたドライバーが実はベッセルだった、というケースもあるのではないでしょうか。ベッセルがドライバーを作り始めたのは1916年のこと。ドライバーの大ロングセラーです。
ベッセルは1916年、田口儀之助が大阪に田口鉄工所を創業したのがその歴史の始まりです。当時、日本は近代化が急速に進んでいたことに加え、第一次世界大戦に伴う戦争特需もあり、工業生産が大きく伸びていました。しかし、工場で使われる産業用機械はほとんどが輸入品で、ドライバーはその付属品として機械と共に輸入されていました。
工業化の進展によりドライバーの需要が増えることを見越した儀之助は、その生産に着手。輸入品を手本に、熱した鋼鉄の板を手作業で伸ばしてドライバーを作り上げ、いち早く国産ドライバーの製造に成功しました。
最初に作っていたのは平らな板状のシンプルなものでしたが、儀之助のドライバーはそこから進化に次ぐ進化を遂げることになります。まず、海外から新たに入ってきた丸軸のスマートなドライバーに刺激を受け、柄の中は平軸、外側は丸軸というドライバーを製造。現在私たちが使っているドライバーの形にほぼ近いものが出来上がりました。
1933年には、英語で大きな船を意味する「VESSEL」をブランド化。1937年、そのVESSELブランドから画期的なドライバーが誕生します。木柄貫通ドライバーです。
通常のドライバーは柄の途中で軸は終わりますが、これは軸が柄の先まで通っており、柄の底をハンマーなどでたたきながら使用します。軸は柄の底の座金に固定されており、突き抜けるようなことはありません。ネジの溝にドライバーをしっかりと食い込ませることができ、ネジが非常に固く締まっていたり、ネジ頭がつぶれていたりするようなときに威力を発揮します。木柄貫通ドライバーは評価が高く、ロングセラーとなり、現在でもほぼ当時の形のままで発売されています。
そして戦後の1950年には、国産初のプラスドライバーの開発に成功しました。今でこそドライバーはプラスドライバーが多くなっていますが、ここまでのドライバーはすべてマイナスドライバーです。
ネジの歴史は古く紀元前にまで起源を遡れますが、プラスネジの歴史は意外に浅く、1935年ごろ、アメリカの技術者ヘンリー・F・フィリップスが発明したのが始まりです。日本では戦前・戦中にはほとんど生産されず、本格的にプラスネジが作られるようになったのは戦後になってからでした。
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執筆=山本 貴也
出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。
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