ロングセラー商品に学ぶ、ビジネスの勘所(第47回)革命的油性ボールペン「ジェットストリーム」を生んだ門外漢の視点

スキルアップ 雑学

公開日:2022.10.31

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 従来のものとは格段に違うなめらかな書き心地で、ボールペンに革命をもたらしたとも評されているのが三菱鉛筆の油性ボールペン、ジェットストリームです。そのスムースな書き味は世界で認められており、2003年に海外で、2006年に日本での発売が始まり、現在では世界販売本数が年間1億本を超えるという、ボールペンのベストセラーでありロングセラーです。

 ジェットストリームの物語は、三菱鉛筆の開発者が油性ボールペンの開発部署に異動になったことから始まります。この開発者は油性ボールペンの担当になったものの、それまで油性ボールペンは使っておらず、もっぱら水性ボールペンを愛用していました。

 水性ボールペンと油性ボールペンの違いは、インクにあります。水性ボールペンのインクは、主に水を使ったもの。一方、油性ボールペンのインクは有機溶剤を主な材料としています。水性ボールペンは、書き味が軽く、乾きやすいという利点がありますが、紙ににじみやすいという側面もあります。油性ボールペンは、にじみにくく、クッキリした線が書ける性質がありますが、インクの粘度が高いため、乾きにくく手が汚れやすい、そしてなによりも書き味が重いといった欠点がありました。

 この開発者が油性ボールペンを使っていなかったのも、自分の筆圧が弱かったため、書き味が重い油性ボールペンを苦手としていたのがその理由でした。油性ボールペンの開発に携わることになったのだから、筆圧の弱い自分でも軽く書けるものを作ろう――。ここから、まったく新しい油性ボールペンの探求が始まります。

 開発者は、油性ボールペンだけでなく、ボールペンの開発自体が初めてでした。従来の方法を知らない分、自由な発想で開発に取り組みます。書き味が重い、乾きにくいといった油性ボールペンの性質は、インクの溶剤に由来していると思われました。そこで、自社でも他社でも当たり前のように使われていた従来の溶剤を使うのをやめ、粘度の低いさらさらとした溶剤を使うことにします。ただ、それまで使われていなかったものだけに、安定してボールペンのインクとしての機能を果たすものにするのは容易ではありません。次々と新たな溶剤を試し、機能を追求していきました。

門外漢だからこそ前例を取り払い繰り返せたトライ&エラー…

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執筆=山本 貴也

出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。

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