「事業承継」社長の英断と引き際(第17回)事業承継成功のカギは挑戦し続けること(前編)

事業承継

公開日:2020.06.30

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金子コード(ケーブル・医療用チューブの製造販売、食品の生産販売)

 事業承継を果たした経営者を紹介する連載の第17回、第18回は、電話コードなどの各種ケーブルや医療用カテーテルを製造販売する金子コードの事例を紹介する。創業から80年を超える歴史を持つ同社は、さまざまなピンチに直面してきたが、それを新規事業への挑戦で乗り越えてきた。2005年に父親から事業を承継した3代目社長の金子智樹社長は、今まさに、危機に強く、長く継続できる会社であり続けるために新規事業を育てている最中だ。第17回では、金子智樹社長の事業承継の準備と、今に生きている先代社長の教えなどに焦点を当てる。

(かねこ・ともき)東京都生まれ。青山学院大学経済学部卒業。1990年4月 金子コード株式会社入社。1994年シンガポール現地法人のKANEKO(ASIA)PTE LTD.の初代社長に就任。以来、中国生産拠点の金子電線電信(蘇州)有限公司と併せた海外事業の責任者としてグローバル営業・経営に従事。2005年、代表取締役社長に就任。2019年11月被災地復興支援活動「奇跡の一本松、支援プロジェクト」のメンバー代表としてローマ教皇に謁見。キャビア事業など、自社の新規事業をけん引するとともに、SUNDRED/新産業共創スタジオにおいて中小企業の活力を日本の産業活性化、新産業共創のドライバーにすることをめざしている。

 

 金子コードは1932年に金子智樹社長の祖父、正雄氏が東京品川区で創業。当初は日本電信電話公社(電電公社・現NTT)の指定会社から電話コードの製造を請け負っていた。しかし、孫請けのままだと成長には限界がある。正雄氏は大幅な設備投資をして、試作品を作っては粘り強く売り込みを続け、電電公社からの直契約を勝ち取った。

 1978年に金子社長の父、正一氏が2代目社長となる。ちょうどその時、長男の金子社長は10歳。当時は会社と自宅が隣接しており、金子社長が社員と交流する機会も多かったという。自分がやがて社長になることに疑問を抱くことなく育った。

 「後を継ぐ以外の選択肢がない環境で育ったので、迷ったことは一度もない。それに、働く父の姿は子ども心にカッコよく見えた。中学・高校生の頃には、テレビドラマに登場する会社を見ると、自分はどんな社長になればいいのかと考えていた」(金子社長)

 そして、金子社長は大学の経済学部を卒業後、1990年に金子コードに入社する。「時代はバブル全盛期。売り手市場で学生の多くが大手企業に就職した。その一方で、中小企業は人手不足による黒字倒産が問題になるほど採用が困難な状況で、金子コードも例外ではなかった。いずれ金子コードを継ぐことは決まっていたので、それなら1分1秒でも早くここで働いたほうがいいだろうと考えた」と振り返る。

 意気揚々と入社したものの、金子社長はまず一般社員として営業業務を命じられた。「給与も待遇も、一番下っ端。大手に入社した大学の同級生とは比べものにならないほどの安月給だった。しかし、何の特別扱いも受けず一般社員として見ることができた景色のおかげで、社長になった今でも非常に経験が生きていると感じている。承継候補として特別扱いせずにスタートを切らせてくれたことは、非常に感謝している」と語る。

 「会社や仕事の文句を言う同僚や先輩もいて、そんな本音を聞くことができたのは貴重な経験だった。同僚や先輩たちを追い抜いてやがて社長になるということがどういうことなのか、当時は想像もできなかったが、とにかく偉そうな社長にだけはなってはいけない、ということは考えていた」と金子社長は振り返る。

海外進出の責任者として、経営の厳しさを学ぶ…

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執筆=尾越 まり恵

同志社大学文学部を卒業後、9年間リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。2011年に退職、フリーに。現在、日経BP日経トップリーダー編集部委嘱ライター。

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