「事業承継」社長の英断と引き際(第28回)お互いの弱みを補完する印刷会社のM&A

事業承継

公開日:2021.05.26

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清文堂印刷㈱(製版・印刷・製本)

 事業承継を果たした経営者を紹介する連載の第28回は、「北海道事業承継・引継ぎ支援センター」の承継コーディネーターを務める新宮隆太氏に、ご自身が事業承継に携わった印刷会社のM&A事例を紹介していただいた。

新宮隆太(しんぐう・りゅうた)
中小企業診断士・M&Aシニアエキスパート
北海道事業承継・引継ぎ支援センターの承継コーディネーターとして、中小企業におけるM&Aをはじめ、事業承継全般を支援する専門家として活動。数多くの成約実績、事業承継支援経験を持つ。中小企業診断協会北海道理事〔M&A事業化担当役員〕、事業承継研究会代表なども務める。

 事業承継・引継ぎ支援センターは、経済産業省が設置する公的機関であり、各都道府県の商工会議所などの認定支援機関が運営する組織だ。組織の規模はそれぞれのエリアの人口や企業数によって異なる。北海道事業承継・引継ぎ支援センターでは、21人のアドバイザーが北海道全域の企業を対象に、金融機関などと連携しながら事業承継の課題をサポートしている。

 もともと事業承継の課題を解決する事業は、「親族内承継」「従業員・役員などへの承継」「第三者承継であるM&A」に分かれていたが、事業承継の悩み全般をワンストップで支援する体制を構築するため、この4月に統合された。

 新宮氏は2009年に中小企業診断士の資格を取得し、17年度から事業承継全般のアドバイザーを務めている。

 「事業承継の支援業務に就く前は、まちづくりの会社に勤務をしていました。シャッター商店街などの問題に携わる中で、事業承継の悩みに触れる機会が多くあり、そんな企業さまを少しでも支援できればと考え、この道に進みました」(新宮氏)

 事業統合前、従業員・役員承継、第三者承継をメインに支援してきた北海道事業引継ぎ支援センターの2020年度の相談件数は303件、成約件数が46件で、コロナ禍以降、相談件数は増加傾向にあるという。

 「新業態に挑戦する企業を応援する事業再構築補助金を活用し、業態転換をする企業も増えています。コロナ禍の長期化により、資金や資産を食い潰してしまう前に、廃業・倒産を決断する企業もこれから増えていくだろうと考えています。中には債務超過になる会社もありますが、それも含めて、その会社が築いてきた歴史やノウハウを残し、雇用を守ることが我々のミッションです。

 高齢だから事業承継するとも限りません。数は少ないですが、40代、50代の経営者からの事業承継のご相談もあります。少しでも会社に価値のあるうちに売却したいと考える動きも加速するだろうと考えています」(新宮氏)

M&Aがコロナ禍におけるリスクヘッジになった…

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執筆=尾越 まり恵

同志社大学文学部を卒業後、9年間リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。2011年に退職、フリーに。現在、日経BP日経トップリーダー編集部委嘱ライター。

【T】

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