「事業承継」社長の英断と引き際(第30回)社員を育て次期社長を選んだ会計事務所(前編)

事業承継

公開日:2021.07.26

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古田土経営(中小企業の会計、財務、経営指導)

 事業承継を果たした経営者を紹介する連載の第30回は、中小企業を中心に会計業務を担う古田土経営の創業者、古田土満(こだと みつる/「土」に「、」)会長。1983年に前身となる古田土会計事務所を設立し、現在では古田土会計280名、グループ全体で360人の従業員を抱える。2018年4月に、取締役だった飯島彰仁氏に事業を承継した。

 古田土会長は水戸商業高校を卒業し、法政大学時代に「身に付けた簿記会計の知識を生かしたい」と考え、公認会計士を志す。新卒で監査法人に入社したが、大企業の監査を担当する毎日に、やがて疑問を感じるようになったという。

 「大企業ばかりを相手に監査業務をしていましたが、監査というのは極論すれば“あら探し”のようなもの。自分には向いていないと思いました。プレッシャーばかりが大きく、ここで公認会計士の資格を持つ自分が役に立てることはないと感じるようになりました」(古田土会長)

 30歳で独立し、個人事務所の開業を決意する。大企業の監査業務から一転、中小企業を担当するようになった古田土会長は、中小企業家同友会や勉強会などで多くの中小企業の経営者と出会い、話を聞いた。

 「大企業との大きな違いは、中小企業の経営者のほとんどは個人保証をしてご自身の財産を担保提供しながら会社経営しているということです。また、中小の場合は社長が1人で採用から教育、財務、営業までこなしている。オールラウンダーであり、財務の専門家ではありません。それゆえに、お金のもうけ方、残し方を数値的に捉える専門知識を持たず、多くの人がカンと経験で経営をしています」

 そんな中小企業に対して必要なのは、数字をしっかり分析しアドバイスすることだと古田土会長は考えた。「どこに問題点があり、どう改善していればよいのかを分析しアドバイスすることに力を入れようと考え、中小企業に適した商品を開発していった」という。

古田土満(こだと・みつる)
1952年生まれ。83年、東京都江戸川区で古田土公認会計士税理士事務所(現税理士法人古田土会計)を開業。「古田土式月次決算書」と「古田土式・経営計画書」を武器に、経営指導と会計指導を両展開。グループ全体で約3500社の中小企業の顧客を抱える。2018年に社員の飯島彰仁氏に事業承継し、会長に就任した

 1991年に開発し、今多くの中小企業に広めているのが「古田土式・経営計画書」だ。数字だけでなく、どういう会社にしたいのか、夢や理念、方針を明確にしていくためのツールになっている。

 「経営計画書は、会社の未来を作っていくもの。思いは強くても、中小企業の経営者はそれを具体的な方針として明文化できていない場合が多い。有名な経営コンサルタントに依頼すれば、多額の費用がかかる。我々は会計の月額顧問料5~6万円で会計業務だけでなくこれらの経営計画書の作り方の指導まで行っているため、非常に喜ばれています」(古田土会長)

 開業当初は「30人くらいの会社になれば」と漠然とした目標を掲げていたという古田土会長だが、口コミでサービスの質のよさが広まり、営業活動をせずとも年間150~200社のペースで新規顧客が増えているという。21年7月にはM&Aによりグループ企業を増やし、現在はグループ全体で約3500社の顧客企業を抱えている。その多くは売り上げ5000万円~50億円ほどの規模の企業だが、中には100億円を超える企業もあるという。業種もさまざまで、製造業、小売業から病院、お寺まで幅広い。

公私混同していては会社は成長しない…

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執筆=尾越 まり恵

同志社大学文学部を卒業後、9年間リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。2011年に退職、フリーに。現在、日経BP日経トップリーダー編集部委嘱ライター。

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