オフィスあるある4コマ(第45回)
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公開日:2020.03.13
「働き方改革」という言葉を聞く機会は非常に多くなりました。しかし、その具体的な内容や目的についてご存じでしょうか。この記事では、働き方改革の基本的な考え方、併せて覚えておきたい働き方改革関連法について、分かりやすく解説します。
はじめに、働き方改革がどのようなものなのか、概要と目的について見ていきましょう。
<働き方改革とは>
働き方改革は、2019年4月から順次適用開始されている国の重要政策です。一億総活躍社会実現に向けた労働環境を大きく見直す取り組みです。
少子高齢化による生産年齢人口の減少や、長時間労働の常態化、非正規労働者に対する待遇差など、働き方に関する問題に対応するための改革となっています。
<働き方改革の目的>
働き方改革の目的に関して、厚生労働省のWebサイトには以下のように書かれています。
我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。
~(略)~
「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
働き方改革は、働く人々の生活状況の多様化に伴い、一人ひとりがより良い働き方ができる労働環境を用意することが目的です。働きやすい環境を準備することで、国にとっては労働者の増加に伴う税収増、企業にとっては労働力の確保と生産性向上を期待する狙いもあります。
働き方改革が必要とされる理由は、日本の社会的背景にあります。具体的には次の3点が主な理由です。
1.少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少
2.働き手のニーズの多様化
3.長時間労働と過労死問題
現代の日本は超少子高齢化社会です。生産年齢人口(15~64歳)の割合は、1990年をピークに減少し続けています。総務省統計局の人口推計によれば、2018年10月1日時点の15~64歳人口は、1950年以降過去最低であるとされています。
出典:総務省統計局ホームページ
また、働き手の多様化も進んでいます。女性の社会進出の後押しとして、育児や介護との両立など、さまざまなニーズに労働環境が適応することが求められています。
生産年齢人口の減少は、すなわち働き手が減るということです。今まで通りの生産性では人手が足らなくなります。より柔軟な労働環境を整備し働き手のニーズに応え、従来働けなかった人でも働けるようにする必要が出てきています。
さらに、日本では長時間労働の常態化と過労死の問題が、ニュースでも大きく取り沙汰されてきました。他の先進諸国と比較しても、日本の長時間労働は際立ちます。働き方改革を通して労働時間の短縮、生産性の向上が必要とされています。
働き方改革には、大きく3つの柱があります。それぞれの概要や目的、メリットについて1つずつ見ていきましょう。
1.長時間労働の是正
日本の長時間労働は、2013年に国連からも是正勧告がなされるほど問題視されてきました。長時間労働は身体だけでなく、心理的な病気も引き起こすのが分かっており、最悪の場合には過労死する危険性もあります。
この流れの中で、働き方改革推進に向けて労働基準法が改正されました。労働基準法の改正では、これまで罰則による強制力がなく、また一定の場合には上限なく可能とされていた時間外労働に対して、明確に上限を設けて長時間労働を是正します。長時間労働の是正で期待されるのは、身体・心身的な病気の予防だけではありません。働き手が出産・育児年齢と重なることから、出生率の向上もメリットとして挙げられるでしょう。
2.多様で柔軟な働き方
日本では定められた職場で、平日の午前9時~午後6時といった時間帯に働くスタイルが多く見られます。しかし、就業場所と労働時間を限定すれば、働き方の柔軟性が失われ、労働形態が硬直します。そのため、子育てや介護に従事する人は、働く意志があっても働けない状況に置かれる場合があります。
働き方改革では、就業場所と労働時間を限定されない「雇用型テレワーク」を高く評価しています。テレワークによる働き方は、就業場所や労働時間を限定せず、多様で柔軟な働き方が可能です。
3.雇用形態にかかわらない公正な待遇確保
総務省統計局の労働力調査によれば、雇用者の約4割は非正規雇用労働者が占めるのが分かります。しかし、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間には、待遇に差があることが多く、非正規雇用労働者の処遇改善が求められています。
働き方改革では、「同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指す」目的で、同一労働同一賃金が掲げられています。待遇差の解消の取り組みを通じて、「同じ賃金であればあえて柔軟な非正規雇用を選択する」などの多様な働き方が期待されています。
働き方改革の推進を目的とした「働き方改革関連法」は、労働関係法を改正するための法律です。働き方改革関連法の概要や内容について解説します。
<働き方改革関連法とは>
働き方改革関連法は2018年6月に成立し、含まれる各改正法に関しては2019年4月より順次施行されています。長時間労働の是正などを推し進めるために、労働関係の法律の改正が必要とされ、働き方改革関連法が成立しました。
具体的に改正された労働関係法としては、次の8つの法律が該当します。
・労働基準法
・じん肺法
・労働施策総合推進法
・労働安全衛生法
・労働者派遣法
・労働時間等設定改善法
・パートタイム・有期雇用労働法
・労働契約法
働き方改革関連法の対象企業は「大企業」と「中小企業」に分けられますが、大企業から順次施行が開始しています。中小企業の分類方法は、次の定義通りです。
引用元:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
こちらの表に該当しない企業は大企業に分類されます。
<働き方改革関連法の内容>
働き方改革関連法の施行内容について、厚生労働省の資料を参考にまとめると次のようになります。
このように、大企業、中小企業での開始時期に違いはあれど、働き方改革関連法の内容に違いはありません。施行されると、残業時間の上限規制や割増賃金率の引き上げ、年5日間の年次有給休暇の確実な取得など、労働者の労働時間を抑える努力が企業に求められます。
企業が働き方改革の支援策として、補助金・助成金制度や無料相談窓口が用意されています。ここでは、それぞれの支援策についていくつか紹介します。
<補助金・助成金>
まずは、設備やIT導入等による生産性向上や、業務効率化を目的として利用できる補助金・助成金の支援策について紹介します。
引用元:働き方改革を知ろう!(政府広報)
企業によっては働き方改革関連法の内容を守っていくことが難しい場合もありますが、これらの支援策を上手に利用し、対応することが求められます。
<無料相談窓口>
働き方改革では、多くの法改正がなされており、詳細部分の把握が難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。支援策の中には、専門家による無料相談が可能な窓口も用意されています。不明点や相談は、以下の無料相談窓口を利用しましょう。
引用元:働き方改革を知ろう!(政府広報)
働き方改革は、一億総活躍社会の実現に向けて、労働環境を大きく見直す取り組みです。大企業を始めとして順次改正法が施行されており、今後も対応が求められます。
特に中小企業では、2020年以降に大企業と同等の働き方改革への対応が必要となりますが、対応にお悩みの方も多いのではないでしょうか。
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監修=古澤拓(ふるさわ・たく)
弁護士。東京大学法学部卒業後、2014年に弁護士登録。以後は4年半ほど法律事務所にて執務した後、現在はスタートアップ企業の法務にて勤務中。法律事務所にて執務中には、メガバンクの法務部への出向なども経験。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=太田 勇輔
ネットワークスペシャリスト、情報セキュリティスペシャリスト保有。インフラエンジニアとして、官公庁や銀行などのシステム更改をメインに10年従事した後、IT関連ライターとして活動中。プログラミング、ネットワーク、セキュリティなどの解説記事を中心に執筆している。
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