新型コロナウイルスが確認されてから2年。変異種の影響でたびたび政府からの要請が出されるなど、経済活動や社会生活への影響は大きい。東京商工リサーチ『第16回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査』によれば、新型コロナウイルス感染症の発生が企業活動に影響を及ぼしているか尋ねたところ、中小企業(資本金1億円未満や個人企業など9,191社)の70%超が「影響が継続している」と回答。新型コロナの変異種が世界的に広がるなど収束への道筋が見えにくい中、ビジネス活動への影響はしばらく続くと見られる。
新型コロナ収束までの期間が長引いた場合、店じまい、廃業を検討する小規模事業者もあるかもしれない。前述のアンケート調査では、中小企業の「廃業検討率」は8.2%に上り、宿泊業、飲食店、アパレル小売業などがその上位を占める。
【新型コロナウイルスの企業活動への影響】
出所:第16回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査(東京商工リサーチ)を基に作成
コロナ禍による中小・小規模事業者の倒産や廃業を回避し、事業を継続するには金融面での支援が欠かせない。政府では、無利子・無担保融資や雇用調整助成金、持続化給付金などの支援策を打ち出しており、倒産を抑制している側面もある。支援策を活用しつつ、新型コロナの感染対策と経済活動を両立する「新常態」のビジネスモデルへとかじを切る必要がある。
自社の強みを生かして活路を開く…
コロナ禍のような非常事態において、廃業や店じまいを回避するにはどうすればいいか。自社の強みを生かしながら新たな販路を開拓する方法もある。例えば飲食店の場合、緊急事態宣言などで店舗での酒類の提供や利用人数が制限されたこともあったが、テークアウトに切り替えて活路を切り開いた飲食店も少なくない。
また、対面での営業活動が一般的だった不動産会社などの店舗ではオンラインの相談窓口に切り替えるなどして事業を継続する例もある。小売店も店舗での対面販売が難しければネット販売に切り替えたり、新業態で新規オープンしたりする方法もある。
「うちは小規模事業者なので、大手と違って業態の転換は難しい」という経営者もいるかもしれない。だが、いずれコロナが収束しても、飲食のテークアウトやオンライン相談など、「非接触」のスタイルに慣れた消費者の行動が完全に元に戻るとは考えにくい。そこで、リアルの店舗販売とオンライン販売などのデジタルを併用しながら業務を継続、発展させるための発想の転換が求められる。
デジタル化の推進で生き残る
デジタル化については、「2021年版中小企業白書・小規模企業白書 概要」でも言及されている。デジタル化に対する事業方針上の優先順位が「高い」「やや高い」企業は感染流行前が45.6%だったのに対し、感染流行後は61.6%に増加した。
また、事業継続力の強化を意識してデジタル化に取り組む企業は、従業員数20人以下の企業でも55.6%に上る。同白書では「競争力や事業継続力の強化の観点からのデジタル化に対する意識が高まっている。一方、デジタル化推進に向けて、アナログ的な文化・価値観の定着といった組織的な課題がある」と指摘する。
店舗や小規模事業者の身近なデジタル化推進手段には、インターネット用回線の有効利用がある。既存の電話用回線(アナログ回線やISDN回線)を利用している企業は、インターネット用回線を電話と重畳させるものに切り替えたり、テークアウトの注文受付用システムを導入したりすれば、インターネットサービスを介した注文も見込める。こうした新たな業態への転換も可能だ。新常態の中でも商機を逃さず、事業拡大も期待できるのではないだろうか。