脱IT初心者「社長の疑問・用語解説」(第82回)
ブルーライト対策にはうな重?
公開日:2024.02.27
<目次>
・物価が上昇している一方で、労働者の実質的な賃金は減っている
・立場が弱い受注者側は、発注者側にどうやって交渉すれば良いのか?
・発注者側も、労務費の転嫁に協力する必要がある
日本では現在、物価が上昇しています。
総務省の調べによると、2023年の平均消費者物価指数は「105.6」(2020年を100とした場合)で、これは2022年よりも3.2%高い数値です。背景としては、新型コロナウイルスの感染症拡大によるモノやサービスの提供の停滞、ロシアのウクライナ侵略などにより、原材料費などが上昇した影響が考えられます。
物価が上昇しているということは、製品やサービスの価格が高くなるため、企業の収入が増え、企業で働く人たちの賃金もそれに連れて高くなっていくはずです。しかし、厚生労働省が発表した2023年11月の実質賃金(※)指数は「83.9」(2020年を100とした場合)と低く、しかも前年同月比で3.0%の減少、20カ月連続のマイナスとなっています。
※実質賃金…労働者の賃金が、実際の社会においてどれだけの物品の購入に使えるかを示す値のこと
この事態を受け、内閣官房と公正取引委員会は2023年11月末に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公開しました。
この資料は、急激な物価上昇の中でも持続的に賃上げを行うために、日本の雇用の7割を占める中小企業が原資を確保するための取引環境を整備することを狙ったもので、製品やサービスを生産・提供するために必要な人件費である「労務費」を、商品の価格に適切に転嫁していく方法が紹介されています。簡単にいえば「従業員の賃上げのために、製品やサービスの価格を値上げしていくためのノウハウ」が記されているということです。
もちろん、製品やサービスの値上げは、発注者(顧客)が離れていく一因となり得ます。そんな中、受注者側である中小企業は、どのようにして労務費を価格に転嫁し、賃上げを進めていくべきなのでしょうか?
資料ではまず、労務費の転嫁の現状について触れており、原材料価格やエネルギーコストと比べると、労務費を価格に転嫁している企業が非常に少ない傾向にあるとしています。加えて、不動産取引業、映像・音声・文字情報政策業、技術サービス業については、そもそも労務費の転嫁を発注者に依頼していないケースが多いと解説しています。
さらに一部の企業からは、労務費の転嫁について「発注者側が、労務費の上昇分は、受注者の生産性や効率性の向上を図ることで吸収すべきという意識を持っている」「発注者側から労務費の上昇に関する詳細な説明・資料の提出が求められる」「今後の取引関係に悪影響(転注や失注など)が及ぶおそれがある」といった声も聞かれたと記載しています。
このように、取引上の立場では受注者よりも発注者の方が高く、受注者から労務費を価格に転嫁したいと言い出しづらい状況にあるため、受注者側は以下の4つのポイントを留意したうえで、価格転嫁の交渉を行うべきとしています。
【受注者側が取るべき/求められる行動】
(1)相談窓口を活用すること
国や地方公共団体の相談窓口、商工会議所や商工会など中小企業の支援機関の相談窓口に相談し、積極的に情報を収集して交渉に臨むべきとしています。
(2)根拠とする資料を用意すること
発注者と価格交渉する際の根拠資料として、最低賃金の上昇率や、春季労使交渉の妥結額および上昇率といった公表資料を用いることを推奨しています。
(3)受注者が価格交渉を申し出やすいタイミングを狙うこと
業界で慣例的に行われている価格交渉の時期や、発注者側の繁忙期など、受注者の交渉力が比較的優位にあるタイミングを狙うことを勧めています。
(4)発注者から価格を提示されるのを待たず、自ら希望する額を提示すること
発注者側からの価格提示を待たず、受注者側から希望額を提示することを推奨しており、その際には自社の発注先やその先の取引先など、サプライチェーン全体の労務費を考慮すべきとしています。
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