私たちの移住先として、八ヶ岳山麓の北杜市に引かれた理由の1つが晴天率のよさ。ここ、山梨県北杜市は県内でトップクラス、全国でも有数の年間日照時間を誇る地域であり、晴天率が高い場所は快適でいいことずくめだ!と思っていたけれど、実際に暮らしてみたら、逆に雨のありがたさが分かるようになった。今回は畑で作業をしたり、野菜を収穫したりしながら感じた、この地の天気について書いてみたい。
天気のいい日が本当に多い
移住前の生活では、どちらかといえば雨はマイナスな存在だった。山岳ライターの私としては、雨天だと山での取材ができず、仕事にならない。それに日常生活でも洗濯物がなかなか乾かないし、外出で足元がぬれるのも気になる。天気は晴れるに越したことはないと思っていたのだ。海に近くて雨も多く、特に夏は湿度の高さを感じることが多い地域で育った私は、逆の環境に憧れていたということもあったかもしれない。
ここに移住してきてからは、日々の暮らしの中で雨の少なさや、湿度の低さを実感している。北杜市は内陸性の気候で標高が高い。わが家のあたりは夏でもムシムシした暑さになることはあまりなく、木陰に入ればさわやかで涼しい。周辺地域に比べると、夕立も少ないようだ。これから冬にかけては、さらに晴れ渡る日が多くなり、空気が澄んだ時には近くの山だけでなく、遠く北アルプスの山並みまで見える。
青い空が広がる下での生活はとっても気持ちがいい。でも、ちょっと困ったこともあった。
近所から見る初冬の南アルプスの山並み。澄んだ空気が気持ちいい
晴天率が高いということは……
困ったこととは、畑の水不足である。春から夏にかけての野菜の成長期に晴天が続くと土がパサパサに乾いて、成長しなかったり、種類によっては枯れてしまったりすることもある。移住する前に雨が少ないことを期待していて言うのもなんだが、これは予想外だった。
家の周りには緑豊かな田んぼも畑もあるし、山々だって深い樹林に覆われている。だから畑の水やりで苦労するとは夢にも思っていなかったのだ。でも、自分で野菜を栽培してみるとニンジンやホウレンソウなどの種の発芽率が悪いと感じるし、水を好むサトイモやショウガは移住前年からここで栽培に挑戦しているが、3年連続で収穫量が少なかった。私の育て方の下手さもあるかもしれないけれど、静岡の実家で同じように野菜作りをしている母も成長が違うと言うので、やはり環境的な影響がありそうだ。
畑の乾燥対策として、水を好む野菜は不織布や刈り草で覆ったり、朝夕に水やりをしたりしている。それでもホースでまける水の量は知れていて、日照りの中ではそれこそ「焼石に水」状態。一瞬でも通り雨が来てくれれば、少しは畑も潤うのにと思う日々である。
[caption id="attachment_51008" align="aligncenter" width="400"] 山の向こうは大きな積乱雲が発達しているけれど……[/caption]
山が雨雲を寄せ付けない?
心の中で雨乞いをしながらスマホアプリの雨雲レーダーを見ていると、山に囲まれたこの地域を避けるように雨雲が去って行ってしまうことが多い。周囲を見渡してみると確かに、山の向こう側は積乱雲が発達して雨が降っていそうな気配なのに頭上は晴天ということが、この夏は特によくあった。もちろん低気圧が通過したり、前線が停滞したり、台風がやってくるなど、広域で雨が降るときにはここも雨になるが、にわか雨は少なそうだ。
雨が降りづらい、それは周囲に高い山があることが理由だろう。湿気を含んだ空気は山を越える手前で雲となって雨を降らせ、こちらにやってくるころには湿気がなくなるのだ。
日ごろ、水道をひねればいつでも水を使える生活をしているので、これまではよほどの渇水でない限り、雨のありがたさを思うことはなかった。今は、晴天下での生活を楽しみながらも、天気予報で雨マークが付くと、これで土地が潤うとホッとする気持ちを抱く私である。適度に雨が降るということは本当にありがたい。
山野を彩る季節の植物たち 〜ヤマナシ〜
秋の里山歩きで楽しいのは、果物の野生種探し。クリ、野ブドウ、サルナシ(キウイフルーツの仲間)、そしてヤマナシ……。ヤマナシは果物のナシの野生種で、漢字は想像通りの「山梨」。私が住む山梨県の名の由来という一説もある。実の大きさはピンポン球ほどで、栽培種に比べるとかなり小さい。でも、皮の表面にはナシ独特の斑点があって、ミニチュアのようだ。試しに食べてみると、甘みは少なくて渋く、あまりおいしくはないけれど、香りやジャリッとした食感からは果物のナシを思い浮かべられる。
[caption id="attachment_51009" align="aligncenter" width="400"] 里山を散歩中に見つけたヤマナシの実[/caption]