ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
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公開日:2023.04.25
社内の情報セキュリティ体制を確立するには、会社としてファイアウォールやアンチウイルスソリューションなどのセキュリティシステムを導入するだけでは十分ではない。システムの利用者である従業員のセキュリティリテラシーを高めることが、セキュリティ対策の実効性を向上させる鍵になる。そうした従業員教育にお勧めしたいのが、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が無料で提供している情報セキュリティ教材の活用だ。
IPAが提供している「情報セキュリティ教材」は5つのカテゴリーから構成されている。「情報セキュリティ対策」「手口を知る」「SNSとの付き合い方」「情報社会の問題解決」「情報に関する法や制度」だ。企業としては「情報セキュリティ対策」や「手口を知る」「情報に関する法や制度」あたりから活用しよう。
「情報セキュリティ対策」には、コンピュータウイルス、ネット詐欺、パスワード、外出先での利用、物理的なセキュリティ対策の5項目があり、コンテンツを組み合わせて活用しやすいようにそれぞれに小項目を用意している。
小項目のスライドは全てMicrosoft PowerPointで作成されていて、項目ごとに「考えてみよう」「答え」「対策の解説」といった3枚のスライドに内容がコンパクトにまとめられている。短時間でテンポよく講義を進められるように工夫されているのが大きな特徴で、スライドのノート部には講義する側のセリフ例も記載している。
例えば、「コンピュータウイルスとは?」のスライドでは、そもそもコンピュータウイルスとは何なのかという定義を説明し、「OSなどを常にアップデートしておく」「メールの添付ファイルを安易に開かない」といった基本的な対策を紹介している。
パスワードの項目では、「複数のサービスでパスワードを作る際の注意点」でコアパスワードとサービスごとに異なるキーワードによるパスワードの作り方を示し、「パスワードの管理」でどのようにパスワードを適切に管理するかを解説している。
「手口を知る」では、IPAが発表した「情報セキュリティ10大脅威2023」でも第一位になったランサムウエアについての解説があり、ランサムウエアに感染するとどうなるのか、被害を防ぐには「データをこまめにバックアップする」「身代金を払わない」といった対策を示している。
いずれも内容的には初心者向けだが、従業員のセキュリティリテラシーを向上させるという目的を考えると、第一歩としては十分活用できるレベルといえるだろう。
さらに従業員教育に効果的だと思われるのが、これらの教材を効果的に活用するための「啓発者向け活用ガイド」の提供だ。教材の使い方や各スライドのポイントの解説だけでなく、IPAが制作した映像コンテンツなど複数の教材を組み合わせた使用例を紹介している。
使用例の一つとして、シニア層向けに60分間の講演を実施する具体的なプログラムを掲載している。パスワードが悪用され被害を受けたというドラマ仕立ての映像コンテンツの後で、パスワードの役割や作り方の講義、グループワークで振り返りを行い、偽セキュリティの警告への対応についてドラマ仕立てで啓発するという流れだ。
それぞれのコンテンツが担う役割や、60分の講演の細かな時間の割り振りが具体的に示されており、自社の現状に合わせた従業員用の教育プログラムを考える上でも、ベースとして活用できるだろう。
また、巻末には付録として「教材中に出てくる用語の説明」を掲載している。用語についての補足的な説明ではあるが、セキュリティの専門用語に不安のある講師は、これを読んでおけば安心して講義に臨めるだろう。
IPAでは映像による情報セキュリティの教育に力を入れ、これ以外にもコンテンツを用意している。ドラマ仕立てのものやアニメ仕立てのもの、英語版などバラエティーに富んでいるので、自社従業員の情報セキュリティレベルに合わせたオリジナルの教育プログラムの教材として活用できるものが見つかるのではないだろうか。
執筆=高橋 秀典
【TP】
審査 24-S706
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