ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
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公開日:2021.09.08
デジタルディスラプションにバランスよく取り組むためには目前の変化にきちんと対処する必要があるということを示すために、私たちの研究では、「デジタル成熟度」という野心的な目標を掲げ推進している。
「デジタルディスラプション」や「トランスフォーメーション」、その他似たような用語やフレーズを使うのは、現在ほとんどの人がこの用語を使っているからにすぎない。だが、テクノロジーに特徴づけられる競争環境に、組織や人材や経営陣が効率的に適応するために必要とされる、有意義で包括的な継続する変化を表現するときには、デジタルトレンドと結びつけられることの多い仰々しい物言いを、できるだけ避けられたらと思う。
私たちは「デジタル成熟度」を次のように定義する。
効果的に競争するために、組織内外のテクノロジーのインフラストラクチャーによる機会を活用して、組織の人員や文化、業務の足並みをそろえること。
この定義は、デーヴィッド・A・ナドラーとマイケル・L・タッシュマンの考案した、定評ある組織理論(“A Model for Diagnosing Organizational Behavior,” 1980)を参考にしている。二人は、企業の最適なパフォーマンスの主な構成要素として、「組織の整合性(organizational congruence)」という概念を主唱した。この概念は、企業に不可欠な要素――文化、人員、構造、業務――がしっかりと足並みをそろえているときに限り、企業は大きな成果を得られるというものだ。
例えば、保守的で階層的組織が活力あふれる起業家を採用しても、彼らの意欲やエネルギーを生かせないかもしれない。同様に、完全にフラットな構造の組織でも、リスクを避ける企業文化であるならば、その組織はなかなか成果を上げられないかもしれない。
整合性の要素は一見、直観的あるいは時代遅れに思われるかもしれない。だが、多くの企業では時を経ても組織のこうした要素の調和を果たせていない。デジタルプラットホームの導入は、新たなデジタル競争環境で必要とされる連携に不可欠だとはいえ、このようなプラットホームを利用するだけでは、デジタル成熟度にとって十分ではない。現代の複雑なビジネスのかじ取りをするためには、絶え間ない変化という難題に幹部が効果的に取り組めるように、企業はその文化、人員、構造、業務の間で、そしてデジタル環境とも、足並みがそろうようにすべきである。
企業が直面する主な難題は2点ある。一つは、多くの企業は、過去10年ほどにわたるテクノロジーの発展に合わせて組織を再調整していないことだ。このような企業は、いかに組織を運営すべきかということと、現在の環境で可能なこと、期待されることとの間に横たわる、かなりのギャップを埋めなくてはならない。
もう一つは、変化のスピードが速まっているので、急速に進化する環境に組織を絶えず適応させなくてはいけないことだ。組織のデジタル成熟度が高まり、すばやく適応できるようになるにつれて、組織のいくつかの側面は変化する必要があるだろうが、変化する必要がない側面もある。デジタル成熟度を高めるために、優れたマネジメントの戦術を捨てる必要はないが、現在の環境に合わせてその戦術を更新する必要がある。それを把握すること――何を変える必要があるか、変える必要がないか――は、デジタル環境におけるマネジャーの主な目的の一つである。
従って、ここでいうデジタル成熟度の概念を、組織の退屈な最終状態だと誤解してはいけない。むしろ、デジタル成熟度――さらに正確に言うなら、デジタルに成熟すること――とは、環境に応じて人員、文化、業務、構造の足並みを再びそろえて、変化するテクノロジー環境に組織が絶え間なく適応するという、柔軟性のあるプロセスである。従来型の組織にとっては、この難題は不可能ではないにしても、厄介に思われるだろう。組織が大きな変化を取り入れていなければ、確かにそうかもしれない。リーダーは組織がどのように機能するか再考し、次に、この流動的環境に対応しやすい人材モデル、文化の特徴、業務の定義、組織構造を開発する必要があるだろう。
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訳者=庭田 よう子
翻訳家。慶應義塾大学文学部卒業。おもな訳書に『目に見えない傷』(みすず書房)、『ウェルス・マネジャー 富裕層の金庫番』(みすず書房)など。
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