トラブル解消のためにWi-Fi環境を全面刷新
100年以上の歴史を持つ北海道室蘭市にある地域の基幹病院では、電子カルテ専用のWi-Fiアクセスポイントが老朽化し、トラブルが頻発していた。また、新型コロナウイルス感染患者へのリモート面会およびアメニティー向上策としてフリーWi-Fi環境とタブレット端末を導入していたが、コンシューマー向け機器で構成したためスペックが不足し、エリアによっては接続状況が不安定だった。フリーWi-Fiはコロナ対応病棟以外にもニーズがあり、改善を要望する投書が寄せられるなど、病院全体をカバーする整備が求められていた。
同院では2021年に電子カルテ専用Wi-Fiの全面刷新と病院全体のフリーWi-Fiの導入を決断し、ICTベンダーやネットワーク機器メーカーなど複数社に提案を求めた。各社の提案を比較検討した結果、仮想コントローラーやLANマップなどの機能を搭載した製品を選択した。
仮想化、高速化、見える化でコスト削減と工期短縮
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同院のネットワーク刷新プロジェクトで注目すべきは、既存のネットワーク環境を生かしつつ仮想化でコストを削減し、工期を短縮した点だ。仮想化機能を搭載した製品を選択したため、コントローラーや監視・管理ツールを導入せずに改善できた。スイッチングハブ内でネットワークを切り替えて仮想的にネットワークを分割するVLANを利用し、電子カルテ用、フリーWi-Fi用、その他の業務用、保守用の4種類のネットワークを仮想的に分離、用途に応じてユーザーを分けている。
その上でWi-Fi6に対応したビジネスWi-Fiを導入し、ストレスのない利用を可能にしている。ネットワークの利用状況を想定した全体設計を行い、同時に多数の接続が想定される外来ロビーや事務部門などには上位モデルのアクセスポイントを配置した。
同院ではネットワーク構築時にWi-Fi接続状況を可視化する機能を搭載した製品を導入したため、接続状況を効率的に確認できるようになった。さらにLANマップの活用で各病棟のスイッチおよび100台のWi-Fiアクセスポイントの稼働状況を毎朝チェックできる仕組みを構築し、誰もが簡単に運用できる環境を提供している。
今回のプロジェクトは老朽化によりトラブルが頻発していた電子カルテ専用のWi-Fi環境と、コロナ禍に対応して急ごしらえで構築した一般向けフリーWi-Fi環境の両方をあわせて刷新したものだ。仮想化、高速化、見える化を組み合わせ、機能向上とともに工期短縮とコスト削減を実現した。
同時に、複数のルーターを束ねて仮想的に1つのルーターにする機能を使ってWAN回線を冗長化し、統合脅威管理機能を持つUTMアプライアンスを導入。セキュリティも強化している。後付けが難しい機能だけに、刷新時にはこうした面も配慮すれば、長期にわたり利用できる仕組みとなるだろう。