紙文書――。ビジネスにおいて、なくてはならないものでありながら、働き方の変革推進の課題となりがちな存在でもある。コロナ禍のリモートワークの浸透で、以前のように何から何まで紙に印刷して配布し、ファイリングするといったビジネス慣習からは脱却が進んだ企業もある一方で、オフィス回帰で従来型の仕事のスタイルに戻るケースもある。こうした中でオフィスに活気が戻ると同時に、複合機やプリンターから印刷する資料や書類などが増えている。
資料や書類の印刷の現状は把握できている?
オフィスには複合機やプリンターがあり、業務に必要ならば紙に印刷することに抵抗感がないビジネスパーソンも多いだろう。それでは、あなたの部署、そしてフロアなどで、どのぐらいの紙が印刷されているか、複合機やプリンターが効果的に配置されているかなどを考えたことはあるだろうか。「それは、総務か情報システム部門が把握しているのでは」と考えるのが一般的だ。
しかし、総務部門や情報システム部門は多くの本業を抱えている。総務部門ならば、その業務はオフィスや設備の管理、備品や固定資産の管理、働き方改革への対応など多岐にわたる。情報システム部門においては、システムの保守運用はもちろん、従業員に対するヘルプデスクから将来のシステム構想の立案まで多様な仕事がある。複合機やプリンターによる印刷環境の把握や最適化まで手が回らないという企業も多いのではないだろうか。
一方で、印刷にまつわるコストや業務は少なくない。利用状況を把握して、デバイスの配置や数を最適化できれば、トータルのハードウエアコストを削減できる。同時に、トナーや用紙などのサプライ品の削減も可能になる。そして、適切な配置によりユーザーである従業員は、最寄りの複合機やプリンターから待ち時間なく印刷が可能になる。「印刷の見える化」ができれば、業務の効率化や人手不足への対策の一歩にもなるというわけだ。
印刷環境の見える化でオフィスが抱えるリスクを削減…
完全ペーパーレスに移行していない限り、企業の業務の一部は印刷に割かれている。デバイスの配置や数量が最適化できないことによるコスト増加や使い勝手の低下は前述したが、不具合が起きたときには保守ベンダーへの連絡に手間取られ、デバイスが停止中には業務効率も低下する。拠点が分散している場合には、各拠点で同様の手間などがかかる。こうした不具合は、全社で統一して印刷の見える化をして、最適化や保守運用の一元化を進めることで減らすことができる。
また、ネットワークにつながる複合機やプリンターは、サイバー攻撃に狙われるリスクが高い。一元管理することで最新ファームウエアへのアップデートを遠隔から実施することも可能になり、セキュリティリスクの削減にもつながる。
さらに、働き方の課題を可視化するツール・サービスとの組み合わせで一層の効率化を進める方法もある。これらは、パソコンログなどから収集したデータを元に、AIが業務の実態を分析し、効率化が可能な業務を抽出する。働き方の見える化と印刷の見える化を組み合わせることで、繰り返し業務になりがちな印刷の実態を把握し、当該業務における印刷の必要性を見直すことが可能だ。印刷に関連する業務実態を把握することで、業務そのものを見直してペーパーレス化を推進できるというわけだ。
印刷の「見える化」による5つのメリット
OCRなども併せて活用してさらなる業務効率化を
印刷の見える化で、出力する側の実態が把握できたら、次はこれまで紙に出力して管理していた書類や文書をデジタル化することにステップを進めたい。昨今の複合機は高機能化が進み、印刷したり、スキャンしたりという単機能を提供するものではなくなっている。
スキャンしたデータをOCR(光学的文字認識)機能を使って読み取る機能のあるデバイスも多い。名刺や領収書などのデジタル化はもちろん、請求書などの定型文書をデジタル化して社名別のフォルダーに格納するといったことも可能だ。
紙をオフィスから急に一掃することは難しい。それでも、コロナ禍を経験した私たちはデジタル化した情報の利便性にも触れてきた。紙とデジタルのいいとこ取りをしながら、自社の状況に即した効率化を進めることの必要性は誰もが感じているだろう。将来のペーパーレス化やさらなる業務効率化の実現に向けて、印刷の見える化による業務の把握を今から進めていきたい。
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