出生数の減少が毎年のニュースになり、人口の減少に歯止めがかからない日本。超高齢社会に向かって進むことで、企業も社会も立ち行かなくなるリスクが高まっている。それを明確にしているのが労働市場における「2025年問題」だ。2025年に何が起こるのだろうか――。
2025年に「団塊の世代(1947~1949年生まれ)」が75歳に
1947年から1949年という戦後の第一次ベビーブームの時期に生まれた「団塊の世代」の全員が、75歳になるのが2025年。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」によると、2025年の75歳以上の人口は2155万人に達する。1億2326万人の総人口の17.5%が後期高齢者になり、その後もその割合は上昇していく推計だ。超高齢社会では、医療や福祉を受ける人が増える一方で、社会を支える働き手が相対的に少なくなる。
バスや鉄道の路線が縮小したり運行本数が減少したりするような身近なところまで、人手不足はすでに社会に影響を及ぼしている。対策を施さなければ、企業活動はもちろん、社会インフラから行政まで大きな影響が出てしまう。
超高齢社会が顕著化し、企業では人材不足の深刻化が危惧
人手が足りなくなる影響は、交通や運輸、医療、介護など現場の仕事だけではなく、今後は着実にオフィスワーカーの仕事にも現れてくる。オフィスの業務でも、時間の多くを定型的なルーティンワークが占めている職場は少なくない。これまでは、人手に頼った業務処理の仕方で対応できた職場であっても、働き手の絶対数が減る中では同じような仕事の仕方は続けられなくなるだろう。…
物価高騰などの影響から、賃上げへの圧力も高まっている。大手企業などで過去最高レベルの賃上げがあるという話を耳にするとうらやましい限りだが、人ごとではないかもしれない。給与レベルに差が付くことで、新しい人材が自社を選んでくれなくなる将来がやってくる可能性があるからだ。若手が就職してくれなくなると、これまでも高齢化が進んできた職場の新陳代謝が進まなくなる。
その上、業務に熟練していたベテランが退職する年代に差し掛かると、業務のノウハウを引き継げる若手がいないままに働き手が足りなくなる状況に陥る。定年延長や再雇用で人手そのものを確保したとしても、長年経験してきた仕事以外の新しい業務を覚えたりICT化が進む業務に対応したりすることは難しい場合もある。
RPAやOCR等の活用などICT環境を整え、業務効率化を図る選択肢も
一般的に業務は大きく「定型業務」と「非定型業務」に分けられる。定型業務は決まったパターンの作業を手順通りに進めるもので、毎月の請求書の作成と送付のようなものが代表だ。一方、非定型業務は個別の判断が必要で決まった答えがない作業。企画立案や交渉の必要な商談などが非定型業務に当てはまる。実際、オフィスの業務は多くの定型業務が入り交じっている。手書きの申請書や伝票のデータを確認しながらシステムに入力していく作業は欠かせないし、基幹システムからデータを抜き出して作る毎月の業務リポートは経営の方針を決める大切なものだ。その一方で、こうした定型業務が多くの時間を占めていることで、人手が足りないと感じている職場もあるだろう。それならば、人手不足が深刻になってしまう前に、定型業務を上手にICT環境に肩代わりさせていく方法を考えてみてはどうだろうか。
手書き書類のデータ入力をとっても、癖字を読み取る技が必要だったりするが、現在はAIの文字認識能力が格段に高まっている。AIによる文字認識を提供するAI OCRサービスを使うと、人間に負けず劣らず難読文字でも解読してくれる。読み取った複数の書類を仕分けてフォルダーに格納し、システムに入力して申請のワークフローに流すなどはRPAが手伝ってくれる。複数のシステムの間を人間が橋渡ししていたような業務も、RPAで定型処理させることが可能だ。
定型業務をICTツールに任せられれば、人間は判断の必要な業務に力を割けるし、働き手不足に対応するための根本的な業務改革に目を向けることもできるだろう。ICTツールを「難しいもの」と考えず、今後の事業継続のためのインフラとしてうまく活用することで、2025年問題を乗り越える可能性が高まっていく。自社の課題を見極めつつ、ぜひ検討してほしい。