シニアと女性の活用で人手不足に克つ(第3回)女性編1:女性活躍推進法の現状把握と課題分析

人手不足対策 法・制度対応 人材活用

公開日:2021.12.16

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 人口の約半分を占める女性の活用を図ることは、企業にとって極めて重要な課題です。「男女雇用機会均等法」の施行以来、女性活用が進みつつあるとはいえまだ不十分。2016年に施行された「女性活躍推進法」は、女性が能力を発揮して活躍できるようにするための具体的な行動計画を作ることを企業に義務付けています。その行動計画を適切に立案するために大切なのが現状把握と課題分析です。

 「男女雇用機会均等法」施行以来、女性も男性と同様の環境・待遇の下で仕事ができるようにと、「募集や採用」「配置・昇進・降格・教育訓練など」における性差別(筋力があることとするなどの間接差別を含む)を禁止しました。

 さらに、女性を特に有利に扱うポジティブアクションを容認したり、「婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取り扱い」を禁止したり、母性健康管理の義務付けや、「深夜業に従事する女性労働者に対する措置」の努力義務を課してきました。

 これまでは、どちらかといえば嫌がる企業に法律で義務を課して、何とか女性の社会進出を国として促進する、というものでした。現実的には表面上、規定や制度が導入されていても、「男性社会」の壁に苦しむ女性が少なくありませんでした。

 しかしながら、現在では、少子高齢化で働き手が減少している中、人口の約半分を占める女性の活用を図るというのは、企業の存立を支えていくという観点でも、極めて重要な課題です。日本における若年労働力の減少は避けられず、これまでのように「男性正社員」だけで企業を維持・運営することは不可能に近くなってきています。

女性視点の必要性が増している

 そもそも家庭内における購買決定権は女性にあるケースが多く、女性の視点を踏まえたモノづくり、サービス提供が売り上げの維持・拡大には欠かせません。これから企業は、ますます女性を活用して、きめ細かな商品やサービスを企画することが求められます。

 某大学では、女性の合格点を一律差し引くなど、不合理なことを行っていたようですが、逆に言えば、それだけ女性の成績が優秀であることの裏返しともいえます。そうした優秀な女性にこそ、補助業務ではなく主たる業務をどんどん行ってもらわなければなりません。場合によっては女性がメインで、男性がコピーやデータ入力を担当するという職場があってもよいのです。

 少し古いデータですが、21世紀職業財団の「企業の女性活用と経営業績との関係に関する調査」(2003年)によると、「5年前と比較した女性管理職比率の変化」が「大幅に増えた」企業の売り上げ指数が173.7であるのに対し、「大幅に減った企業」の指数は83.5となっており、倍以上の開きがあります。従って、経営業績を上げるためには、女性が活躍できる環境づくり、具体的には、女性を上手に使って利益を上げるような企業の人事・管理制度および家庭での家事、育児の役割分担に関する実現可能な就業形態のモデル提示、さらには、男女それぞれの意識改革を推進していく必要があるといえます。

2016年に施行された女性活躍推進法

 2016年4月より、「女性活躍推進法」という法律が施行されています。「女性活躍推進法」は、正式には、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(女性活躍推進法)という長い名称です。

 内閣府男女共同参画局による「令和2年版男女共同参画白書(概要)」によれば、就業を希望しながらも、働いていない女性(就業希望者)は約230万人に上り、第一子出産を機に約5割が離職するなど、出産・育児を理由に離職する女性は依然として多くいます。さらに出産・育児後に再就職した場合、パートになる場合がほとんどで、女性雇用者における非正規雇用者の割合は6割近くにもなります。

 管理的立場にある女性の割合は国際的に見ても低く、日本では働く場面において女性の力が十分に発揮できているとはいえません。このような状況にあることを踏まえ、企業自身にとっても女性社員が能力を高めつつ、継続就業できる職場環境を整えることは、大きなメリットがあるとの理解から、制定された法律です。この法律は、働く意欲を持つ女性がその能力を発揮して職業生活において活躍することができるようにと、具体的な行動計画を作ることを企業に義務付けるものです。

 ただし、あらゆる企業にこの義務を課すのは難しいので、従業員の数が300人以下の企業については、単に努力義務とされています(2022年4月から一般事業主行動計画の策定や情報公表の義務が、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主から101人以上の事業主まで拡大されます)。また、義務を負う企業がこの行動計画の作成を怠ったり、趣旨に添わない行動計画を立てたりしても、そのことに対する罰則があるわけではありません。

女性の状況の把握と、課題の分析…

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執筆=小澤 和彦

弁護士法人 後藤東京多摩本川越法律事務所 弁護士。第二東京弁護士会の西東京市男女共同参画推進委員会委員長。業務分野は企業法務、知的財産など。主な著作として「相続戦争を勝ち抜く85のルール―相続財産の分配で、モメそうなときに読む本」(九天社)など。

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