企業にとって集客は切っても切れないものです。とくに、広告にはさまざまな種類があり、特性や方法もさまざまです。どれを使えば効果的なのかを悩む事業者の方もいるのではないでしょうか。そのようにお悩みの方に向けて今回は、マス広告やWEB広告など、あらゆる広告集客の専門家の山岡雄己さんにお話を伺いました。
広告の種類にはどのようなものがありますか?
大きく分けるとチラシや看板を使用した「SP広告」インターネットを利用した「WEB広告」新聞やテレビCMを使用した「マス広告」の3種類です。ターゲットに合わせて広告の種類を使い分けることで高い集客効果が得られます。
SP広告はセルフプロモーション、いわゆる販促活動を目的に使われる広告の種類です。チラシや看板のほかにも、電車やバスの社内に掲載されているものやフリーペーパーなどもSP広告にあたります。
WEB広告はWEB上に表示される広告全般のことです。WEBサイトや各種SNS上に表示されるもののほか、グルメサイトなどもこの「WEB広告」です。マス広告はテレビや新聞などのマスメディアに掲載される広告のことです。
今回は中小企業でも扱いやすい、SP広告とWEB広告のお話をさせていただきます。
SP広告についてお伺いします。
SP広告ではチラシを使用したり、看板を使用したりする方法が一般的です。チラシや看板はそれぞれ気をつけるポイントが違います。チラシ広告はポスティングや新聞折り込みを行うことによって配布します。
最近では新聞をとる方が少なくなりましたね。とくに、若い方をターゲットとする場合はポスティングチラシの方が効果的だと思います。現在ではさまざまなツールや企業サービスが展開されているため、自身で想定したターゲットエリアに対して的確なアプローチを行えますよ。
チラシ広告には具体的にどのようなものがありますか?
「ラクスル ポスティングサービス」は1万円~10万円でチラシ印刷からポスティングまで依頼できるサービスです。ラクスルのWEB画面から住所を入力すると、エリアに対応した費用が自動算出されるため操作も簡単です。
「タウンプラス」「タウンメール」は郵便局が提供している地域指定で配達できるサービスです。通常のポスティング業者を使用した場合には、セキュリティの厳しい高層マンションやオフィスビルに入ることはできません。
しかし、郵便局員の場合はセキュリティの厳しい場合でも入場可能です。一棟で何百世帯と入っている高層マンションを狙ったり、法人需要サービスを狙ったりするのであればとても効果的な方法です。
「jSTAT MAP」は総務省が無料公開しているツールです。国勢調査の位置情報が使用でき、地域傾向に合わせたポスティングが可能です。地域傾向を分析すればターゲットの絞り込みが安易になり、効率的な宣伝を行えます。
「iタウンページ」はNTTタウンページが提供している情報サービスです。iタウンページのWEBサイト内で自社のある住所を入力すると、近隣の法人が出てきます。企業向けのターゲットリストを作るときに便利です。人数の多いオフィスや想定ターゲットに近い企業を探す場合に活用できます。
看板広告には具体的にどのようなものがありますか?
看板広告には店先に設置する「店舗広告」と、店舗から離れた道路などに設置する「野立て広告」の2種類があります。何度も見てもらうことで記憶に残りやすく、視認性もよいため宣伝効果の高い広告です。
「店舗広告」はそのお店に入るかどうかを最終的に決める、店先にある広告です。利用者に入ってきてもらえるよう設計時によく考えて作るべきポイントです。目を引きやすいアイキャッチやデザインはもちろん、看板の大きさや道路と店に対しての配置もポイントとなります。
「野立て広告」は道路やビルの上に掲載され、多くの人に見てもらえるため認知性や宣伝性の高い広告です。インパクトのあるデザインにすることで記憶に残りやすく、ブランディングにもつながります。設置には許可やメンテナンスが必要になりますが、店舗広告よりも多くの人に訴求することができる方法です。
WEB広告についてお伺いします。…
WEB広告にはグルメサイトなどにお金を払って広告を載せてもらう方法や、自社HP・メルマガを使用しオウンドメディアで宣伝していく方法、最近ではSNSを利用した方法などがあります。インターネットが普及した現在では多くの企業にとって主力の広告媒体です。掲載されるWEB媒体によってターゲット層や気をつけるポイントが異なります。掲載費や目的を考えて掲載媒体を選ぶとよいでしょう。
WEB広告には具体的にどのようなものがありますか?
飲食店の場合ではグルメサイト広告に費用を支払い、掲載してもらう広告方法が一般的です。たとえば、ぐるなびや食べログなどが該当します。ぐるなびの場合は最低月1万円から掲載を依頼できますが、目に見えた効果を実感するには月10万円ほど必要ですね。食べログの場合はぐるなびのように具体額を公開していませんが、こちらも5~10万円をみておくとよいでしょう。
自社サイトやメルマガを利用したオウンドメディア広告の場合には、地道な努力が必要です。しかし、オウンドメディア広告は、必ずしも単体で集客効果を狙うものではありません。最近では、チラシや看板などのSP広告を見てからオウンドメディアに流入する方が増えています。
そのため、SP広告とうまく組み合わせることができればより多くの集客効果を得られます。「SNS広告」はFacebookやInstagramを利用した広告方法です。SNS利用者が興味を持っていることを分析し、GPS機能を使って利用者のエリア内にあるお店の広告を出すという方法です。掲載費用はかかりますが、ターゲット層がSNS利用者層とかぶっている場合はとても有効的な広告手段といえるでしょう。
広告の種類を選ぶにはどういったことが重要ですか?
エリア範囲でターゲットを絞ることが重要です。狭い範囲での利用者をターゲットにするのか、広い範囲での利用者をターゲットにするのかによって使用する広告の種類が変わります。狭い商圏を狙う場合は、個人経営のお店などの小さい店舗は主に狭いエリアで利用者を集める必要があります。
そのため、チラシや看板といったエリア型のSP広告を使用します。広範囲のエリアをターゲットとする場合には、不特定多数の利用者に広く認知してもらう必要があります。そのため、エリアを選ばずに見てもらいやすいWEB広告を主に使用します。
他に、広告の種類を選ぶための重要なポイントはありますか?
自分のお店が広範囲からお客さまを集めるお店なのか、地域の方に密着したリレーションを重要視するお店なのかといったポジショニングを理解することが重要です。一般的な個人店であれば、遠方からの利用者よりも近所の利用者がほとんどだと思います。そのようなお店であればエリアマーケティングに強いポスティングチラシ。WEB広告を利用するのであればオウンドメディアやSNSを選ぶと効果的ですね。個人店であってもターゲット層が特殊なお店であれば、グルメ広告サイトのWEB広告を使用するほかありません。
どのような人に向けた広告がよいでしょうか?
現在地周辺の店舗を探している人に向けた広告を考えます。出かけた際に現在地周辺のお店を探している場合、多くの人がWEB検索を行います。とくによく利用される方は、検索サイトの上位に出てきた店舗です。上位表示されるために一番簡単な方法が、検索エンジンに広告費用を払って上位表示してもらうリスティング広告です。知識を身につければ、MEO対策を行うことで広告費を支払わずに検索上位に表示させることができます。
他に、どのような人に向けた広告はありますか?
興味を持っている不特定多数の人に向けた広告を考えましょう。最近では、チラシや看板を見て興味を持った方がさらにWEB検索を行うことで情報を得ています。WEBから得た情報を踏まえ、その店に行くかどうかを判断しているのです。そのため、興味を惹くチラシ作りと、メッセージ性のあるオウンドメディアコンテンツ作りが重要です。チラシ広告とオウンドメディア広告がうまく組み合わされば、興味を持ってくれた方に対して高い集客効果を得ることができますよ。
最後に、自社の集客に広告を考えている店舗運営者にメッセージをお願いします。
広告媒体による宣伝効果は大きく変わります。ターゲットをどの層とするかや自分のお店をどのような位置づけにするかを把握して、どの媒体を主力としていくかを決めるとよいでしょう。使用する媒体に合わせて利用者の興味を惹く広告を作ることは、大きな集客につながるのです。
専門家プロフィール
山岡 雄己(広告集客専門家)
1965年,松山市生まれ。京都大学文学部卒。サントリー宣伝部を経て,2002年経営コンサルタントとして独立。専門は外食チェーン戦略。中小企業診断士。フランチャイズ研究会会長。かわさき市民公益活動助成金審査委員長。法政大学経営大学院(MBA)兼任講師。
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※この記事は2021年9月時点の情報です