SNS、そして「インフルエンサー」という言葉はすっかり認知されているものの、経営者からすれば、「SNSは無料だし、自分自身もインフルエンサーにあこがれがあるけれど、実際にどうすれば良いの?」とイメージがつきにくい手法といえます。今回は、初めてインフルエンサーマーケティングに触れる経営者に向けて、基本的なポイントをご紹介します。
インフルエンサーマーケティングとは?
広く影響を与えるインフルエンサー
SNSの普及とともに「インフルエンサー」という言葉も多くの方に認知されていますが、まずはこのインフルエンサーという言葉の意味を確認しておきましょう。インフルエンサーは、影響という意味を持つ「influence」が語源であり、広く社会に影響を与える人をさします。
従来は何十万、何百万ものフォロワーをもつインフルエンサーのような「SNSでフォロワー数が多く、より多くのユーザーに情報を発信できる可能性がある人」を意味して使われることが多かったのですが、近年では様々なプラットフォームの台頭やユーザーの多様化に合わせ、特定のジャンル・分野で人気があったり、フォロワー数がそこまで多くなくても熱量の高いファン層から支持されるということでもインフルエンサーと呼ばれています。
広告モデルは広告主起点からインフルエンサー起点へ
そうしたインフルエンサーが関わるマーケティング行動が「インフルエンサーマーケティング」です。由来は諸説ありますが、2002年に「クチコミによる宣伝効果がマスメディアでの宣伝効果を上回る」とのデータが発表されて業界でも話題となったこと、その後にブログメディアでのクチコミによる宣伝行為が増えたことなどがきっかけとなり、広く知られるようになりました。
従来からあるマスメディアでのCMのほか、新聞などの折り込みチラシ、雑誌やウェブサイトでの掲載広告、街中で見られる看板などは、広告主起点での「PUSH型広告」と呼ばれます。
これは宣伝したいお客さまが、自らの意図で、不特定多数あるいはやや広いターゲット層に向けて情報発信を行う形態で、情報を受け取る人の数は相対的に多くなります。一方で、言葉の通り「情報を一方的に押し込む」ことになるため、受け取った情報に無関係な人には逆効果になるといったデメリットも生じます。
これに対してインフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーによるSNSでの投稿などが主であり、情報の受け手自らが検索やフォローといった行動で情報を引き出すことからインフルエンサー起点での「PULL型広告」と呼ばれます。
PUSH型広告と比べると、情報を受け取る人の数は限られます。しかし、「情報自体に興味がある」「情報を発信する人に関心がある、信頼性がある」といった親和性が高いユーザーへ情報が届くことから、PUSH型広告よりも効率的に、宣伝の目的である購買や情報収集といった効果が得られやすいといったメリットがあります。
SNSの基本的な特徴を知ろう
さて、インフルエンサーマーケティングに欠かせない存在であるSNSですが、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは国内のアクティブユーザー数が多いものを取り上げます。主なSNSは下記、図の6つです。
YouTube
動画サイトではダントツの知名度と利用者数を誇り、国内のアクティブユーザー数は6500万人といわれています。
TikTok
YouTubeと同じく動画系のSNS。ショート動画のみ投稿できることが特徴で主に若い世代に支持を得ています。
Twitter
タイムラインに短文の情報が次々と表示されるSNS。ユーザー間でコメントやリツイートができるなど、交流を促す機能があります。
Facebook
幅広い年代から支持を受け、国内でSNSの存在を根づかせる役割を果たしたのがFacebookです。多くの人がビジネス/プライベートに関わらず、「SNSをやっているなら、一般的には自身のFacebookアカウントを持っている」といえる、いわゆる市民権を得たSNSといえるでしょう。
Instagram
画像をメインとして投稿する形態のSNSです。優れたデザイン性やハッシュタグ機能が人気で、国内のアクティブユーザー数はすでにFacebookを超え、3300万人といわれています。
LINE
国内最大のアクティブユーザー数を誇るSNS。インフルエンサーマーケティングの視点からいえば、オープンチャットやタイムライン、LINEビジネスをつかった宣伝はできるものの、交流自体はクローズ型(特定のユーザー同士での交流)がほとんどであるため、メインで取り組むSNSとしては少し難しいといえます。
はじめてインフルエンサーマーケティングに取り組む際のポイント…
[caption id="attachment_43981" align="aligncenter" width="600"] 「インフルエンサーに依頼しつつ、自身も発信」が重要[/caption]
これから、初めてインフルエンサーマーケティングに取り組む経営者は、まず何から始めたら良いでしょうか。できれば経営者個人や自社のアカウントでも様々なSNSで宣伝をしてみて、フォロワーの反応や効果を検証してみつつ、インフルエンサーマーケティングの両輪でマーケティングをしていく必要があります。
中長期では自社のアカウントを育てていくとメリットがあるのですが、一方でインフルエンサーの世界も競争が激しく、一朝一夕でインフルエンサーと呼ばれる規模になるのは非常に難易度が高いため、瞬発力のあるインフルエンサーマーケティングと組み合わせる必要があります。
SNSの特性にあわせた展開を
また、先述したSNSの細かな特性を把握し、「自分が達成したいゴールには、どんなSNSが適当か」を考えるべきです。たとえばYouTubeは認知度も高く、アクティブユーザー数も多いSNSですが、「とくに10~20代に訴求したい」、「どちらかというと認知をとりたい」などの場合は、TikTokで数十秒の動画をつくった方が手軽で効果的かも知れません。
加えて、FacebookやTwitterの場合、シェアされて広がっていくので、頻繁に投稿するよりも、感情を揺さぶるようなストーリーを考えて投稿した方が良いともいえます。また「美容やアパレル、フィットネスなどはInstagramと相性がいい」とよくいわれる通り、業種によっても選ぶべきSNSに違いがあります。これら見識は、専門家の多くがそれぞれ持っているものですが、あわせて自身でもSNSアカウントを運用しながら感覚をつかんでいただけたらと思います。
インフルエンサーマーケティングで大成功を収めた2つの事例
[caption id="attachment_43982" align="aligncenter" width="600"] インフルエンサーとの連携でアプリインストール数を拡大させた開発者[/caption]
一つ目の事例は、アプリのインストール数拡大を目的としたインフルエンサーマーケティングです。アプリ開発者は弊社に相談依頼があり、親和性が期待できそうな、ゲーム関係に強みを持つインフルエンサー数人に依頼し、キャンペーンを行いました。
このキャンペーンでの予算は数十万円規模でしたが、一般的なPUSH型広告よりも費用を抑えつつ、結果的には投下した費用以上の利益を確保することができました。
応募者獲得で圧倒的な結果を出した人材紹介会社
二つ目の事例は、求職者からの応募の獲得を目的としたインフルエンサーマーケティングです。とある警備会社では、TikTokを活用してのキャンペーンを展開しました。
募集する職種、一般的に応募者の獲得が難しいといわれる警備員でしたが、TikTokでエンタメ感があるユニークな動画を投稿したところ、見事に拡散させることに成功。結果、応募数は当初目標としていた10人をはるかに超え、370人の応募があったようです。
おわりに
そもそもインフルエンサーマーケティングは、SNS自体が無料であること、多数の成功例が散見できることもあって、注目を集めていることは間違いありません。ただ一方で、知見の甘さや取るべきアクションの不足により、成果を出せないことも少なくありません。
そうした中で、これら2つの事例は特異ともいえますが、インフルエンサーマーケティングは常に新たな可能性を秘めており、誰もが「やってみる価値がある」手法といえるのではないでしょうか。
専門家プロフィール
渡邊 拓
株式会社BitStar 代表取締役 社長執行役員CEO。2011年慶應義塾大学大学院 理工学研究科卒。新卒でスタートアップに入社し新規事業の立ち上げに従事。独立後、友人のYouTuberを支援したことを転機としてBitStarを創業。累計約30億円の資金調達を実施し、コンテンツ産業を担うメガベンチャーを作るべくクリエイターエージェント事業「BitStar Agent」、プロダクション「BitStar」、コンテンツスタジオ事業「BitStar Studio」を展開。デロイトトーマツ主催「日本テクノロジー Fast 50」に2年連続で選出。著書に「動画マーケティングの新常識〜最強のYouTube活用術〜」がある。
※「YouTube」はGoogle LLCの商標または登録商標です
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