ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
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公開日:2022.08.02
従業員の健康を守る知識や規則を紹介する連載の第5回は、長時間労働を行った労働者に対する医師による面接指導についてです。
長時間労働は深刻な社会問題となっていますが、時間外労働の削減に取り組んではいるものの、なかなか思うように進まないという会社は多いのではないでしょうか。厚生労働省も、時間外労働や休日労働が月45時間を超えた場合、労働時間が長くなるにつれて健康障害のリスクが高くなると発表しています。
特に、時間外・休日労働が月に100時間を超えたり、2カ月~ 6カ月間の平均が月80時間を超えたりした場合は、脳疾患・心臓疾患の発症と業務との関連性が強くなるようです。労働安全衛生法は、このような長時間労働を行った労働者に対して、医師による面接指導を行わなければならないと定めています。
●事例1 長時間にわたる労働に関する面接指導
先日、A社に労働基準監督署が調査に入り、その際、「出勤簿と賃金台帳を見せるように」と言われました。これらの書類を見せると「1カ月の時間外労働時間が80時間を超えている者が3人もいるから是正するように」という指導を受けました。そして、これと同時に、これらの社員に対して面接指導をしているかどうかを問われました。
面接指導とは、問診その他の方法により心身の状況を把握し、面接により必要な指導を行うことをいいます。事業者は、次に該当する労働者から申し出があった場合は、遅滞なく医師による面接指導を行わなければなりません。なお、長時間労働に関する面接指導の対象となる労働者は、図表1のいずれにも該当する者とされています。
■図表1 長時間にわたる労働に関する面接指導の対象となる労働者
1.休憩時間を除き、1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1カ月当たり80時間を超えること
2.疲労の蓄積が認められる者であること
長時間にわたる労働時間に関する面接指導は、図表1のいずれにも該当する労働者の申し出によって行われるものです。産業医は、該当する労働者に対して、この面接指導を申し出るように勧奨できます。つまり、産業医は、担当する会社の労働者の就業状況を把握しておかなければならず、事業者は、労働時間の算定を行ったときは速やかに、法定労働時間を1カ月当たり80時間を超えた労働者の氏名と、超えた時間に関する情報を産業医に提供しなければなりません。
・面接指導における確認事項
医師は、長時間にわたる労働に関する面接指導を行うに当たり、該当する労働者の勤務の状況、疲労の蓄積の状況、心身の状況の確認を行うものとされています。
・面接指導の結果の記録の保存
事業者は、長時間にわたる労働に関する面接指導の結果に基づき、面接指導の結果の記録を作成し、これを5年間保存しなければなりません。
・医師からの意見聴取
事業者は、長時間にわたる労働に関する面接指導の結果に基づき、該当する労働者の健康を保持するために必要な措置について、遅滞なく医師の意見を聴かなければなりません。
・事業者の講ずべき措置
事業者は、長時間労働に関する面接指導の実施に際し聴取した医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置を講じる必要があります。さらに衛生委員会もしくは安全衛生委員会または労働時間等設定改善委員会に、この医師の意見を報告、その他適切な措置を講じなければなりません。
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執筆=嘉瀬 陽介
1963年、秋田県生まれ。横浜国立大学経営学部卒業。2003年、横浜で社会保険労務士事務所を開業。2006年、特定社会保険労務士の附記を受ける。社会保険労務士の業務と並行して児童文学の執筆をしている。趣味はスポーツをすることとドラマを見ること。
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