従業員の健康の守り方(第6回)ストレスチェックを年1回、実施する

時事潮流 ヘルスケア

公開日:2022.09.02

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 従業員の健康を守る知識や規則を紹介する連載の第6回は、ストレスチェックの実施についてです。労働者の快適な職場環境を形成するためには、労働者のメンタルヘルスの維持が欠かせません。ストレスが原因で精神疾患を患ったり、自殺をしてしまったり……。そんな労働者も少なくないようです。労働安全衛生法は、社員のメンタルヘルスを保持するため、会社にストレスチェックをしなければならない旨を規定しています(図表1参照)。

■図表1 心理的な負担の程度を把握するための検査等(労働安全衛生法第66条の10)

1.事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(「医師等」という)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

2.事業者は、上記1 の規定により行う検査を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該検査を行った医師等から当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。この場合において、当該医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならない。

3.事業者は、上記2 の規定による通知を受けた労働者であって、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取り扱いをしてはならない。

4.事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、上記3 の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない。

●事例1 ストレスチェックを行わなければならない事業所
A社の大阪支店は、正社員とパートタイマーをあわせて60人ほどが働いています。一方、名古屋支店は正社員とパートタイマーをあわせ40人ほどです。先日、この大阪支店に労働基準監督署が調査に入り、ストレスチェックをするようにと指導されました。ところが、同じ時期に労働基準監督署の調査が入った名古屋支店は、そのような指導を受けていません。

 事業者は、常時使用する労働者が50人以上である場合は、ストレスチェックを行わなければなりません。ここでいう常時使用する労働者とは、期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者で、当該契約の契約期間が1年以上使用されると予定されている者および1年以上引き続き使用されている者を含みます)や、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上である者を指します。

 従って、パートタイマーやアルバイトといった呼称であっても、これに該当すればストレスチェックの対象となります。要するに、ストレスチェックの対象となる労働者は、一般健康診断を行わなければならない労働者と同じです。

 また、常時使用する労働者が50人未満の事業場については、ストレスチェックの実施は努力義務となっています。ストレスチェックを行う義務があるかどうかは事業所単位で判断され、同じ会社であってもA支店にはストレスチェックを行う義務があるが、B支店にはないということも起こりえます。

 ただし、事業場によらず、会社全体のメンタルヘルスへの取り組みとして、ストレスチェックの実施を考えてみるのもよいのではないかと思います。

・ ストレスチェックの実施時期と実施項目
 事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の事項について、ストレスチェックを行わなければなりません。

1.職場における労働者の心理的な負担の原因に関する項目
2.労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
3.職場における他の労働者による労働者への支援に関する項目

●事例2 ストレスチェックの事務を行う者
B社は常時使用する労働者が50人程度なのですが、支店や営業所があるわけではありません。もちろんストレスチェックは行っていますが、その事務を社長が担当していたところ、労働基準監督署の監督官に、社長がストレスチェックの事務を行うのはよろしくないという指導を受けました。

 ストレスチェックを受ける労働者の解雇、昇進、異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの事務に従事することはできません。

・ストレスチェックの結果の通知
 事業者は、ストレスチェックを受けた労働者に対し、この検査を行った医師などから遅滞なく、この検査の結果が通知されるようにしなければなりません。この場合、医師は、あらかじめストレスチェックを受けた労働者の同意を得ないで、検査の結果を事業者に提供することはできません。なお、労働者の同意の取得は書面、または電磁的記録によるものでなければなりません。

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執筆=嘉瀬 陽介

1963年、秋田県生まれ。横浜国立大学経営学部卒業。2003年、横浜で社会保険労務士事務所を開業。2006年、特定社会保険労務士の附記を受ける。社会保険労務士の業務と並行して児童文学の執筆をしている。趣味はスポーツをすることとドラマを見ること。

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