AI-OCRは、簡単に言うとAI(人工知能)技術を使って、伝票や帳票類、稟議書や企画書など業務上必要となる紙文書を高精度に読み取り、デジタルデータ化(ペーパーレス化)できるツールです。業務効率化が期待できるツールとして、官公庁や大企業だけでなく、中小企業や個人事業主でも使用されています。
AI-OCRは、OCRを発展させた技術です。OCRとは、Optical Character Recognitionの略で、日本語では「光学文字認識」と訳されます。OCRは手書きの文字や紙に印刷された文字、画像の中にある文字などをスキャナーやデジタルカメラで読み取ってデータ化する技術です。しかし従来のOCRは、手書き文字の認識制度が低いことや、フォーマットが異なる非定型の書類への対応に限界があるなど、業務で使用するには実用的でない点も多く存在しました。
一方、AI-OCRは、OCRにAI技術を融合させた新しい技術です。AI-OCRは活字に加えて、手書きの文字も高い精度で読み取れます。加えて、読み取り時間も1枚あたり数秒~数十秒とわずかで、レイアウトが異なる文書も自動的に文字情報のある項目や位置を抽出して読み取ることが可能です。AI-OCRを自社の業務システムと連係することで、さらなる業務効率化が図れます。
利用目的と種類
現在、さまざまな会社がAI-OCR製品を提供しています。比較検討する際には、自社の導入の目的と何に利用するのかを定めることが必要です。
AI-OCRの種類は、以下の3つに分かれます。
●汎用×定型フォーマット型
帳票のどこに何が書かれているかを人間が定義し、その後、AIが文字を読み取るというスタイルのAI-OCRです。帳票のどの部分をAI-OCRで読み取るのか、フォーマットを定義する手間が必要になりますが、一度定義をすれば、以降はその手間は不要となります。アンケートや注文書など、フォーマットが決まっている書類の読み取りに向いています。
●汎用×非定型フォーマット型
AIが帳票のフォーマットを自動で学習することで、人間が手作業で定義をする必要がないスタイルのAI-OCRです。さまざまなフォーマットの帳票に対応できるメリットを持ちますが、一方でAIが学習するための時間が必要になるため、学習が浅いAI-OCRでは読み取り精度が低くなる恐れがあります。
用途としては請求書のように、企業ごとにフォーマットが異なるものの、記載されている内容は大きくは変わらない帳票に向いています。
●業務特化×非定型フォーマット型
自社の特定業務に特化した、学習済みのAI-OCRです。自社の業務で大量の事務作業が発生した際に有効です。ただし汎用性は無く、特定の業務以外には使えません。
3タイプのうち、どのAI-OCRを導入するかについて、自社が扱う帳票など書類の種別とフォーマットを確認しましょう。
機能面
AI-OCRの機能で最も基本的なものは、文字の読み取り機能です。読み取り精度の高さは、サービス選びの際の重要なポイントとなります。読み取り精度が低いと手作業によるデータ修正に時間がかかり、かえって非効率になる恐れがあります。
業務効率化という点では、AI-OCRは「RPA(Robotic Process Automation)」と連係させることで、作業効率のさらなる向上が期待できます。RPAとは、人間がコンピューター上で行う定型業務を自動化する技術のことです。
AI-OCRとRPAが連係することで、手書きの文字情報を読み取り、自社で定めているフォーマットに添って入力し、デジタルデータとして保存する一連の作業などが自動で行えるようになります。RPA以外にも、在庫管理システムなど、社内の業務システムと連係できるものもあります。
情報セキュリティ関連も、注目すべき機能です。AI-OCRではさまざまな帳票類を扱いますが、その中で住所・氏名・電話番号といった個人情報や企業の機密情報を読み取ることもあります。読み込んだデータの暗号化の強度はどの程度か、サービス提供事業者が情報セキュリティ対策の認証である「Pマーク」や「ISMS」などを取得しているのか、事前の確認が重要です。
上記の他にも、横書きはもちろん縦書きにも対応しているか、情報を自動で該当する勘定科目に分類する自動仕訳機能があるかどうかも判断ポイントといえるしょう。
対応環境
AI-OCRの導入にあたっては、対応環境の確認も必須です。具体的には、Windowsだけに対応しているのか、Macにも対応しているのか、1台のパソコンでしか使えないのか、複数台で分散処理が可能なのか、などです。
さらに、サポートの充実度も見逃せないポイントです。トラブルが起こった際、対応がメールのみのケースもあれば、24時間出張対応するケースもあります。
価格
AI-OCRの価格をチェックするときのポイントとして、主に3つが考えられます。
1つ目は、パッケージなどを買い切るオンプレミス型にするのか、インターネットを経由してサービスを利用するクラウド型にするのかです。オンプレミス型は一括支払い、クラウド型は月額支払いのため利用期間やメンテナンス費などを考慮する必要があります。クラウド型の中には、初期費用が0円で使用できるものもあります。
2つ目は、ランニングコストです。AI-OCRは読み取りを指定した項目数や文字数で費用が発生するものや、読み取り枚数ごとに課金されるものがあります。項目数が多い大量の書類を読み取る場合は、1枚ごとに課金されるサービスを選んだほうがコストを抑えられます。
3つ目は、最低利用期間の有無です。製品の中には、1カ月、3カ月、1年など最低利用期間を設けているものもあり、途中解約すると違約金が発生する場合があります。スポットで利用するのか継続的に利用するのか、用途に合わせて選択しましょう。
AI-OCRの高精度な読み取り機能とRPA連係で、業務を効率化
NTT西日本の「おまかせAI OCR」は、手書き文字や活字をAI-OCRで素早く読み取り、データ入力作業を簡素化できるソリューションです。AIによって高精度な文字認識を可能にし、トライアルでのデータ入力精度は96.71%(※)。従来のOCRでは困難だった、くせ字や訂正も判別することができます。
[caption id="attachment_46585" align="aligncenter" width="510"] 手書き文字読み取り例(おまかせAI OCRのWebサイト内「手書き文字読み取り例」より引用)
※おまかせAI OCRを用いたNTT西日本による検証結果です[/caption]
直感的で使いやすいブラウザーベースの画面を採用しており、マウスの操作だけで読み取りの設定が可能です。この他、ビジネス複合機(スキャナー)やRPAとの連係機能、操作方法の案内やトレーニング、状況に応じた活用方法の提案といったサポート体制も用意されています。
※NTTグループが2018年8月~9月に行った、おまかせAI OCRと同じ文字認識AIを用いたAI-OCRサービスのトライアル(参加企業3社)における、申込書・現金通帳(手書き文字を含む20,275文字)の読取精度(正解数/全文字数)の平均です
まとめ
伝票や帳票をはじめ、さまざまな紙文書を高精度で読み取ってデジタルデータ化できるAI-OCRは、仕事の業務効率化やペーパーレス化への貢献が期待できる存在です。導入の際には、AI-OCRのメリットを最大限に享受するために、利用目的、機能、対応環境、価格を検討して、自社に合ったものを選びましょう。
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