ビジネスを円滑に進める上で、通信が速く安定したネットワークインフラは重要です。本記事では、ビジネスパーソンなら知っておきたいネットワークの基本的な仕組みや種類などを紹介していきます。
そもそもネットワークとは?
『デジタル大辞泉』(小学館刊)によると、ネットワークとは「網状組織の意」であり、「複数のコンピューターを結び、データなどを共有し、情報処理の効率化を図るシステム。具体的にはインターネットやLAN (ラン) などを指す」と書かれています。
ネットワークがなければ、Web上のあらゆるサービスは使えません。パソコンやスマートフォンでのメール送受信や、Webサイトの閲覧をはじめ、InstagramやTwitterなどのSNSを利用する場合にもネットワークを利用しています。業務においてデジタルでの通信が当たり前となった昨今では、ネットワークがなければビジネスは成立しないといっても過言ではないでしょう。
ネットワークの仕組み
ネットワークは、どのような仕組みになっているのでしょうか?
現在、ネットワークには基本的にTCP/IPという通信プロトコル(通信をする際の手順や規格)が使われています。かつてはメーカー独自の通信プロトコルが使われていたため同じメーカー同士の機器としかネットワーク接続することができませんでしたが、世界共通の通信プロトコルであるTCP/ IPが普及したことで、世界中のネットワークに接続できるようになりました。
ネットワーク接続に必要となるIPアドレスの「IP」は、インターネットプロトコル(Internet Protocol)の略語です。IPアドレスは、インターネット上で機器を認識するための住所のような役割を果たしています。IPアドレスには大きく「グローバルIPアドレス」と「プライベートIPアドレス」の2種類があり、どちらもネットワーク接続には欠かせない要素です。
ネットワークについて理解を深めるのであれば、異なる機器間でデータ通信を行うための世界標準規格であるOSI(Open Systems Interconnection)参照モデルも覚えておくべきです。通信プロトコルには、通信を行う際に必要となるさまざまな項目があります。OSI参照モデルはプロトコルを機能別に7つの階層に分け、それぞれ定義しています。
第7層 アプリケーション層
ファイルのやりとりや、メールの送信など、ユーザーの操作に関連したプロトコル
第6層 プレゼンテーション層
ネットワークに流れるデータの形式に関連したプロトコル
第5層 セッション層
通信状態を管理するプロトコル
第4層 トランスポート層
通信状態を制御するプロトコル
第3層 ネットワーク層
通信経路を制御するプロトコル
第2層 データリンク層
通信経路の確保やエラー検出を行うプロトコル
第1層 物理層
物理的な接続を制御するプロトコル
TCP/IPは「アプリケーション層」「トランスポート層」「インターネット層」「ネットワークインターフェース層」の4層で成り立っており、OSI参照モデルの定義では、アプリケーション層は5~7層、トランスポート層は4層、インターネット層は3層、ネットワークインターフェース層は1~2層となっています。
ネットワークの基本構成…
ネットワークの基本構成は、パソコンやスマートフォンなどの「端末」、LANケーブルや無線LANなどの「回線」、ルーターやスイッチングハブなど「ネットワーク機器」から成り立ちます。これらの3種類をオフィスや拠点の構成に合わせて組み合わせることで、ネットワークが成立します。
ネットワークの接続形態も複数あります。まず挙げられるのは、一回線にすべての端末を接続するバス型ネットワークです。ネットワーク機器を使わないシンプルな形態ですが、回線が故障するとすべての端末がネットワークに接続できなくなる問題があります。
リング型ネットワークは、名前の通り端末や回線が円状になっている形態です。回線や端末のどれかひとつに故障が発生すると、正常な端末もネットワークに接続できなくなるという問題があります。
スター型ネットワークは、ネットワーク内にネットワーク機器を用意し、複数の端末をつなげた形式です。バス型ネットワークやリング型ネットワークと異なり、回線あるいは端末が故障しても、ほかの端末は問題なく接続できるのが特徴です。
ネットワークの種類
ネットワークは、大きく「LAN」「WAN」「イントラネット」「インターネット」の4種類に分けることができます。それぞれについて説明しましょう。
LAN(Local Area Network)
LANは、オフィスやフロア、ビルなどの一定範囲内で構成されるネットワークを示します。LANケーブルを接続するネットワークは有線LAN、LANケーブルの代わりに無線を使って接続するネットワークは無線LANと呼ばれています。
WAN(Wide Area Network)
WANは、オフィスの本店や支店など、遠隔地間を結ぶネットワークを示します。LANケーブルや無線では接続が難しいため、回線事業者が提供する通信回線を使うケースが一般的です。
イントラネット
イントラネットは「intra~」(~内)、「net」(ネットワーク)という言葉が示すように、企業・団体だけで構成されたネットワークを示します。
インターネット
インターネットは「inter~」(~間)、「net」(ネットワーク)という言葉が示すように、世界中の端末が接続するネットワークを示します。
ネットワーク設計のポイント
テレワークやクラウドの普及によって、企業に最適なネットワークの在り方も変化しています。ここでは、自社に最適なネットワークを設計していくための基本的なポイントを挙げます。
現状把握
まずは現状と目的を把握し、どのようなネットワーク構成が最適なのか考えましょう。スマートフォンからネットワークにアクセスしたい場合は、無線LANに対応したルーターが必要になりますし、複数台の機器をネットワークに追加接続するのであれば、同時接続した際にも通信速度を維持できる構成が必要です。
ネットワーク設計
ネットワークの現状と目的を把握したら設計に移ります。どのような機器が必要かといった基本設計に加え、パソコンにどのような設定をするべきか、セキュリティ設定はどうするかといった詳細設計まで行います。関係者間の認識ずれが発生しないよう、設計の内容はドキュメント化しておきましょう。並行して構築時のチェックシートや運用のための手順書なども用意しておきます。
構築~運用
設計書の内容を基にネットワークを構築します。構築後はテストを行い、設計書の通りに動作するか確かめます。テスト結果もドキュメント化しておけば、故障やトラブルが発生した際に資料として役立ちます。
ネットワークエラーの原因
ネットワークに接続できなくなるトラブルは、さまざまな要因が考えられます。ここでは、ありがちな原因を挙げ、対応策を紹介します。
ルーターの故障
経年劣化による故障、温度上昇による熱暴走などが考えられます。故障であれば修理あるいは買い替えが必要となりますが、熱暴走が原因であれば、電源を落として時間を置いた後に再起動すると正常に動作する可能性があります。
ネットワークキーの入力ミス
無線LANの場合、接続時にネットワークキーを求められることがあります。ネットワークキーの入力が誤っていれば、当然ながらネットワークに接続できません。数字の0(ゼロ)やアルファベットのO(オー)、数字の1(イチ)とアルファベットのI(エル)など、打ち間違えがないかよく確認しましょう。
同時接続台数の超過
無線LANの場合、ネットワークに同時接続できる端末の数には限りがあります。複数の端末でネットワークに接続している場合は、接続エラーとなったり、極端に通信速度が遅くなったりするケースがあります。その場合は使用している無線ルーターの同時接続台数を確認し、推奨接続台数を超える場合は、より多くの同時接続が可能な無線ルーターへの買い替えも検討しましょう。
まとめ
業務に必要不可欠であるネットワークへの理解を深めることは、今日のビジネスパーソンにとって決して無駄にはなりません。さまざまなメディアを通してネットワーク関連の情報に触れておくとよいでしょう。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです