連載の第2回と第3回では、緊急企画としてインボイス制度への対応を解説しましたが、今回は、第1回で概説した個人事業主と会社(法人)に掛かってくる税金のうち、個人事業主が納めなければならない税金について分かりやすく、また、それらの手続きについても説明します。
まず、個人事業主が納税を義務付けられている税金には、所得税および復興特別所得税、消費税、住民税、個人事業税があります。
はじめに所得税ですが、毎年1月1日から12月31日までの間に得た収入からその収入に掛かった経費を差し引いた「所得」に対して課税され、国に納める税金です。実際には、この「所得」からさらに「所得控除」を差し引いた「課税所得」に対して所得税の額が計算されます。「所得控除」には、該当期間年に支払った国民健康保険料や国民年金、生命保険料や地震保険料、医療費、扶養している配偶者や16歳以上の子がいる場合の配偶者・扶養控除などがあります。
所得税は累進課税制度を採用しており、所得が増えるほど税率が高くなります。2022年8月時点の税率は、最低5%から最高は45%となっています。復興特別所得税は東日本大震災の復興対策実施の財源確保のために、2013年から2037年の間、所得税額の2.1%分の納付を義務付けられている税金です。
消費税は、事業の内容にもよりますが、商品などを売り上げた際やサービスなどを提供した際の代金に10%の消費税を加えて受け取り、この受け取った消費税から商品の仕入れやもろもろの経費で支払った消費税を差し引いた額を納税するという税金です。なお、食料品など一部には税率8%の対象品もあります。注意点として、消費税の納税には事業者免税点という制度が設けられており、その年の前々年の課税売上高が1000万円以下であれば、その年の消費税の納税は免除されます。つまり、前々年の課税売上高が1000万円超の場合にはじめて、その超えた年の2年後から納税することになります。
申告期限は3月15日、新型コロナによる延長も…
住民税は、毎年1月1日時点で住所を置いている都道府県と市区町村に納める税金です。住民税には「均等割」と「所得割」があります。「均等割」は、所得に関係なく全員に課税される税金で、住んでいる自治体によって違いますが、おおむね年間5000円から6000円です。「所得割」は、所得税の「所得」金額から、「所得控除」を差し引いた「課税所得」に対して住民税の額が計算されます。税率は、所得税の累進税率と違い一律10%となっています。
個人事業税は、都道府県ごとに決められた業種に該当する事業を行っている場合に課税される税金で、事業や地域によって税率が異なりますが大半は3%~5%です。所得税の際の「所得」から年間で一律290万円の「事業主控除」を差し引いて税率をかけた金額を納税することとなりますから、「所得」が290万円以下であれば個人事業税を納付する必要はありません。
最後に、これらの納付手続きについて説明します。所得税の確定申告書は、翌年2月16日から3月15日の間に原則として住所を管轄する税務署に提出しなければなりません。申告書は所得税の申告と納税をするためのものですが、住民税や個人事業税も、この確定申告書の該当箇所に必要事項を記載すれば税の申告は不要となります。また、消費税も、事業者免税点に該当する方を除き、翌年の3月31日までに確定申告書の提出と納税をしなければなりません。
これらの申告書の提出と納税には期限があります。この期限を過ぎてしまうと、納める税金の他に罰金や遅延利息を支払わなければなりませんので、期限には遅れないよう注意しましょう。ただ、2020年以降は新型コロナウイルスの感染拡大により、申告・納付期限の延長が行われました。今後の申告・納税について、そうした特例が設けられているか否かについては国税庁のWEBサイトなどで確認してください。
執筆=笹崎治孝
税理士・一般社団法人租税調査研究会 主任研究員
編集協力=宮口貴志
一般社団法人租税調査研究会:事務局長
一般社団法人租税調査研究会(ホームページ https://zeimusoudan.biz/)
専門性の高い税務知識と経験を兼ね備えた国税出身の税理士が研究員・主任研究員となり、会員の会計事務所向けに税務判断および適切納税を実現するアドバイス、サポートを手掛ける。決して反国税という立ち位置ではなく、適正納税を実現していくために活動を展開。