2024年がスタートし、間もなく所得税等の確定申告の時期を迎えます。個人事業主をはじめ不動産の貸し付けなどを行っている方、副業を行っている方などは、税金の清算をするために確定申告をしなければなりません。
年末調整で税金を清算しているサラリーマンでも、医療費控除や住宅借入金等特別控除など、納め過ぎていた税金を戻すために確定申告をする方もいます。もちろん、個人事業主など申告して納税する方もこの減税制度の対象となります。今回は、このような減税の1つである「住宅借入金等特別控除」について解説します。
「住宅借入金等特別控除」は、一般に「住宅ローン控除」と呼ばれています。「住宅ローン控除」は、個人の住宅購入を促すために国が設けた優遇税制で、自分で住む家を購入したり、リフォームしたりするために住宅ローンを借りた人が利用できる制度です。
控除は、確定申告や年末調整により最終的に計算された所得税の額から住宅ローン控除で計算した金額を直接差し引くもので、所得税から控除しきれない金額がある場合、住民税から控除することもできます。
「住宅ローン控除」は、毎年12月末の住宅ローンの残高と購入などした住宅取得の対価の額のいずれか少ない金額を基に計算し、所得税から一定額が差し引かれますが、「控除期間」が設けられていますので、住宅ローンを完済するまで受けられるものではありません。また、控除要件にはその人の合計所得金額に上限が設けられています。
2021年までの控除額は、住宅ローン残高(原則最大4000万円までが対象)の1%の金額を、10年間にわたり所得税から直接差し引くことができました。ですから、一般住宅の場合は1年分で最大40万円、10年間で400万円の所得税が減額されました。この制度の適用は、2021年12月31日で終了する予定でした。
しかし、2022年度の税制改正で適用期限が4年間延長され(2025年12月31日まで)、控除の適用要件などの内容が一部変更されました。ここからは、2022年度税制改正による主な変更4点について解説していきます。
まずは借入限度額の変更です。改正前の住宅ローン控除の対象となる借入限度額は、「新築住宅」と「既存(中古)住宅」に区分され、「新築住宅」の種類を「認定住宅」と「一般住宅」に区分して、それぞれの借入限度額も区分されていました。
このうち「認定住宅」の借入限度額は5000万円でした。改正後は、「新築住宅」の住宅の種類を「認定住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」「その他の住宅」の4段階に分けて、より性能の高い住宅を購入するほど控除額を多くしました。
また、適用期限を4年間延長しましたが、入居した年によって借入限度額を区分しました。2022年~2023年末までに入居した場合の「認定住宅」の借入限度額は5000万円ですが、2024年~2025年末までに入居した場合の「認定住宅」の借入限度額は4500万円と500万円減額されます。
もっとも性能が高くない「その他の住宅」においては、2023年末までに入居した場合は借入限度額3000万円ですが、2024年~2025年末までに入居した場合は2000万円と1000万円減額されます。さらに、「その他の住宅」に入居する場合、2023年までに新築の建築確認を受けていないと「住宅ローン控除」を受けられなくなりました。
2024年以降に新築住宅を購入する場合、一定の省エネ性能基準を満たした家屋しか住宅ローン控除の適用を受けられなくなりますので、住宅の購入を検討されている方は注意が必要です。
2点目は控除率の変更です。改正前は住宅ローンの年末残高の1%が控除できましたが、0.7%に引き下げられます。つまり住宅取得者にとってはマイナスといえます。
一方、3点目の控除年数の変更については、住宅取得者にプラスとなる改正です。「新築住宅」の購入に係る控除年数が13年に変更されました。ただ、中古住宅や住宅の増改築は改正前と同じく10年のままとなっていますから注意してください。
最後は所得要件の変更です。住宅ローン控除の適用となる方の所得要件は、改正前の合計所得3000万円以下から2000万円以下に引き下げられました。こちらも住宅取得者にとってはマイナスとなる改正で、合計所得が2000万円を超える場合には住宅ローン控除を受けられなくなりました。
主な改正内容は以上の4点です。下表「住宅を新築等した場合の借入限度額、控除期間等」を参考としてください。
本年は、住宅ローン控除制度の改正後3年目です。借入限度額も減額され、「その他の住宅」については控除の対象となりません。住まいの購入を検討されている方は、前年とは借入限度額、控除対象が変わりますから、購入前に制度の内容を十分理解し、物件種別、借入額等を検討しましょう。
○住宅を新築等した場合の借入限度額、控除期間等
[caption id="attachment_51417" align="aligncenter" width="600"] *国税庁ホームページより[/caption]
執筆=笹崎浩孝
税理士・一般社団法人租税調査研究会主任研究員
国税局課税一部資料調査課主査、国税局個人課税課課長補佐、国税局査察部統括査察官、国税局調査部統括国税調査官をはじめ複数の税務署長を経て2021年7月退職。同年8月税理士登録。
編集協力=宮口貴志
一般社団法人租税調査研究会専務理事・事務局長
株式会社ZEIKENメディアプラス代表取締役。元税金の専門紙及び税理士業界紙の編集長、税理士・公認会計士などの人材紹介会社を経て、TAXジャーナリスト、会計事務所業界ウオッチャーとしても活動。
一般社団法人租税調査研究会(https://zeimusoudan.biz/)
専門性の高い税務知識と経験をかねそなえた国税出身の税理士が研究員・主任研究員となり、会員の会計事務所向けに税務判断及び適切納税を実現するアドバイス、サポートを手がける。決して反国税という立ち位置ではなく、適正納税を実現していくために活動を展開。