2023年12月22日に「令和6年度税制改正の大綱」が閣議決定され、令和6年度税制改正において、納税者および配偶者を含めた扶養親族1人につき、2024年分の所得税3万円、2024年度分の個人住民税1万円の計4万円を定額減税することとなりました。住民税非課税世帯などの低所得者世帯や減税の恩恵を十分受けられない方には、給付金(調整給付)による支援も行われます。
始めに、この定額減税の対象は2024年分の所得税の納税者である居住者で、合計所得金額が1805万円以下である方(給与収入のみの場合は、原則、給与収入が2000万円以下)になります。
給与所得者の場合、2024年6月の給与支給時の源泉徴収額から所得税の減税が開始されますが、6月分で3万円を引ききれない場合は7月以降の給与支給時の源泉徴収額から順次減税分を差し引きます。
住民税は通常、前年分の所得金額で計算され、6月から翌年5月分の給与から差し引きますが、本年は6月分からは差し引かず、年間税額から減税分(1万円)を差し引いた金額を7月から翌年5月までの11カ月間で均等に差し引くこととなります。会社を経営しているオーナー社長など会社から役員報酬の支払いを受けている方なども、6月支給分から減税を受けることとなります。
公的年金受給者の場合、所得税は6月の年金支給時に減税額を差し引き、引ききれない分は次の支給月である8月以降順次差し引きます。住民税は10月分から減税分を差し引き、引ききれない分は12月以降順次差し引きます。
一方で、個人事業主など事業所得者や不動産所得者の方の場合、所得税の減税分は翌年の2025年の確定申告時(2月16日~3月15日)において計算された税額から差し引きます。また、住民税はその翌年6月からの住民税納付分から減税されます。
「住民税非課税世帯」には7万円の追加支援
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次に、住民税非課税世帯など低所得者世帯や減税の恩恵を十分受けられない方への支援について説明します。まず、「住民税非課税世帯」には、2023年夏以降3万円の給付を開始してきましたが、1世帯当たり7万円の追加となり合計10万円を支援することとなりました。
また、「住民税均等割のみの世帯」にも、今後「住民税非課税世帯」と同水準の10万円が給付されます。その上で、これらの低所得者世帯のうち「子育て世帯」に対しては、18歳以下の子ども1人当たり5万円が加算されます(こども加算)。このように、低所得者世帯へも支援措置が図られることとなりました。
それでは、「住民税非課税世帯」や「住民税均等割のみの世帯」に該当せず、定額減税の対象となるものの「所得税と住民税の年間の納税額が4万円に満たない」「定額減税の恩恵を十分に受けられないと見込まれる所得水準」の方はどうなるのでしょうか。
今回の改正では、このような方々に対して納税額が4万円に満たない分を給付金(調整給付)として支援することとされました。具体的には、市区町村などにおいて「2024年に入手可能な課税情報を基にして減税しきれないと見込まれる額」を1万円単位で給付するというものになります。
例えば、所得税、住民税が合計2万6000円定額減税された方の場合、4万円との差額である1万4000円について1万円単位で給付するとしていますので、1万4000円を1万単位で切り上げた2万円が給付金額となります。この定額減税しきれないと見込まれる所得水準の方への給付を「調整給付」と称して給付するとしています。
以上のように、過去2年間での所得税・個人住民税の税収増と見合う規模、すなわち3兆円半ばの規模で定額減税が実施されます。オーナー社長や、個人事業主で年末調整を行う従業員を雇用している場合は、給与所得者の減税方法で説明したように、本年は源泉所得税の手続きに加えて6月から従業員の減税計算なども行わなければなりませんので、制度の内容や手続き方法などを十分理解しておく必要があります。
執筆=笹崎浩孝
税理士・一般社団法人租税調査研究会主任研究員
国税局課税一部資料調査課主査、国税局個人課税課課長補佐、国税局査察部統括査察官、国税局調査部統括国税調査官をはじめ複数の税務署長を経て、2021年7月退職。同年8月税理士登録。
編集協力=宮口貴志
一般社団法人租税調査研究会専務理事・事務局長。
株式会社ZEIKENメディアプラス代表取締役。元税金の専門紙および税理士業界紙の編集長、税理士・公認会計士などの人材紹介会社を経て、TAXジャーナリスト、会計事務所業界ウオッチャーとしても活動。
一般社団法人租税調査研究会(ホームページ https://zeimusoudan.biz/)
専門性の高い税務知識と経験をかねそなえた国税出身の税理士が研究員・主任研究員となり、会員の会計事務所向けに税務判断および適切納税を実現するアドバイス、サポートを手がける。決して反国税という立ち位置ではなく、適正納税を実現していくために活動を展開。