新型コロナウイルス感染症の流行が続く中、国や自治体は事業者を支援するさまざまな制度を設けています。企業だけでなく、個人事業主やフリーランスとして仕事をしている人も、こうした給付金や助成金が利用できるケースもあります。本記事では、個人事業主やフリーランスが受け取れる給付金・助成金を紹介します。
給付金、補助金、助成金はすべて、国や地方公共団体から支出、交付される資金です。これらはすべて原則として返還する必要がないという共通の特徴があります。それぞれに細かい違いがあり、例えば給付金は、国や地方公共団体などの公的機関から支払われるもので、自然災害の被害を受けたり、病気で働けなくなったりするときに申請することにより、給付を受けられます。助成金も給付金とほぼ同じ制度ですが、厚生労働省が関わる施策で使われることが多い傾向にあります。
補助金は、特定の用途や事業で必要になった資金の補助が受けられるというものです。申請には条件が設けられ、厳格に審査が行われます。さらに、補助金を受給した場合は、申請通りの用途に使ったかどうかの報告義務もあり、給付金・助成金と比べると、受給のハードルは高めとなります。
例えば厚生労働省では「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金」 という制度を実施しています。この制度では業務委託契約などに基づき仕事をしている個人事業主が対象で、保護者として子どもの世話が必要になり予定していた仕事ができなくなった場合、仕事ができなかった日について1日あたり4177円が給付されるものです。
経済産業省でも似たような制度として、新型コロナウイルス感染拡大で甚大な影響を受けた事業者に対し、事業の継続や立て直しを支援する仕組みとして「持続化給付金制度」 の募集を行いました。この制度の申請受付は、2021年2月で終了しています。
ここからは、個人事業主が受けられる給付金、補助金、助成金の中から、本記事執筆時点で募集を行っているものを紹介します。
※本記事公開後に募集が終了している可能性があります。あらかじめご了承ください
人材開発支援助成金
厚生労働省は「人材開発支援助成金」という制度を実施しています。これは、人材育成やスキルアップを支援した事業者を対象とするもので、訓練の目的や内容によって9通りのコースが用意されています。
例えば「特定訓練コース」は、正社員に対してOJTなど効果が高い訓練を10時間以上実施した場合、訓練にかかった経費の一部が助成されます。訓練内容に関しても、これまでは原則として対面での訓練が必要要件となっていましたが、2022年4月1日からはeラーニングや通信教育なども対象になり、さらに申請しやすくなりました。
この助成金制度を活用することで、事業者は人材育成にコストを投入しつつ、コスト負担の抑制が期待できます。個人事業主の場合も、雇用した従業員が訓練を受けることで最大で120万円の助成金が受け取れます。
厚生労働省「人材開発支援助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金とは、ハローワークなどの紹介により、高年齢者や障がい者、母子家庭の母親など就職困難者を雇い入れる事業主に対し、助成金を支給する制度です。
事業主は企業のほか、雇用保険を適用している個人事業主も対象です。対象となる労働者は、短時間労働者で3通り、フルタイム労働者で4通りのパターンに分けられており、高年齢者(60歳以上65歳未満)や母子家庭の母親をフルタイムで雇用した場合、半年ごとに45万円が支給されます(助成期間は1年間)。
厚生労働省 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html
IT導入補助金
IT導入補助金は、事業者が自社の課題やニーズに合ったITツールの導入を支援する補助金です。
ITツールには、頻繁に発生する作業を定型業務として自動化したり、複数業務や工程を非対面化したりする業務支援ツールなど、生産性向上に役立つものが豊富にあります。導入するためにはそれなりのコストがかかりますが、このIT導入補助金はそのための費用をサポートする補助金となります。
本制度には利用する条件によって4通りの枠があります。最も一般的な「通常枠」では、購入費の1/2、最大450万円が補助されます。その他、インボイス制度の施行や電子帳簿保存法改正などを踏まえて企業間取引におけるデジタル化推進の支援を受けられる「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」、サイバー攻撃に備えた情報セキュリティサービスを利用した場合に利用料の補助が受けられる「セキュリティ対策推進枠」、複数の事業者が連携してDX推進を行う場合に使える「デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)」があります。
サービスデザイン推進協議会「IT導入補助金2022」
https://www.it-hojo.jp/
事業再構築補助金
新型コロナウイルス感染症の長期的な影響を大きく受けて売り上げが減った中小企業や小規模事業者を対象にした「事業再構築補助金」制度もあります。これは、コロナ後の時代を見据えた新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編などの事業再構築へのチャレンジを支援する制度です。
募集枠は通常枠に加え、大規模賃金引上枠、回復・再生応援枠、最低賃金枠、グリーン成長枠、緊急対策枠の6通りが用意されており、おおむね従業員数によって補助金額が定められています。
通常枠の要件では、売り上げがコロナ前よりも減っており、かつ従業員数が20人以下の個人事業主であれば、補助率は売上高全体の2/3で、補助額は100万円から2,000万円となっています。売り上げが減っているかどうかの目安としては、「2020年4月以降の連続する6カ月間のうち、任意の3カ月間の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3カ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること」が条件になります。
中小企業庁「事業再構築補助金」
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、職業経験、技能、知識などの面で安定した就職が困難な求職者に対し、事業者がハローワークや職業紹介事業者などを介して原則3カ月間、トライアルとして雇用した場合に、月額最大4万円が助成される制度です。
トライアル雇用の間、企業は求職者の適性や、業務遂行が可能かどうかを見極めることができるため、ミスマッチを避けた上で期間の定めのない雇用へ移行できるメリットがあります。この制度の対象となる労働者については、紹介日の前日から過去2年以内に2回以上離職や転職を繰り返していること、紹介日の前日時点で離職している期間が1年を超えていることなど、いくつかの要件が定められています。長引くコロナ禍の影響に配慮し、当分の間は未経験職種へのチャレンジを希望する離職者もトライアル雇用の対象に加わっています。
厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou.html
ものづくり補助金
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金制度)」は中小企業庁が実施する制度で、ものづくりに携わる事業者が、サービス開発や試作品開発、生産プロセス改善のために設備投資などを行った場合に、費用の一部がキャッシュバックされるというものです。設備投資は単価50万円以上であることが必須ですが、個人事業主やフリーランスも条件に合致すれば申請できます。
ものづくり補助金は、すでに支払った金額について後払いで補助が受けられる制度であり、最低額である100万円の補助を受けるには、すでに150万円以上を支払い終えたという投資実績が必要になります。
中小企業庁「ものづくり補助金総合サイト」
https://portal.monodukuri-hojo.jp/
小規模事業者持続化補助金
「小規模事業者持続化補助金」は、小規模事業者が経営維持のため、販路開拓・業務効率化の施策を実施する際、その経費の補助が受けられる仕組みです。
補助金の対象は、小規模事業者支援法で定められた従業員数の事業者です。具体的には、宿泊業や娯楽業以外の商業・サービス業で5人以下、宿泊業や娯楽業、製造業などでは20人以下で、個人事業主も申請が可能です。申請書のほか、事業計画書、直近の確定申告の写しなどが必要となります。
小規模事業者持続化補助金
https://r3.jizokukahojokin.info/
都道府県・市町村による支援金
各都道府県や市町村などの自治体が、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う緊急事態宣言発令などの影響で売り上げが減少した事業者に対して、事業継続のための支援金制度を設置している場合があります。中小企業向けポータルサイト「J-Net21」に詳しい支援金情報が掲載されています。
J-Net21
https://j-net21.smrj.go.jp/
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)
新型コロナウイルス感染症に関連した助成金としては「雇用調整助成金」もあります。新型コロナウイルス感染症のあおりを受けて事業縮小せざるを得なくなった事業者に対し、従業員の雇用維持を目的として支給される助成金です。
この制度では、労使間の協定に基づき雇用調整を実施した場合に発生した休業手当などについて助成が受けられます。対象となる雇用調整には、休業のほか、出向なども含まれます。雇用保険が適用される事業主で、新型コロナウイルス感染症の影響を受けていれば、個人事業主も申請可能です。
厚生労働省「雇用調整助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
個人事業主が給付金などを申請する際の注意点
個人事業主やフリーランスの立場で申請可能な給付金や補助金、助成金はさまざまなものがありますが、申請前にはいくつかチェックしておくべき事項が存在します。
受給条件を満たしているか
給付金、補助金、助成金には、受給のための条件が設定されています。条件を満たしていないにもかかわらず申請しても、受給はできません。虚偽の内容で申請した場合、不正受給としてペナルティーが課される場合もあります。
申請期間、募集期間はクリアしているか
給付金、補助金、助成金の多くは、申請・応募期間が設定されています。応募要件をクリアしていても、期間外のために申請・応募できないケースも十分にありえます。特に郵送で申請を行う場合は、期限内に配達されるよう、余裕を持って早めに手続きを行うことが大切です。
期間内でも募集が終了することもある
申請・応募期間だけでなく、給付の上限額が設定されているものも存在します。申し込みの多い人気の給付金、補助金、助成金の場合、たとえ申請期間内であっても、募集が早期終了してしまうこともあります。
まとめ
個人事業主やフリーランスであっても、受け取り可能な給付金や補助金、助成金は数多く存在します。受給条件を確認し、クリアしているのであれば、募集が終了しないうちに、早めに資料などを準備し、申請を進めましょう。
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