「バックオフィス」とは、経理や人事、法務など企業経営を支える業務のことです。同業務は紙による文書管理や押印処理などを行うことが多いため、IT化が進みにくい部門ではありました。しかし、ITの進化によって業務効率化はもちろん、テレワークにも対応できる状況になりつつあります。本記事では、バックオフィスの概要と業務効率化のメリット、業務効率化に役立つツールについて解説します。
目次
・バックオフィスとは会社の運営を支える部署や業務のこと
・主なバックオフィスの部門
・バックオフィスの業務では紙文書を用いることが多い
・バックオフィスを効率化する3つのメリット
・バックオフィスを効率化するためのツール
・バックオフィス効率化の事例
・まとめ
バックオフィスとは会社の運営を支える部署や業務のこと
バックオフィスに該当する経理や人事、法務などは、顧客対応を行う営業や接客、マーケティングなど企業の売り上げに直接関係する部署とは異なり、基本的に顧客対応は行わず、営業などの後方支援を中心とした業務となります。バックオフィスに対して、営業やマーケティングなどの部署はフロントオフィスと呼ばれることがあります。バックオフィスは、企業活動を円滑に進めるために欠かせない重要な部署です。
主なバックオフィスの部門
ここでは、バックオフィスに分類される経理、人事、財務、法務、総務などの各部門について解説します。
経理
経理は、ビジネスにおけるさまざまな金銭の流れを管理、記録する部門です。具体的には日々の出入金に関する伝票の起票や、記帳した帳簿をもとに月次・年次の決算書(財務諸表)を作成します。この他にも、税金の申告や納付、給与計算なども行います。
人事
人材の採用や社員教育などの業務を行うのが、人事部門です。人員配置を変更する人事異動や、従業員のモチベーションアップにつながる評価制度の管理なども人事の業務です。また人事には、健康保険や厚生年金、雇用保険、労災などの管理、手続きを行う労務管理の業務もあります。
財務
財務は、予算管理や資金調達、資産運用などの業務を行う部門です。経理が作成した貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を参考にして経営計画を策定し、銀行との融資交渉や株券発行などの方法で資金調達を行います。企業によっては、経理と財務の区別がなく、兼任している場合があります。
法務
契約業務やコンプライアンス対応などの業務を行う部門が法務です。取引先と契約する際は、売買契約書などの契約書類を作成するために、法律の知識が必要になります。契約書に自社にとって不利益な内容が書かれていないか確認し、法的に有効な契約書の作成を行います。他にも就業規則や服務規律など、社内規定を整備する際にも、作成した規定の確認を法務が担当します。法律に関する問い合わせ窓口としての役割も、法務が担います。場合によっては、社内のパワハラ・セクハラ問題の相談を法務が担当するケースもあります。
総務
バックオフィス業務全般を総合的に行うのが、総務部門です。経理、人事、財務、法務といったそれぞれの部門が独立していない企業は、これらの業務を総務が担当することもあります。具体的には、備品や消耗品の管理、オフィスや建物の設備管理、メンテナンス、入社式や社員旅行などのイベントの企画・運営、冠婚葬祭やトラブルへの対応など、実に幅広い業務を行います。
バックオフィスの業務では紙文書を用いることが多い
バックオフィス業務は、社内文書を紙で保管・管理したり、自治体に提出する紙の書類を作成したりと、紙の文書を用いることが少なくありません。ですが、作業環境を整えれば、バックオフィス業務をデジタル化していくことは十分に可能です。例えば、各種申請・届出業務、経費の管理などは、電子申請システムの導入などによってデジタル化が可能です。
バックオフィスを効率化する3つのメリット…
では、バックオフィスにITを導入することで、具体的にどのようなメリットが生まれるのでしょうか。以下に3つに分けて紹介します。
メリット1:ヒューマンエラーの防止
バックオフィスの業務では、紙書類を確認後、パソコンに手作業で入力するケースがあります。しかし、手入力はどうしてもヒューマンエラーが生じてしまいます。決算期や年度末などの繁忙期は、従業員の負担が大きくなるため、ヒューマンエラーが増加する可能性も高まります。手入力していた業務をシステムにより自動化することで、従業員の負担が軽減され、ヒューマンエラーの発生防止効果も期待できます。
メリット2:作業の効率化で労働時間を削減
伝票入力などの単純作業をシステムに任せることで、労働時間の削減が期待できます。また、従業員はマネジメントなど付加価値が高い業務に時間を割くことができます。中小企業や創業間もない企業では、バックオフィスとフロントオフィスの業務を同じ担当者が行うケースもあるでしょう。その場合、バックオフィス業務の負担をシステムで軽減することにより、フロントオフィス業務に力を入れ、利益の向上につなげることが可能になります。
メリット3:多様な働き方の実現
バックオフィスで使用する紙の書類をデジタル化すれば、オンラインで業務できる幅が広がります。デジタル化するためには、ワークフローシステムによる申請手続きのオンライン化などが有効です。申請書や稟議(りんぎ)書などの資料がオンラインで回覧、承認できるようになるため、押印作業のためだけにオフィスへ出社するという必要がなくなります。
バックオフィスを効率化するためのツール
バックオフィスの効率化には、各種システムの導入が有効です。バックオフィス業務に役立つ主なシステムを紹介します。
ワークフローシステム
先ほども触れましたが、ワークフローシステムは、業務の流れをデジタル化して管理・監視するシステムです。紙の書類の場合は承認者・決裁者に直接渡す必要がありますが、ワークフローシステムを使うとオンライン上で作成・処理できます。
勤怠管理システム
勤怠管理システムとは、従業員の出勤や退勤、残業時間、休日といった勤務状況を確認・管理できるシステムです。勤怠管理システムで出退勤の打刻を行う際は、タイムカードではなくパソコンやスマートフォンを用います。
RPA
手作業で行っていた単純作業を自動化するツールがRPAです。データ確認や問い合わせ対応など、作業手順が決まっていて繰り返し行われる定型業務をRPAで自動化することで、高速かつ正確な処理が可能になります。
チャットボット
チャットボットとは、「chat」と「bot」を組み合わせた言葉です。問い合わせに対してロボットが対応します。社外からの問い合わせに対応するコールセンターやカスタマーサポート、社内のヘルプデスクなどで使用されます。
バックオフィス効率化の事例
バックオフィス業務の効率化に成功した企業は、数多くあります。ここでは、会計システムの変革や人事評価のデジタル化など、デジタル技術で成功した企業の事例を紹介します。
勤怠管理システムで休暇取得を促進
専門商社のA社は福利厚生を充実させており、有給休暇以外にも多彩な休暇を用意しています。しかし、これまで利用していた勤怠管理システムでは特殊な休暇を管理できないことが課題でした。そこで特殊な休暇にも対応した勤怠管理システムを導入。各種休暇の管理がひと目でわかるようになったほか、取得率がリアルタイムで判定できるようになったため、取得促進にもつながりました。
経費精算システムの導入で清算業務の負担が軽減
エージェント事業やマーケティング事業を営むB社は出張などの立替経費が多く、さらに紙書類で処理していたため経理担当者の負担となっていました。そこで経費清算システムを導入し、申請者がパソコンやスマートフォン経由で申請できるようにしました。結果、清算業務にかかる時間を20分の1に短縮できるなど、負担軽減に大きく寄与したそうです。
チャットボットで問い合わせに自動応答
C社は、約2000ある店舗で働くスタッフからの問い合わせに対応するサポートセンターを構えていましたが、基本的な問い合わせをAIチャットボットが自動回答するシステムを導入しました。導入後は、社内問い合わせ窓口への電話が24ポイント減少し、問い合わせ対応に使用していた時間が大幅に削減したといいます。空いた時間は、違う仕事に活用できるようになりました。
まとめ
バックオフィスは企業の金銭を管理・記録する経理や、人材の採用や教育、労務管理などを行う人事など、業務に欠かせない業務を担っている一方で、紙資料や押印業務など、昔ながらのやり方が残り、業務効率化が進んでいないケースもあります。バックオフィスの業務は、ITツールの導入により業務効率化が可能です。そして業務効率化はもちろん、働き方改革や生産性向上につなげていくことが大切です。
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