脱IT初心者「社長の疑問・用語解説」(第82回)
ブルーライト対策にはうな重?
公開日:2023.01.04
第1回では、サービス業が生産性向上に苦戦していると説明しました。そんな中、21世紀に入って社会状況が大きく反転し始めました。人口減少です。日本では2000年頃に、働き手となる生産年齢人口(15~64歳)が減少に転じました。一方で、引退した団塊の世代は活発に消費しています。つまり、お客さまはいるのに働く人がいない「人手不足問題」に産業界はこの10年間、悩まされてきました。どこの会社に行っても、「募集しても集まらない」「人はどこに行ってしまったのか」「雇ってもすぐに辞めてしまう」という嘆き節を耳にします。
労働力の奪い合いの激化に加えて、若者の仕事観も変わってきました。従来は賃金や仕事内容を重視して就職先を決めてきましたが、近年は残業や休日数といった労働条件と、会社の将来性をとても気にします。彼らは、自分たちの親世代がどんなに一生懸命に働いても、会社からリストラされる姿を見聞きしてきたからです。
会社の仕事だけにやりがいを求めることを避け、生きがいを会社の外に置くのが、今の若い世代の特徴です。そのため、会社では決められた時間だけ働いて、給与をもらおうと割り切る傾向が強い。当然、就職前には労働条件も厳しく見定めます。人が集まらないのは人がいないのではなく、その会社が人に選ばれていないだけなのです。
会社は、従業員がいなければ売り上げを立てられません。だから会社は、いやが上にも時短を進めなければならない。国が「何とかしろ」と言うだけでは、会社は動きません。どこの会社も働き方改革を進めているのは、長時間労働を減らさないと人が採用できず、経営が成り立たなくなるという切羽詰まった状況があるからです。
日本に限った話ではありませんが、トヨタ生産方式やセル生産方式をはじめ、生産性向上は常に製造業を中心に議論され、その方法も工場の中で進化してきました。一国の経済成長において、製造業が果たしてきた役割は大きいため、それは当然ともいえます。半面、サービス業の生産性向上の方法確立は、取り残されたかたちになってしまいました。しかも製造業の方法をそのまま当てはめようとしてもうまくいかず、「そもそも、サービス業の生産性向上は不可能ではないか」という懐疑論すら出るほど、難しい問題だと分かってきたのです。
どうして、サービス業で生産性向上が遅々として進まないのか。なぜ、長時間労働は解消しないのか。疑問に思った私は、2008年頃から、サービス業を中心に現場を訪ね始めました。これまでの訪問数は1000件を下りません。そうした地道なフィールドワークによって蓄積した調査結果をモデル化して、それを理論に発展させ、さらに業種に関係なくすぐに使える生産性向上の手法を開発してきたのです。
ただし、今ある手法はあくまで現段階のものです。もしかしたら、この手法が通用しない現場もこれから出てくるかもしれません。もしそのようなことがあれば、大変にうれしいことです。私はすぐにそこを訪れ、今の手法をさらに進化させられるからです。ぜひご連絡ください。
こうした理論化の仕方を私が選んだのは、大学で自然科学を専攻していたことが大きく影響しています。自然科学は、宇宙や地球、大気、生命などの自然現象を探求します。自然現象はあまりにも複雑で理解しがたく、だからいにしえの時代は神の領域とさえ信じられていました。
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執筆=内藤 耕
工学博士。一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事。世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。
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中小サービス業の“時短”科学的実現法