中小サービス業の“時短”科学的実現法(第13回)従来の管理制度では現場の実態に対応できない

業務課題 経営全般 スキルアップ

公開日:2023.12.01

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 本連載は時短を実現するために第1ステップとして「現状を把握する」方法を解説し、第8回からは第2ステップ、「人員配置の無駄をなくす」に進みました。その中で、アプローチ4として「リアルタイム・サービス法」、アプローチ5として「小ロット化」、アプローチ6として「マルチタスク化」を説明してきました。そして、今回から3回にわたり、アプローチ7として「稼働対応労働時間制」について解説します。まずは、なぜ、こうした制度が求められるのかを考えてみましょう。

 サービス業の忙しさはさまざまな要因で大きく変動します。リゾートホテルでは、例えば夏は忙しく、冬は空き部屋だらけと、季節をまたぐ忙しさに波があります。百貨店は、平日よりも週末のほうが客数は多く、1週間の中で忙しさが変わっていきます。飲食店などはランチとディナーの時間帯に客数が多く、その他の時間帯には客数が少ない。また、雨が降れば路面店は途端に客足が鈍りますが、同じ業種でもそれがショッピングモールであれば忙しくなります。

 ここで挙げた例はあくまでも一般論で、お客さまの動きは業種や立地、周辺状況によって大きく変わってきますが、忙しさが常に変動しているのは事実です。この変動は日頃から気をつけていればある程度予測がつきますが、日や時間で正確に予測することはできません。そのため、サービス業では計画的に現場の人員や労働時間を予測して、事前に的確なシフトを編成することは実質的に不可能です。

図1:自社に合った人事制度は客数の変動を考慮する必要がある

 こうした業務量の変動に対応しなければならない問題意識は昔からあり、そのために「変形労働時間制」(以下、変形労働制)という労働時間管理制度が既に存在しています。これは、現場の稼働状況が変動し、労働基準法が定める1日8時間、週40時間の法定労働時間が守れない場合に認められる特例になります。

 変形労働制は1年、あるいは1カ月など一定の期間内で、平均労働時間が週40時間内に収まれば割増賃金を払わなくてもいいという制度で、多くのサービス業で採用されています。

 一般に、労働時間を1年間で調整するものを「年間変形労働制」、1カ月単位で調整する場合は「月間変形労働制」と呼びます。例えば、平日のシフトは1日4時間など短時間労働、忙しい週末は1日12時間の法定外労働を編成しておき、その期間内で帳尻を合わせれば25%の割増賃金を支払う必要がないのです。

稼働状況が細かく変動するサービス業に合わない…

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執筆=内藤 耕

工学博士。一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事。世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

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