ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
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公開日:2024.02.01
第13回から始めた稼働対応労働時間制の解説の最後は、実際にこの制度を導入した企業の実例です。それがどのような効果をもたらしたのか紹介します。
稼働対応制を導入した企業に、佐賀県の配送会社トワードがあります。低温管理できる物流センターを持ち、卸売会社や生産地から運びこまれる食品などを仕分けし、飲食店や食品スーパーに配送しています。従業員はパートを含めて258人です。
トワードが稼働対応制を導入したのは2014年です。それまでは年間変形労働制を採用していました。しかし、一度シフトを組むとその後の変更はできないという不自由さに苦労していました。
物流業界は荷物の量が日々変動します。以前は荷物が多くなるだろうと見越してやや多めの人数でシフトを組み、それでも対応できない場合は残業で対処していました。想定より荷物が少ないと、従業員の手待ち時間が増えて、無駄が発生します。その一方で人手不足が深刻化し、管理職を中心に残業が月数十時間に達する従業員も増えてきました。このため、友田健治社長は何とか労働時間を短縮できないかと悩んでいたのです。
そんなときに稼働対応制を知り、導入しました。導入に当たってまず友田社長が実行したのが、現状の把握です。曜日別、季節別に荷物量を集計してプロット分析してみると、最多の日と最小の日は2倍程度の差で、思っていた以上にばらつきは大きくなかったのです。友田社長は「一番忙しい年末年始と、暇な月の差はもっと大きいと思っていました。そんなことすら正確に把握していなかったのです」と言います。
次に、稼働対応制を導入するための就業規則の改定を行いました。それまでは1日の所定労働時間を固定していましたが、これを最低働くべき労働時間として4時間に短縮。その上で、日々の荷物量によって命じる稼働対応労働時間として1日平均4時間の追加も明記し、各所定労働日の労働時間を平均8時間としました。
また、各日の始業・終業時刻、休憩時間、見込まれる稼働対応労働時間などを定めた月間シフト表は、月が変わる3日前までに社員に通知、加えて、「臨時にシフト変更する場合は、前日までに社員に通知すること」も就業規則に盛り込みました。
管理者は、スタッフの定時より遅い出勤と早い帰宅を柔軟に認め、4時間以上働いていれば欠勤処理をしないと明確にしました。もちろん、1日8時間、週40時間を超える労働に対しては、法定通り25%の割増賃金を支払います。
トワードではKPI(重要業績評価指標)として、売上高を労働時間で割った値を「生産額」として計算していますが、稼働対応制導入後はこのKPIが2倍以上に伸長。中でも福岡の物流センターはかつて赤字でしたが、黒字に転換しました。
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執筆=内藤 耕
工学博士。一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事。世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。
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