強い会社の着眼点(第19回)
古いルーターはリスクフル!買い替えポイントは?
公開日:2024.06.04
前回まで第3ステップ「作業の無駄をなくす」を解説してきました。今回から第4ステップ「要求を理解する」の説明に進みます。前回まで無駄をなくす方法を紹介しましたが、そもそも必要なことが分からなければ、無駄であるかどうかも分かりません。今回と次回は「アプローチ10 おもてなしピラミッド~会話へのステップをつくる」として、要求を理解するプロセスを説明します。
これまでは生産性を高め、時短につなげる手法を実例に基づいて解説してきました。ただ、そもそも必要なサービスを最適なタイミングでお客さまに提供するには、何らかの方法でお客さまの気持ちをキャッチし、その要求を理解していく必要があります。お客さまのニーズをつかむ最良の方法は、現場でお客さまと向き合っている従業員がそのお客さまと会話をすることです。ただし、いきなり「もっと会話しろ」と指示しても何を話してよいか分からないでしょう。お客さまとの会話から真のニーズをつかむ方法に、企業はもっと関心を持たなければなりません。
さまざまな現場をよく見ると、スタッフは共通したステップを踏み、最終的にお客さまと会話していることが分かります。
まず、スタッフはお客さまの行動を「観察」します。その中から機会を見つけて「笑顔」で出迎え、その後に「あいさつ」、そして「会話」へとつなげていくのです。観察から始まって、笑顔、あいさつ、会話へとつながる一連のプロセスを、私は「おもてなしピラミッド」と呼んでいます。なぜピラミッドという言葉を使うかというと、各ステップの人数は次第に狭まっていき、ピラミッド型で表現できるからです。
サービスの重要な工程の一つである「おもてなし」に関する議論は、接客や接遇に伴う所作や動作などのマナーに関するものでした。そこには「正しい」「正しくない」という二項対立があるように、私には思えるのです。現場の従業員がおもてなしのサービスを提供しようとするとき、「正しい型は何か」と気にしていたら、お客さまを見なくなってしまうのではないでしょうか。だから私は、おもてなしの構造を理解して、サービスを提供する業務プロセスの中にきちんとはめ込んでいくことが大事だと思っています。
まず、おもてなしとは何かを明確にしたい。一般におもてなしといえば、気遣いや心遣いでお客さまに何かをするというイメージでしょう。仮に相手が求めていないことをしたら、それは独りよがりで、相手は「大きなお世話」と感じて代金を支払ってくれません。従っておもてなしとは「相手が望むことを先回りしてする」ことです。単に所作や動作だけでなく、あいさつから会話によってお客さまの要求を掘り起こすプロセスなのです。
つまり、おもてなしとは、決して手間のかかる接客ではなく、お客さまの要求を理解して生産性を向上させる上で重要な業務プロセスの一つとなります。具体的に事例を使いながら、おもてなしピラミッドを紹介していきましょう。今回は、第1段階の「観察」について、次回はそれに続く「笑顔」「あいさつ」「会話」を解説します。
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執筆=内藤 耕
工学博士。一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事。世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。
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中小サービス業の“時短”科学的実現法