中小サービス業の“時短”科学的実現法(第21回)より大きく飛躍するため事業戦略を立て直す

業務課題 経営全般 スキルアップ

公開日:2024.08.01

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 前回まで第4ステップ「要求を理解する」を解説してきました。今回から第5ステップ「事業戦略を立て直す」の説明に進みます。第1ステップから第4ステップまでの取り組みは「戦術」に当たります。第5ステップでは、事業の「戦略」を生産性という視点から再構築します。

 第1ステップから第4ステップは、現状を正しく把握した上でシフト編成を工夫し、お客さまの要求に合わない無駄な業務はやめて時短を進め、生産性を上げていくという手法を説明してきました。これは現在の事業モデルを変えない業務プロセス改革です。それに対して第5ステップで紹介するアプローチ11~13の3つは、より大きく飛躍していくための事業戦略のつくり方です。それではアプローチ11から解説しましょう。

アプローチ11 大口取引よりも、小口取引 ~小口取引で生産性向上~

 売り上げを増やすために、経営者の多くは大口取引を求めます。1つの契約でどんと大きな売り上げが入れば効率がいいし、生産性も高いと感じるでしょう。しかし、本当にそうでしょうか。大口取引はデメリットも考える必要があります。

 大口契約を得られると一見経営が安定するように思われますが、取引先の言いなりになりやすく、経営の自由度を奪われる場合があります。値下げ要求に応じると利益率は低下しますし、何かの理由で契約を失ったとき、そのダメージは計り知れません。

 広島市の酒商山田も、かつては大口の契約先で経営の屋台骨を支えていました。メインはクルーズ船や定期航路の船向けに大量のビールを納入する仕事で、売り上げの3割を占めていたのです。大きな冷蔵庫が必要な上、消費されなかった分は引き取る契約になっており、値下げを求められても拒めませんでした。

 1989年に大企業のサラリーマンを辞めて家業に入った4代目の山田淳仁社長は、このままでは将来はないと、事業構造を変革する決意を固めました。まず、ビールの値引きや売り掛け販売を一切やめました。売り上げは減りましたが、それを補うものとして日本酒や焼酎の取り扱いに力を入れ始めました。

取引先は80倍、粗利益率は2倍に…

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執筆=内藤 耕

工学博士。一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事。世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

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