ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2023.06.13
最近、ブレーキとアクセルの踏み間違い事故のニュースが絶えません。トラブルが悲惨な結果を生んだ場合、ニュースで取り上げられるのは当然でしょう。私の記憶にある自動車のペダル周りのニュースは、2009年から米国で問題になったトヨタ自動車のプリウスのブレーキです。アクセルペダルが戻らない、運転感覚、違和感、フロアマットなど、さまざまなことが散々言われ尽くしていました。
当時、自動車のアクセルとブレーキペダルについて調べ、踏み込み感はどちらも電子的に作られているものだと知って大いに驚いたのを覚えています。
そして2016年に、ベテランタクシー運転手によるアクセルとブレーキの踏み間違いによると思われる死傷事故が発生しました。ちょうどその頃レンタカーを使ったとき、ギアのシフトレバーがレバーというよりも、手元スイッチ、あるいはシフトダイヤルのようなものに変化していてまた驚きました(注1)。
ギアをシフトするという動作が、てこを使って所要のギアをかみ合わせるのではなく、手元のボタンを合わせて、機械がやるに任せるものに変化していました。ずいぶん便利になった半面、そのために、これまではなかった事故が増えているのではないかと思います。
最近の家庭用ガスコンロを見ると驚かされます。温度センサー、消し忘れ対応、焦げ付き消火機能、立消え安全装置など、古いコンロをそのまま使っている人には考えられないような安全装置のオンパレードです(注2、注3)。
その他便利機能として、プッシュ点火というものもあります。私が若い頃のガスコンロは、何度もカチッと音がするまで丸いつまみを回し、鍋の下をのぞき込んで点火を確認しなければなりませんでした。中にはライターやマッチを使って強制点火するか、最初からマッチがなければ点火できないものもありました。それに比べて最近のガスコンロが便利になったのは確かだとしても、このプッシュ点火が、今までにはなかった火災事故の原因となっています。
小型犬ではありえませんが、中型や大型の犬を室内で飼っていたり、あるいは忍者のように室内をうろつく猫を飼っていたりすると、そのペットがプッシュ点火のボタンを押して、火災を起こしたりします(注4)。また、炎を出さずに調理ができて便利になったIH調理器でも同じような出来事が起こる可能性があります。
家族の目の届かないところで幼児があちこち伝い歩きをするのを放置するのも問題があるでしょう。プッシュ点火ボタンのあるガスコンロは、使わないときは、誤って押してもボタンが動作しないロックボタンをしなければなりません。IH調理器も、使わないときは上に物を置かない、コンセントを抜いておくなどの注意が必要です。
しかしこうなってくると、安全と便利のどっちを取るか、よく考えてから物を買う必要がありそうです。例えばコンロのプッシュボタンを押す可能性のあるペットがいる家庭では、調理が終わったとき、必ずロックボタンをかける自信があるか、また、調理の前には必ずそのロックを外すことが面倒にならないか考えなければなりません。そしてそれを、昔ながらのつまみ回し式と比べてみましょう。幸い、各社プッシュボタンのない旧式モデルも販売しています。
こう書くと、つまみ回し式を一方的に持ち上げているようですが、私自身、先日右手首を痛め、しばらくシャツのボタンを掛けるにも事欠いた経験があり、身体的に不自由があれば、新しいプッシュ式はとてもありがたいものだと思います。自分自身の状況、住居内の環境をよく考え、新しいものに飛びつかない慎重さが必要でしょう。
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執筆=飯野 謙次
東京大学、環境安全研究センター、特任研究員。NPO失敗学会、副理事長・事務局長。1959年大阪生まれ。1982年、東京大学工学部産業機械工学科卒業、1984年 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了、1992年 Stanford University 機械工学・情報工学博士号取得。
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経営に生かす「失敗学」