ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2023.07.13
先日、ある大学の実験室で火災があり、近隣から10台を超える消防車が集合、辺りは騒然となりました。当の実験室のある建屋には避難指示が出ました。他の研究室も雑居している建屋だったのですが、実験の真っ最中であろうと、居室で解析の途中であろうと、とにかく人がいなくなってもよい状態に活動を停止して、屋外に出なければなりませんでした。
実験中の場合は、人がいなくなってもよい状態にまで戻すのが困難な場合があります。時間をかけた化学反応の実験データを収集していて、万が一のため、人が付きっきりで見張っていなければならないときだってあります。避難指示が出たなら途中で実験をシャットダウンし、また一からデータの取り直しになってしまうのです。
大学の安全対策室は、消防、救急、警察の対応に大わらわ。数日たってから火災の原因を聞きました。実験室の床に這(は)わせていたテーブルタップの電線にいつの間にかゴミ箱が置かれており、ゴミ箱の下でスパーク、ゴミ箱が燃えたところから火災に発展したそうです。
延焼はゴミ箱近辺で収まったものの、プラスチック製のゴミ箱容器だったため煙がすごく、開け放たれた実験室の扉から廊下に漏れ出し、扉の下から他の実験室に侵入。周りの研究室も、実験室の清掃に数日を費やしました。
総務省消防庁の「平成30年(1~12月)における火災の状況(確定値)」によると、2018年の総出火件数は3万7981件。これには林野火災や車両火災が含まれ、建物火災に限ると2万764件、そのうち住宅火災は約半分の1万1019件でした。建物火災のうち、原因が「こんろ」の火災は2794件、「ストーブ」の火災は1170件でした。
両者の合計3964件のうち、電気系統の問題に由来するものを2割と見積もれば793件になります。そのほか、「配線器具(1133件)」「電気機器(1078件)」「電灯電話等の配線(1046件)」「電気装置(493件)」「溶接機・切断機(223件)」「こたつ(42件)」「交通機関内配線(32件)」を合計すると4840件となり、建物火災の23%が電気火災でした。
東京消防庁によると、2017年の全火災件数4204件のうち電気火災は1152件、27%でした。東京都では、1986年から2015年までの30年間で電気火災が600件余りから900件余りと1.5倍に増えています。死者数も、1990年ごろの13人前後から2014年頃は20人前後となっています。
東京消防庁では2015年から2017年の原因別火災件数を公開しており、予想されるように電気ストーブが最多でした。ストーブが倒れないように注意するのは当たり前ですが、その近くに燃えるものを置いてはいけません。冬場に暖を取るためにつけたまま寝てはいけないし、酔ってストーブを消し忘れて寝てもいけないのです。
ガスストーブと違って炎が見えないからと洗濯物を干すのに使用するのも、その場に付きっきりならともかく、ストーブの前や上に置きっぱなしにしてその場を離れてはいけません。これは当たり前のことなのに、ついやってしまいます。作業を開始するときは十分に意識をしていても、何かに気を取られたときに忘れてしまうのが人間です。自分は人間であり、必ず忘れると自信を持てば、危険行動を減らせるかもしれません。
2017年はストーブの次に多かったのがコード、続いて差し込みプラグ、コンセントとなっています。冒頭の大学実験室内の火災もこれが原因でした。自分の住まいはもちろん、たまに人の家を訪れると、家具がコードを踏んでいないか、コンセントが緩んでいないかが気になります。見つけると、なぜそれがいけないかを説いて聞かせる口うるさいおじさんになってしまいました。なぜいけないかを知らない人が多過ぎるのだと思います。
まずコードには、電気製品のスイッチが入っていなくても、スイッチがあるところまでは電気が通っているのだと知らなければなりません。重い物がそれに乗っていれば、2本の電線を交差するように押し付け、交流電流を流そうとしているようなものです。そして、実際に交差する前に、十分近づいたらアーク放電が起こって火花が飛びます。このとき、交差してしまえば通電して大電流が流れ、ブレーカーが落ちるだけなのですが、近づいたときにアーク放電が起こるため、たちが悪いのです。
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執筆=飯野 謙次
東京大学、環境安全研究センター、特任研究員。NPO失敗学会、副理事長・事務局長。1959年大阪生まれ。1982年、東京大学工学部産業機械工学科卒業、1984年 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了、1992年 Stanford University 機械工学・情報工学博士号取得。
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経営に生かす「失敗学」