ビジネスを加速させるワークスタイル(第15回)
似ているようで違う、法人向け光回線の選び方
公開日:2023.11.30
より良いビジネスをつくっていくため、もっとデザインが役に立てることがあるのではないかと考えて始めた本連載も、いよいよ今回が最終回になります。連載をスタートするにあたっては、拙著『サービスデザイン思考』(以下、同書)を題材に使いつつ、本では書けなかったことや、あえて書かなかったことを書いてみようというのが個人的なモチベーションでした。
そもそも同書を執筆した最大の動機は、「ビジネスやマーケティング、デザインの常識と考えられていることは、果たして今も変わらず常識なのだろうか?」ということを問い直したい、という気持ちにありました。具体的には次のような考え方が挙げられます。
・顧客を常に中心に考えること(ユーザー中心発想)
・顧客の「お困りごと」を解決すること(問題解決志向)
・モノとしての製品よりも、目に見えない経験=コトにこそ価値がある(「モノからコトへ」信奉)
結果的に本連載は、これらの常識を同書とはまた違った視点から考え直すことになりました。改めて、これまで本連載で書いたコラムのタイトルを並べてみます。
第1回 あらゆるビジネスが「サービス化」する、ってどういうこと?
第3回 「ほしいもの」を与えるだけでは顧客ニーズを満たせない
第4回 無駄だらけの「野良仕事」にビジネスの本質は眠っている
第7回 「つくり手の想い」と「企業のエゴ」を分けるものとは?
第9回 「まがいもの」を「ほんもの」にする「文化のデザイン」
振り返って眺めてみると、ほとんどのコラムタイトルが疑問文やあまのじゃくな問題提起になっていることに、思わず苦笑いしてしまいました。
第1回のコラムの末尾には、同書にある「サービスデザイン」に関する以下の定義を引用しました。
サービスデザインとは、顧客が自覚していないレベルのニーズや欲求に対して、顧客との共創関係のもと価値を提案し、良い関係を持続する仕組みを持った製品・サービスを創りだすこと、それによって、自社と顧客の双方のみならず、多様な利害関係者間で価値を共有し、循環できるビジネスの実現をめざすもの。(『サービスデザイン思考』20頁)
これまでの連載を読んでくださった皆さんはお分かりいただけると思うのですが、サービスデザイン的なアプローチというのは、製品・サービスやビジネスにおいて既存の常識とされている価値を転換させる、従来のビジネスにおける合理性からあえて距離をとるやり方です。この方法はすごく手間がかかるし、効率はよくないし、これまでにないアイデアを提案するという点でリスクもあります。
しかし、技術の進化や企業のたゆまぬ努力によって、多くの製品やサービスは一定の質が担保されている現在において、今後の社会・市場で顧客から愛され、長く続くビジネスを実現しようと思うなら、これまでの当たり前を変えていくことが企業には求められています。
これまでのビジネスは社会の近代化が要求した大量生産・大量消費モデルがベースにあり、つくる側、売る側の合理性や効率性が重視されてきました。同様に、デザインやマーケティングも、大量生産・大量消費モデルを前提に進化してきたと言えます。しかし、昨今この前提が大きく崩れ始めていることは、多くの読者も実感しているのではないでしょうか。
そのような時代と社会の潮目が大きく転換していく中で、自社のビジネスや業界にとってこれまで当たり前とされてきた既成概念にとらわれず、次のことを創造的に考えるやり方が「サービスデザイン思考」なのかもしれません。
1.誰を、顧客を含めた重要なアクターと考えるか?
2.顧客を含む重要なアクターにとって、より良い状態とはどのようなものか?
3.大切な顧客にとって何が価値となり、企業はどのように価値を提案するべきか?
4.自社のビジネスを持続可能にするために、必要なことは何か?
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執筆=井登 友一
株式会社インフォバーン取締役副社長/デザイン・ストラテジスト。2000年前後から人間中心デザイン、UXデザインを中心としたデザイン実務家としてのキャリアを開始する。近年では、多様な領域における製品・サービスやビジネスをサービスデザインのアプローチを通してホリスティックにデザインする実務活動を行っている。また、デザイン教育およびデザイン研究の活動にも注力し、関西の大学を中心に教鞭をとる。京都大学経営管理大学院博士後期課程修了 博士(経営科学)。HCD-Net(特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構)副理事長。日本プロジェクトマネジメント協会 認定プロジェクトマネジメントスペシャリスト。
【T】
これからのビジネスをつくるための「サービスデザイン思考」