いま話題のトレンドワードをご紹介する本企画。第1回のテーマは、「ChatGPT(チャットジーピーティー)」です。言葉の意味、そしてその背景や関連する出来事を解説していきます。みなさまのご理解の一助となれば幸いです。
米マイクロソフトから資金支援を受ける米OpenAIが2022年11月に公開した対話型AIチャットサービス。公開されるやいなや、複雑な質問もすんなりと解読、人間が答えるかのような自然かつ高精度な回答が話題となりました。無料で利用可能なこともあって、2カ月で月間アクティブユーザーが1億人を突破。そのクオリティーと勢いに、ビル・ゲイツ氏が「世界を変える」と発言しています。
このChatGPT。小説の自動生成やゲームでの会話生成を目的に作られた「GPT」という言語モデルの「GPT-3.5」がベース。2023年1月、さらに高度・安全とされる「GPT-4」が発表され、さらなる期待を集めています。こちらは有料サービスなどに限られるものの、マイクロソフトのBing検索やMicrosoft 365にも搭載されています。
2023年3月1日、ChatGPTのAPIが提供開始され、プログラムにChatGPTが組み込めるようになったことで活用の範囲・可能性が大きく広がりました。各種の用途に合うサービスやソリューションを探してみるとよいでしょう。以下、一例を挙げていきます。
チャットボット
最も有効なのは、受付やサポートなどのチャットボット利用。ChatGPTと連携すれば幅広い質問や要求に対応ができる。商品注文や宿泊予約、配送管理、オンライン学習、採用システムなど、用途別にカスタマイズすれば、さまざまなジャンルへの利用が可能に。
音声自動応答サービス
ChatGPTを導入した電話の自動応答サービスも話題を呼んだ。チャットはスマホやパソコンなどIT端末からの利用に限られるが、音声に対応することで、活用範囲が大きく広がる。
社内チャットシステム
情報共有、業務連絡などの目的で、ChatGPTと連携した社内チャットシステムを導入する企業も多い。自社の情報や用語などのデータを学習したAIとのチャットで、社員は24時間、疑問や問題を解決するなどで業務上の負担を減らし効率化できる。
文章の自動作成でオフィス業務を省力化
ChatGPTを秘書や助手として活用。文章生成、翻訳、要約、スペルチェック機能などによりメール、ビジネス文書、マニュアル、カタログ、プレゼン、契約書、記事などあらゆる文書作成を効率化。指示を与えて文章を自動生成、加筆・編集を行うだけで文書が完成する。
データ分析、提案なども
売上などのデータ分析&レポート作成や、行動データを元にした日報作成、会議の議事録や要約の自動作成、社内報や広告、顧客ニーズに合わせたダイレクトメールの作成と送信などが考えられる。さらに、キャッチフレーズやコピーの提案、新商品の企画から売れ行き予想や戦略の提案、効率的な商品配置やレイアウトの提案など、数多なアイデアが得られるだろう。
これから予測される課題は?
誰でも気軽に利用できるが、さまざまなリスクを懸念
ChatGPTなど対話型AIの回答は、学習したデータに含まれる偏見や差別、虚偽などが反映される可能性があります。むやみに信じることは避け、回答は事実を検証してから利用するのがよいでしょう。なお、ChatGPTは過去のデータで学習するため最新情報には疎く、ネットにない情報は学習できないという特性もあり、情報が偏ることもあります。
利用にあたっては、学校の宿題や試験回答への利用などの倫理面、個人情報や機密情報の漏えい、入力情報の不正利用などセキュリティ面の他、犯罪利用の可能性、生成した情報でのプライバシーや人権、著作権の侵害、情報社会の混乱など多様なリスクも指摘されています。対話型AIはまだまだ発展途上、特性をよく理解の上、適切に利用するのが望ましいでしょう。
ビジネスを向上させるが、人間の仕事が奪われる可能性も
カスタマーサービスなどチャットボットへの利用、文章の生成、翻訳や要約など、効率化・省力化に期待される一方、人間が仕事を失う懸念も危惧されています。例えば、受付業務を対話AI搭載ロボットが行えば、受付担当が不要になる、などです。
この点マイクロソフトはMicrosoft365へのAI搭載により、人間は単調な仕事から解放されクリエーティブな作業に専念できる、と述べています。企業のDX化において近年、日頃の定型業務を自動化する「RPA」が導入され、効率化に役立っていますので、対話型AIはその進化型と考えるとわかりやすいでしょう。単調な仕事はAIにまかせ、「人間は人間にしかできない仕事や活動へのシフトを考え、世の中のさらなる発展や生活の向上に貢献する」と発想し日々の業務に臨んでいくのが良いでしょう。
競争激化、状況が混とんとしていく可能性
Google、AmazonなどのIT大手もこぞって対話型AIの開発を強化しています。現在、対話型AIは利用が加速度的に進み、開発競争も白熱。そんな中、セキュリティ面や倫理面などのリスクに対応できない状況、対話型AIが生成する情報がほかと区別できない形で出回る状況を、法律や倫理面でコントロールできるまで、利用や開発を中止するよう呼びかける動きも広まっています。
例えば、米国では開発の一時停止を求める署名活動が行われ、イタリアにおいてはChatGPTの利用を一時的に禁止する(現在は対策により解除)など、規制の方向に動きつつある国もあります。「AIのマイナス面に対する懸念と、AIが人々の生活を改善する能力とのバランスを取るよう努める必要がある」というビル・ゲイツの発言通り、対話型AIの環境を巡っては日進月歩の議論が続いています。
ChatGPTをはじめとする対話AIは、あたかも人間のように受け答えできる画期的な技術です。今後の動向を見守りつつ、バランスよく導入していくのが良いでしょう。
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